※この作品はR-18です。

海賊王に俺はなる?のか?   作:ずんだニャン

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まず初めに第一話を読んでいただきありがとうございます。

そしてなんとか第二話を書くことができました。

よろしくお願いします




2話 原点 オリジン

痛みで意識が、ゆっくりと浮かび上がる。

 左目の下がズキズキする。まさか度胸試しで、自分の目にナイフを刺すとは。後先考えない子供は恐ろしいな。

 そんな事を思いながら俺は

 

「知らない天井だ。」

 

異世界転生にピッタリなセリフを呟いた。

 部屋を見渡せば、天井も壁も木造だ。けれど、削ったばかりの匂いはしない、陽に焼けて、潮にさらされた木の香り、酒の甘い香りが重なる。

 知らない部屋、知らない匂い。初めてのはずなのに、懐かしさを感じる。

 胸の奥がざわつく。

 海賊達の笑い声と一緒に、幼い憧れが流れてくる。

 違う!俺の記憶じゃない。

 海。

 風車。

 海賊船。

 赤い髪の背中。

 その背中に追いつきたいと願う、純粋な衝動。無鉄砲で単純で、危うい。子供の頃に持ってた感情。嫌いじゃない。むしろ懐かしさを感じる。

 

 子供の記憶、純粋な気持ちは、静かに俺の内側に、沈んでいった。否定する気にはなれなかった。

この身体で、この世界で、これからどうやって生きていくのか。

 まだ決めていない。

 疼く左目の下に、手を当てて考え込む。俺は天井を見上げ、小さな息を吐いた。

 

「……海賊か。」

 

 そう呟いて、俺は立ち上がり、ドアの向こうから響いてくる笑い声の方に向かって歩きはじめた。

 

ドアを押し開けた瞬間、酒の匂いに男たちの笑い声が一気に流れ込んできた。

 

「お、やっと起きたかルフィ!」

 

  タバコを吸ってる黒髪の長髪の海賊が心配そうに声をかけてきた。

 ベンベックマンだ!本物だーなんて思ってると

 

「あんまり嬢ちゃんを心配させるなよ。すごく心配してたぞ。」

 

 とベックマンから言われた。

 

 キィィーと酒場のドアが開く。音の方を見ると、緑の髪にバンダナを巻いた女性が立っていた。この酒場の美人店主だ。

 さすがONE PIECE世界。女性キャラのスタイルがいい!

 馬鹿な考えをしてると、俺と目が合った。目が合うなり、買い出しをしてきたであろう、買い物カゴを落として、一目散に走って抱きついてきた。

 

「ルフィ!心配したんだからね!」

 

 美人に抱きしめられた。めっちゃいい匂いがするし、たわわな胸が当たってる。

 

「歩いて平気?寝てなくて大丈夫?」

 

 すごく心配そうに聞いてくる。

 

「もう平気だよ、マキノ。」

 

 自分の声がやけに高い。そう言って、俺も小さな腕でマキノを抱きしめた。

 

「無茶なことしないでよ!本当に心配したんだから。」

 

「ごめんなさい。」

 

 そう言ってマキノは荷物を拾い、カウンターの方に向かった。

 カウンターに座ってる赤髪の男が、こちらを見てくる。

 既に出来上がってるのか、かなり酔っ払ってる。

 

「バカなことするんじゃねェぞ!急に気絶したからびっくりだぞ」

 

 酔っ払っているが、かなり心配してくれたらしい。

 

「ごめんよ、シャンクス」

 

 素直に俺は謝った。自分の船の上で、子供が顔にナイフ刺して、気絶した。んー、文字にすると実にやばいな。原作ルフィってマジでやばいな。

 

「ルフィお前!本当にルフィか!素直に謝るなんてお前らしくないぞ。」

 

 ギクっ……! やっべ!バレた?見聞色の覇気とか?転生早々勘弁してくれよ。

 樽のジョッキを携えた赤髪海賊団のクルーがシャンクスに耳打ちをした。

 

「お頭!ルフィの奴。結構堪えたんじゃねェですか。いつもなら、馬鹿騒ぎに加わって海賊団の仲間に入れてくれ!だの、旅に連れていけ!だの、言うのに、やけに大人しいし。」

 

「ああ。なぁルフィ。いつまでも、そこに突っ立てないでこっちに来て座れよ!」

 

「わかった。」

 

 シャンクスから催促されて、隣に座った。

 

「ほらジュースでも飲め。奢りだ!」

 

「いやいいよ。今は水の方が欲しい。マキノ水をください。」

 

シャンクス心の声《本当にどうしちまったんだ?ルフィの奴》

 

「ええ⁉︎ ジュースじゃなくていいのルフィ?」

 

マキノ心の声《ルフィ、人が変わったみたいにおとなしくなったわね》

 

「うん。今は水の方が欲しい。」

 

「そう、はい、どうぞ。お水よ」

 

「ルフィちょっと待てよ。 おい!野郎共乾杯だ!ルフィの根性と俺たちの大いなる旅に!」「乾杯!」

 

「改めて乾杯だー」

 

 赤髪海賊団がまだまだ酒を煽ってる。

 

 転生してから初の飲食。いただきます!ゴクゴクゴク

 

「うまい!」

 

 何やらマキノとシャンクスがコソコソ話してるようだ。何かあったのかな?

 

「あの船長さん。ルフィ本当にどうしたんですか?今日の朝までとあまりに別人すぎるんですけど。」

 

「いや、俺にもさっぱり。船の上でバカやらかす前はいつも通りだったのに、意識が戻ってからはあの調子さ。おかげで酔いも治ったよ。」

 

「ねぇルフィ、お腹空いてない。寝てたからお昼まだでしょ?何か作るから食べていく?」

 

 確かに色々あって疲れたのかな?お腹が空いてる。漫画肉が食べれるのかな?ワクワク

 

「食べるぅ!」

 

あれ?でも俺財布持ってたの?ポケットを確認するが何も入って無かった。

 

「ごめん。マキノやっぱりいいや。お金なかった。」

 

「何言ってんだルフィ!お前いつも宝払い‼︎なんて言って、飯食ってたじゃねぇか。」

 

「宝払い?それならマキノの酒場にツケが溜まってるのか俺?悪いマキノ、今度バイトでもして返すよ!」

 

 《本当にどうしたのルフィ!》︎二人の心の声が重なった

 

「今日は俺が奢るからしっかり食べとけ!ルフィ。お前は今日ぶっ倒れたんだから栄養つけとけ。」

 

「ありがとう、シャンクス。」

 

 10分くらい経った頃、目の前に料理が並び早速食べる。

 

「いただきます」

 

 感動している、このゴムみたいに伸びる肉に。いかにも漫画みたいな肉だ!味付けも最高。めちゃうまである。

 

 それにしても後ろでは、赤髪海賊団のクルーたちがどんちゃん騒ぎである。海賊ってのは昼間っからこんな感じなのかな?

 てか海賊って何やるんだ?

 そんな事考えながら飯を食べ終わる。

 

「ごちそうさまでした。」

 

 ふぅー食った食った 。

 

《いつもなら冒険のことやら、色々聞いてくるのに、無言で食べ続けてたな。そうだ、あれを見せればルフィも元気が出るかな?》

 

 ルフィはただ、この世界の初料理を堪能してただけなのだが、そんなこととはつゆ知らず、シャンクスは何かを準備している。

 

「ほらルフィ、これを見ろ!」 ジャーーーン

 

 そう言ってシャンクスは、小さな宝箱を見せてきた。

 見覚えのある宝箱、おそらく中身はアレだろう。

 

「ルフィ、この宝箱の中身知りたがってただろ?特別に見せてやろうか。」

 

 そう言って、どうだ!箱の中身見たいだろ!と言わんばかりの顔でシャンクスが見せびらかしてくるが、全く興味がない!

シャンクスには悪いが、既に宝箱の中身は知っている。

 中身は[ゴムゴムの実]である!もっと正確に言えば、

[ヒトヒトの実 モデルニカ]である。

 もし悪魔の実を食べる時が来るなら、ゴムゴムよりスケスケとかワプワプの方が欲しいかな。

 

《全く興味を示さないなルフィ。よし中身見せてやるか。》

 

 シャンクスが小さな宝箱を開けて、中身を見せてくれた。

その手にあるのは、渦巻き模様のある紫のメロン!

 [ゴムゴムの実]である。本物だと感動する感情と、気持ち悪い実だなという感情が交差した。

 

「どうだ!ルフィ。これがゴムゴムの実だ!すごいだろ!」

 

 一応聞いておくか

 

「ゴムゴムの実ってなんだ?」

 

 《おっ、興味を示してきたな!》

 

「ゴムゴムの実はな、悪魔の実とも呼ばれる海の秘宝なんだ!食えば全身ゴム人間!そして一生泳げない体になっちまうんだ!」

 

「それに売れば、最低1億ベリーはくだらないと言われてるんだ」

 

 1億! 最低1億!ゴクリ 唾を飲み込んだ。 [ゴムゴムの実]から目が離せないよ。目の前に1億が!

 

「触ってみるかルフィ」

 

「いや、いいよ。」

 

「興味あるんだろ?目がさっきから追いかけてるぞ。ほら!」

 

 そう言ってシャンクスが、手に持った[ゴムゴムの実]を渡してきた。

 

「食べるなよ。」

 

「食べないよ。匂いだけ嗅いでみるだけだよ。」

 

 シャンクスの手にある[ゴムゴムの実]に顔を近づけて匂いを嗅いでみる。

 スンスンスン、薄っすらメロンの匂いがした。

 

 

 ドァバキィ!!!

誰かが酒場のドアを蹴破って入ってきた。

 

「邪魔するぜェ」

低い声が響く。

 

……今俺は人生の分岐点を迎えた!何を言ってるかわからねーと思うが、あ……ありのまま、今起こったことを話すぜ!

 

ドアを蹴破った音に、酔っ払っていたクルーが驚き、盛大に躓いて一直線にシャンクスにぶつかる。

 

ドスッ

「おっと!お頭すまねェ」

 

体当たりを不意打ちで喰らったシャンクスの腕が跳ね上がる。

 その手には[ゴムゴムの実]。渦巻き模様の不気味な果実。

 俺はさっきから、匂いだけを嗅いでいた。

 食べる気なんてない。俺なんかには大それた力だし、何より不味いと分かりきってるしな。

 

「ありがとうシャンクス。いい体験させてもらったよ!早くしまった……」

 

 最後まで言い終わる前に ぐいっ!

 跳ねた腕が、喋ってた俺の顔面に直撃した。

 

「あガッ!」

 

 実が、口の中に押し込まれ、世界が止まったような感覚だった。

 

「あーーーー!ルフィィー!吐け吐け吐けぇぇぇ」

 

 こんなにも慌ててるシャンクスを見るのは、今日が最後かもしれないくらい、慌てている。

 

 いらねぇ!ニカの力なんていらねぇよ。吐き出したいけど完全な詰まってる!早く吐き出さないと。

 手で背中をさするように合図をした。

 

「ルフィ!背中をさすって欲しいのか!いいぞ、吐け吐け」

 

 あと少し、あと少しで出る。

 が、その希望は断たれた。

 

「おい!貴様ら、さっきからうるせぇぞ」

 ガシャァァン!

 

 ドスの効いた声でそう言い、腰に携えるサーベルでカウンターの上を皿を割った。

 

びっくりして思わず

「ゴクン……」

飲み込んでしまった。

 

 静寂に包まれた。そして何よりも悪魔の実がここまで不味いとは。現代人の俺からからすれば、想像もつかない味だった。

シャンクスもベックマンも、他の赤髪海賊団のクルーも、皆、口をあんぐりしている。

 

「ようやく静かになったか!いいかよく聞け!俺には800万ベリーの首がかかってる!第一級のおたずね者ってわけだ!56人殺したのさ!てめェらみたいなうるさい生意気な奴らをな!」

 

「わかったら今後気をつけろ!もっとも山と海じゃもう会う事はなかろうが」

 

「ヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ」

 

 山賊達の高笑い。

 

「こいつらビビって声も出せねえでやんすよ」

 

「ふん。言い返す度胸もないのか!間抜け面の腰抜け海賊共が」

 

 さっきから山賊の棟梁であるヒグマと、下っ端のモブが何やら騒がしいが、それよりも食べちゃったよ![ゴムゴムの実]え?俺ニカじゃん。

 まだ俺という人格は、シャンクス達と出会って間もないのに、腰抜けとバカにされたことに腹が立つ![ゴムゴムの実]を食べた原因に、シャンクス達をバカにした事に俺は、衝動に身を任せた。

 

「腰抜け共!今から俺たち山賊様の貸切だ!今すぐ出て………

 アガァグゥォ」

 

「なにさらしてくれてんだ!こんのクソボケがぁぁ」

 

 ヒグマのヒグマを目掛けて足を振り上げた。ぐしゃっ!

 前世も含めて初めて、玉が二つ潰れた音を聞いた。泡を吹いて倒れるヒグマ。

 呆気に取られていた山賊の下っ端達だったが、武器を抜き殺気だっている。

 

「このクソガキ!やりやがったな!」

 

 今にも襲いかかってきそうだが、それを制したのはベックマンだった。

 

「こんな子供1人に多勢に無勢とは、山賊ってのは腰抜けの集まりなのか!」

 

 そう言って、睨み利かせてくれたおかげで

 

「覚えてろよ」

 

 などと下っ端らしい捨て台詞を吐いて逃げていった。

 

「お頭、ルフィ、ごめん。」

 

 ぶつかったクルーが謝ってきた。食べてしまったのは今更である。ニカとして生きていこう!決意を固めた後は、ヒグマが散らかした皿をマキノと一緒に片付けて、賞金首を倒した事で益々、マキノの酒場は盛り上がった。

 少しだけ、酒を飲ませてもらった。何歳になっても、酒はうまいなぁと。マキノに怒られたが。

 転生初日に、まさか原作通りに、ゴム人間になるとは。

 今日の出来事を思い返すと、一気に疲れが襲ってきた。

 今日はもう寝よう!おやすみ新世界!

 

 モーー、牛の鳴き声で目が覚めた。快眠がこんなに気持ちいいとは。久しく忘れていた。異世界バンザイ!

 

「今は朝の6時くらいか。今日も村長のとこに行けば、なんか手伝いあるかもしれねぇし、行ってみるか」

 

俺は今、村の手伝いをしツケ代を、返済するために働いている。シャンクス達は数日前から、航海に出ている。原作のルフィなら連れて行けと騒いでいたが、俺は静かに見送った。

 寝ても治ってなかったと思われ

 

「本当についていきたくないのか?」

 

 と何度も聞かれた!

 

「山賊も倒したし、今回くらいなら特別に連れていってやってもいいんだぞ」

 

 原作では、冒険についていきたいルフィを諭していた、あのベックマンでさえついて来ないのか?特別だぞ、と何度も聞いてきた。だけど俺は行かない。海賊になるかはまだわからないけど、冒険は将来のために取っておきたい。だから断った。

 

 布団を畳み、顔を洗い、歯を磨き、着替えて、朝飯食べて出発。

 

「おはよう村長。宝払いのツケ払いたいから今日もバイトちょうだい!」

 

「ああ、おはようルフィ」

 

《本当にあの日以来、落ち着いてるの、あのルフィが。来る日も来る日も、海賊になりたいと言ってたあの悪ガキが。》

 

「村長‼︎ 村長‼︎ 」

 

「おお、なんだルフィ。」

 

「なんだじゃないよ村長。バイトないの?ツケ払いたいんだよ」

 

「そうじゃった。バイトだな。それなら、あそこのお爺さんの家の草むしりに、あっちの家の猫が逃げたから探して欲しいみたいじゃ。それと向こうのお婆さんが足を悪くしてるみたいでな、代わりに買い物に行って欲しいようだ。」

 

「わかった!ありがとう村長。」

 

「ルフィにどんな心境の変化があったかはわからんが、いい兆しだ」

 

 草むしりをして、猫を見つけた。

 

 魚屋にお使い。

 

「おっちゃん、魚くれ‼︎」

 

「ようルフィ。近頃は村の手伝いをしてるんだって?頑張ってるな。それにしてもお前、今、海賊達の航海だろ。なんでついていかなかったんだい。いつもなら、連れて行けって騒いでたけど、海賊になるのは諦めたのか?」

 

「うーん。今は一旦保留だ。それよりもまずはツケを払わないと。」

 

「本当に変わっちまったなぁあのルフィが。ほら魚だ!婆さんによろしく言っといてくれ!頑張れよ手伝い!」

 

「おう。ありがとな、おっちゃん。」

 

「お使いの後に、荷物整理の手伝い。なかなか働いたな。 お駄賃も貰ったし、マキノの酒場に払いに行くか。」

 

 

 マキノ side

 

「補充完了っと。確か船長さん達が、今日戻ってくるはずね。」

 樽を持ち上げてそう呟く。

 

 キィィー

「邪魔するぜぇ。」

 

「……い、いらっしゃませ。」

 

 《この前の山賊の人たち。》

 

 乱暴な足音が一斉に流れ込んできた。酒場の床板が軋む。

 

「今日は海賊共に、クソガキもいねぇんだな。お礼参りしてやるつもりだったが、こりゃ静かでいい。近くを通りかかったんでな立ち寄ってやったぞ。」

 

 山賊たちは肩で風を切りながら押し入り、空いていた椅子を乱暴に引きずって腰を落とした。 ガタンッ!ドスンッ!

 木製の椅子が悲鳴をあげる。

山賊達は足を組み、ふんぞり返るように腰を下ろした。

 バンッ!

分厚い掌が、テーブルを叩く!

 

「何ぼーっとしてやがる。おれ達ァ客だぜ! 酒ェもってこい!」

 

山賊達がニヤニヤと笑う。その視線は、一斉にカウンターにいるマキノの方に向けられた。品定めするような、いやらしい目。

 酒場には、山賊達の薄ら笑いが聞こえ、嫌な緊張感が走った。

 

 バンッ!

「おい!女!聞こえなかったのか? 酒だ!」

 

「はっ、はひっ……た、ただいまお持ちします。」

 

 《ルフィ、今だけは来たらダメよ。》

 

 ガハハハッ ガハハハッ ガハハハッ

酒瓶が何本も空になり、笑い声は下品さを増していく。

 山賊達は机を叩きながら、下品な冗談を繰り返す。

早く帰って!そしてどうか、これ以上何も起きませんように。

 そう願った矢先に。

 

 キィィー

「マキノー、支払いしにきたー!後、飯食わせてくれ!」

 

 間の抜けた声が、酒場に飛び込んだ。

 ヒグマの目が細くなった。

 

「あっ!お前ら、この前の山賊だな!また俺にやられにきたのか?」

 

 酒場の空気が凍った。

 

「……この前はよくもやってくれたな!クソガキ!ちょうどいいや、あん時のお礼参りと行こうか!」

 

「ガキの次は、あの腰抜けの海賊共だ!テメェらみてぇな腰抜けを見てると、ムカムカしてくんだ。初めて見た時から、殺してやろうかと思ってたぜ。」

 

 山賊達の目が変わった。さっきまでの下卑た笑いは消えている。

 

「シャンクス達をバカにすんなよ!腰抜けなんかじゃないぞ!

 だいたいお前ら山賊なんかより、ずっと強いやい!」

 

「言いたいことはそれだけか、クソガキ!」

 

 《ダメ!このままだとルフィが殺される。》

 「ルフィ、逃げて!」

 

  力の限り叫んだ。

 

 カチャリッ

「おっと、動くなよクソガキ!もし逃げれば、こいつで女がドカンだぜ。ガキのお前でもこいつが何かわかるだろう。」

 

 そう言って私に、銃を向けてニヤニヤと笑ってる。

 

「さぁお楽しみの時間だぜ!」

 

 下っ端の山賊が、ルフィを取り押さえて攫って行った。

私は、恐怖で震えて力が抜け、その場に腰が砕けるように座り込んだ。

 力を振り絞って酒場を出て、急いで村長の家に向かった。

 

 ハァハァハァ バン!

「村長さん!大変っ。」

 

「どうしたんじゃ、マキノ。そんなに慌てて?」

 

「ルフィが、ルフィが山賊達に!」

 

 

シャンクス side

 

潮の匂いが、鼻の奥にまとわりつく。

船体がゆっくりと上下するたび、海がこちらの都合など知らぬ顔で揺れを返してくる。赤髪海賊団の船レッド・フォース号は、フーシャ村へ向けて速度を落としていた。

空は青く、雲は薄い。

その青さが、妙に胸に刺さる日がある。

シャンクスは甲板の上で背伸びをし、眩しい空を見上げた。

 

「……今日で、ここも最後か」

 

背後から足音。乾いたタバコの香りが混じる。

ベン・ベックマンだった。口にくわえた煙草を指で軽く押さえ、隣に並ぶ。

 

「フーシャ村を拠点にした冒険も、今日が最後だな」

 

「ああ。少し寂しくなるな」

 

ふっと笑ったつもりだったが、胸の奥に残るものは消えない。

ベックマンは煙を吐いた。海風に流され、白い筋がすぐにほどけていく。

 

「それにしても……せっかく世界政府から奪ったってのに、ゴムゴムの実。まさかルフィが食っちまうとはな」

 

シャンクスは視線を空から海へ落とした。

あの小さな口。渦巻き模様の実。

喉に詰まり、吐き出させようと思ったが、飲み呑んだ瞬間の音。

 

「不可抗力とはいえな……」

 

唇の端が、苦く歪む。

 

「ただでさえカナヅチのあいつを、本当に一生カナヅチにしちまった。悪いことをした」

 

「ふー……」

 

ベックマンはもう一度、煙を吐いた。

 

「全く。お前が宝箱から取り出すからだぞ」

 

「ルフィを元気づけようと思ったんだ。悪かったよ」

 

言い訳めいた言葉が、潮風に散る。

その時。

 

「お頭!副船長!」

 

見張りのクルーが帆柱から声を張り上げた。

 

「もうすぐフーシャ村に着きやすぜ!」

 

ベックマンが短く返す。

 

「ああ、わかった」

 

船の動きが変わる。帆が絞られ、速度がさらに落ちる。

甲板に足音が増え、錨の準備が始まった。

 

「錨を下ろせ!到着だ!着きやしたぜぇ、お頭!」

 

クルーの声はいつもより小さかった。

いや、声が小さいのではない。周りが、静かすぎる。

 

「……ん?」

 

報告してきたクルーが、眉をひそめる。

 

「おかしいっすね。いつもなら村の連中が出迎えに来るのに……今日は誰もいねェ。それに、やけに静かすぎやしませんか?」

 

シャンクスは港を見た。

風車のある丘。

波止場。

家々。

 

確かに、動きがない。

不吉な静けさ。

海の音だけが妙に大きい。

 

「何が……」

 

言いかけた時、波止場の向こうから誰かが走ってきた。

転びそうになりながら、必死に。

息を乱し、肩を揺らし、顔は真っ青だった。

 

「船長さん!助けてください!」

 

シャンクスの喉がきゅっと締まった。

 

「どうした。何があった?」

 

村人は膝に手をつき、喘ぐように言った。

 

「はぁ、はぁ……ルフィが……! ルフィが山賊達に攫われちまった!」

 

甲板の空気が凍る。

 

「……えっ?」

 

誰かの声。

それが合図だったみたいに、赤髪海賊団の視線が一斉にシャンクスへ集まる。

 

シャンクスは一歩前へ出た。

 

「本当か?」

 

声が低くなる。

 

「いつだ!」

 

「小一時間くらい前です……!」

 

シャンクスの奥歯が、きしっと鳴った。

胸の奥に積もっていた寂しさが、別の感情に塗り替わる。

熱くて、鋭くて、息が白くなるような怒り。

 

「……ベック」

 

シャンクスは空を見上げた。

さっきまで青かった空が、今はやけに遠い。

 

「行くぞ」

 

船長の声に、クルーが一斉に動き出す。

 

 

 ルフィside

 

 ドスッ。

腹に拳がめり込んだ。

ドゴッ。顔面。蹴りが脇腹に飛んでくる。

痛ぇ。でも――

 

「……あれ?」

 

効いて、ない。

 

体がぐにゃりと伸びて、衝撃を吸い込む。

山賊達が目を丸くしたあと、下品に笑い出した。

 

「なんだこの体!」

 

「本当に面白ぇな!殴っても蹴っても効いてねぇぞ!」

 

ベタベタ触ってくるな気持ち悪い!

ヒグマが前に出てくる。

分厚い手で首を掴まれ、そのまま軽々と持ち上げられた。

足が地面から離れる。

 

「新種発見だなァ」

 

ニヤリ。

 

「奴隷商人に売り飛ばせば、結構な金になりそうだ」

 

……は?奴隷?

 ブチッ。

頭の中で何かが切れた。

 

「いい加減に離しやがれ!この山賊野郎!俺に謝れ!」

 

思い切り顔面目掛けてパンチ。

 

だがヒグマは軽く首を傾けて避けた。

 

そのまま――ぶんっ!投げられた。

ドサッ!

背中から地面に叩きつけられる。

 

「人が気持ちよく酒飲んで語らってたってのに、この俺が何か、お前の気に触ることでも言ったかい?」

 

「言った!ちくしょう……絶対に許さねぇぞ」

 

山賊達の笑い声が響く。

物陰から村人の声。

 

「助けに行こう!」「やめろ!殺されるぞ!」

 

近くに角材が転がっていた。

俺はそれを掴む。

 

「おらぁー!」

 

ヒグマに向かって突っ込む。

 

「癪に触るガキだな」

 

踏みつけようとした足を横に飛んでかわす。

ガラ空きの脇腹目掛けてフルスイング。

 

ドゴォッ!!

 

「くらえ!どうだ!」

 

ヒグマの体がわずかに揺れた。

 

「ぐふっ……ぐ、このクソガキィー!」

 

次の瞬間。

ドスンッ!!

顔面を思いきり踏みつけられる。

視界が土色に染まる。

 

「本当にイラつくクソガキだ!このまま殺すか!」

 

踏み込む力が強くなる。

呼吸が苦しい。

でもな。

 

「へへへ……」

 

笑ってやる。

 

「そのクソガキに玉潰されたのは、どこの山賊だ?」

 

空気が一瞬止まった。

 

ヒグマの顔がみるみる赤くなる。

 

「ブチ殺す!」

 

踏みつけがさらに重くなる。

 

「くぅっ……足どけろ!バカ山賊!」

 

その時。

 

「その子を解放してくれ!」

 

村長の声。

視界の端で、村長が地面に額を擦りつけているのが見えた。

土下座。

 

「あんた達と争う気はない!失礼でなければ金は払う!だからその子を助けてくれ!」

 

「お願いします!」

 

マキノも頭を下げている。

胸がギュッと締めつけられる。

 

「村長……マキノ……」

 

ヒグマが足をどける。

ゆっくり、村長の方へ歩く。

 

「はっはっは……さすがは年寄りだ。世の中の渡り方を知ってる」

 

でも目は笑ってない。

 

「だがダメだ!」

 

腰のサーベルに手をかける。

 

「こいつは殺すと決めた。俺を怒らせたからな」

 

ギリ、と歯を食いしばる。

 

「自業自得だろ!この山ざる!」

 

シャキン。

 

刃が抜かれる音。

ヒグマがニヤリと笑う。

 

 ヒグマが剣を振り上げた!

「遺言はそれだけか、クソガキ」

 

マキノの叫び。

「ルフィ!」

 

村長の叫び。

「……た、頼む!見逃してくれっ!」

 

――その声は。震えていた。

 もう終わりかと思ったその時

 

 

「港に誰も迎えがないんで、何ごとかと思えば、いつかの山賊じゃないか。」ドン!

 

その声を聞いた瞬間、胸の奥の焦りが一気にほどけた。

 

「船長さん。」

 

「ルフィ、ずいぶんボロボロじゃないか。この前の勢いはどうした!」

 

 シャンクスがいつもの調子で軽口を叩く。

 緊張で張り詰めていた空気が、音を立ててほどけた。

 

「うるせぇ」

 

 内心俺は、ほっとしていた。

 ヒグマが歯をむき出しにして叫ぶ。

 

「海賊ぅ!まだ居たのかこの村に!海の藻屑にでもなったと思ってたぜ!何しに来たか知らねぇが、死にたくねぇなら失せな!それ以上近づけば撃ち殺すぞ!」

 

だが、シャンクスは歩みを止めない。

ゆっくり。まっすぐ。

ヒグマの声なんて、最初から存在していないみたいに。

 

カチャッ。

 

背後から銃声じゃない、撃鉄を起こす音。

山賊の下っ端がニヤニヤ笑いながら、シャンクスの頭に銃口を突きつけた。

 

「聞こえなかったのか?これ以上近づいたら、頭吹っ飛ばすぞ?ハハハハ!」

 

他の山賊達も下卑た笑いを上げる。俺は歯を食いしばった。

シャンクスは足を止めない。

そして、淡々と言った。

 

「銃を抜いたからには命を懸けろよ」

 

山賊が眉をひそめる。

 

「あぁ?何言ってやがる?」

 

シャンクスは、ちらりと銃口を見た。

 

「そいつは脅しの道具じゃねぇって言ったんだ」

 

カチッ。

 ドォンッ!!

 

銃声が鳴り響く。

撃ったのは、ラッキー・ルウ。笑いながら引き金を引いた。

下っ端の山賊の頭が跳ね、地面に崩れ落ちる。

ドサァ。

静寂。

 

「な……」

 

山賊も、村長も、マキノも、俺も。全員が固まった。

 山賊達がわなわなと震える。

 

「や、やりやがったな!」「なんて卑怯な奴らだ!」

 

ベックマンが煙を吐く。

 

「卑怯?甘ェこと言ってんじゃねぇよ。聖者でも相手にしてるつもりか?」

 

シャンクスが一歩前に出る。

 

「お前らの目の前にいるのは海賊だぜ」

 

山賊の一人が叫ぶ。

 

「うるせぇ!俺達はテメェらに用はねぇ!」

 

シャンクスの目が、わずかに細くなる。

 

「いいか山賊。俺はな、何を言われようと大抵のことは笑って見過ごしてやる」

 

一瞬の間。

 

「だがな」

 

声が低く落ちる。

 

「どんな理由があろうと、おれは友達を傷つける奴は許さない」

 

胸が熱くなる。

 

「シャンクス……」

 

涙が出そうになる。

 

ヒグマが大声で笑った。

 

「はっはっは!許さねぇだと?海に浮かんでるだけの海賊が、山賊様にたてつくとは笑わせる!」

 

そして叫ぶ。

 

「ブッ殺せ!野郎共!」

 

山賊達が一斉に武器を構え突っ込んでくる。

 

「死ねぇぇ!」

 

ベックマンが前に出る。

 

「俺がやる。充分だ」

 

次の瞬間。

 

ボコッ。ガガンッ。ドスッ。

 

鈍い音が連続する。一瞬だった。

山賊達が次々と地面に沈んでいく。

勝負にすらなっていない。ベックマンが銃をくるりと回す。

 

「うぬぼれるなよ山賊。うちと一戦やりたきゃ、軍艦でも引っ張ってくるんだな」

 

マキノが呟く。

 

「すごい……」

 

俺は思わず言葉を漏らす。

 

「つええ……」

 

本当に、格が違う。ヒグマの顔が青ざめていく。

さっきまでの威勢はどこにもない。

 

「ま、待て!今までのことは謝る!だから――」

 

シャンクスが冷たく言い放つ。

 

「どのみち賞金首だろ」

 

ヒグマの目が泳ぐ。

そして、ボウンッ!!

煙玉が地面に叩きつけられる。

白煙が一気に広がった。

 

「煙幕だ!」

 

赤髪海賊団の声。視界が白に包まれる。

次の瞬間、地面が消えた。

 

 白い煙の中。

 

「こい、クソガキ!」

 

乱暴に腕を掴まれ、引きずられる。

 

「くそっ、離せ!」

 

足場が変わる。波止場だ。

小さなボートが揺れている。

 

「乗れ!」

 

ドンッと背中を押され、そのままボートに転がり込む。

ヒグマも飛び乗り、縄を解いた。

ギィ……と音を立てて、ボートが岸から離れていく。

村が小さくなる。やがて沖合。

波の音だけが響く。ヒグマが振り返る。

 

「さて、人質として一応連れてきたが……もう用無しだ!」

 

ニヤリと笑う。

 

「俺を怒らせた奴は、みんな殺してきた!」

 

カチン、と頭の奥で音がした。

 

「お前が死ね!」

 

隙を突いて殴りかかる。だが、簡単にかわされた。

 

「甘ぇな」

 

次の瞬間。

ドンッ!!

ヒグマがそう言って、俺をボートから蹴り飛ばした。

 

「あばよ!」

 

視界がひっくり返る。

 

「くそっ、しまった!」

 

ドボーン!!

 

海に叩きつけられた。

冷たい。重い。

 

「かぼっ……ぶはっ……ばっ!」

 

必死に手を動かす。

だが、力が入らない。泳げない!

というより、身体が動かない!

 

「な、なんだ……!」

 

これが、悪魔の実の代償なのか……!

 

沈む。水が口に入る。苦しい。

ボートの上ではヒグマが高笑いしている。

 

「ヒャッハハハハ!」

 

その背後。

海面が、ぐぐっと盛り上がった。

……あれは。ザバンッ!!

巨大な影。

グルルルルルル……!

ヒグマが振り向く。

 

「な!なんだこの怪物は!」

 

赤い目。鋭い牙。

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」

 

バクンッ!

一瞬だった。

ヒグマもボートも、丸ごと消えた。

血が海に広がる。

そして。ギョロッ。

その目が、俺を捉えた。

 

「うわあああ!がば、ばっ……喰われる!」

 

巨大な口が開く。目の前まで迫る。

ガバァッ!!

ガギィッ!!

衝撃。視界が揺れる。

 

「シャンクス……」

 

気づけば、俺はシャンクスの腕の中にいた。

海の上に立っている。

片腕で、俺を抱えている。

そして。

 

「失せろ」

 

ギロッ。

その一睨み。怪物が、震えた。

ビクッと身をすくませ、そのまま海へ潜っていく。

静寂。

波の音だけ。

 

「恩にきるよルフィ。マキノさんから全部聞いたぞ」

 

ぽたっ。

涙が落ちた。

 

「ひくっ……えぐっ……」

 

止まらない。

こんな俺のために。

命を投げ出してくれた。

自己犠牲とか、そんな軽い言葉じゃ足りない。

 

「俺たちのために戦ってくれたんだな」

 

シャンクスが笑う。

 

「おい、泣くなよ。男だろ?」

 

「だってよ……ジャンクス……」

 

しゃくり上げながら、視線を落とす。

そこに。

あるはずの腕が、ない。

 

「腕が……!」

 

シャンクスは、いつもの顔で言った。

 

「安いもんだ!」

 

笑う。

 

「腕の一本くらい。無事でよかった!」

 

「う うう……うわぁぁぁぁぁん!!」

 

こんなに泣いたのは、いつぶりだろう。

 

海の過酷さ。己の非力さ。

そして何より、改めてシャンクスという男の、偉大さを知った。

 初めてだ!俺も俺もこんな男になりたいと心から思ったのは。

 

 潮風が吹く。

港では赤髪海賊団が最後の荷を積み込んでいた。

 

「この船出で、もうこの街には帰ってこないって本当?」

 

シャンクスが笑う。

 

「ああ。長い拠点だった。ついにお別れだな。悲しいか?」

 

胸が少しだけ痛む。

けど。

 

「悲しいけどさ……もう連れてけなんて言わねぇ!」

 

拳を握る。

 

「自分でなるからな。海賊に!」

 

クルーが笑う。

 

「どうせ連れていってやんねーよ!お前なんかが海賊になれるか!」

 

カッと目を見開く。

 

「なる!!」

 

港に声が響いた。

 

「俺は決めたんだ!海賊になるって!」

 

一歩踏み出す。

 

「シャンクスみたいな、偉大な海賊に!!」

 

そして叫ぶ。

 

「俺はいつか世界一の財宝を見つける!」

 

「シャンクス達よりもすげェ海賊になってやる!!」

 

赤髪海賊団が静かになる。

シャンクスが帽子に手をかけた。

 

「ほう……この俺たちを越えるか」

 

ゆっくりと麦わら帽子を外す。

 

「じゃあ、これを預ける」

 

そっと、俺の頭にのせる。

 

「俺の大切な帽子だ」

 

目が合う。

 

「いつか必ず返しに来い。立派な海賊になってな」

 

胸が熱い。

 

「ああ……!」

 

クルーが笑う。

 

「あいつは大きくなるぜ」

 

「ああ。ガキの頃のあいつに、そっくりだ」

 

「錨を上げろォ!」

 

「帆を張れ!出発だ!」

 

船が離れていく。小さくなる海賊船。

帽子をぎゅっと押さえる。

いつの日か、絶対に。

 




R18なのに全然R18要素がなくて申し訳ないです。

次回から転載特典にも触れていこうと思います。
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