※この作品はR-18です。

海賊王に俺はなる?のか?   作:ずんだニャン

9 / 16
すけべシーンが少なくて申し訳ないっす。




9話 蜜柑と道化 1

 

 東の海《イーストブルー》――とある海域。

 

 シェルズタウンを出る時、町の人たちも海兵たちも見送りに来てくれた。

 リカちゃんは手をぶんぶん振ってくれたし、リリカさんも笑って見送ってくれた。

 町の人たちも「また来いよ」とか「キャプテン・ルフィはいつでも歓迎する」とか、色々に声をかけてくれた。

 

 海兵たちも海兵たちで、敬礼していた。

 本来なら「いやー、いい旅立ちだったな!」って気分になるところだ。

 

「はぁーー……」

 

 けど今の俺は、波に揺られる小さなボートの上で、ひとり深いため息を吐いていた。

 別に、食料が尽きたわけじゃない。海が荒れているわけでもない。また渦に飲まれそうになって、船が沈みかけているわけでもない。

 

 原因はひとつ。

 港でコビーと別れる直前に聞かされた、あの話だった。

 

「ロロノア・ゾロは、海兵ですよ」

 

「……え?」

 

 思わず、間抜けな声が出た。

 コビーは俺の反応を見て、少し困ったように首をかしげる。

 

「えーと……誰かと勘違いしてるんじゃありませんか?」

 

「ちょ、マジで海兵なの?“海賊狩り”のロロノア・ゾロって異名で、賞金稼ぎとかしてない?」

 

「残念ながら……海兵ですね」

 

「本当に海兵……?」

 

「はい。海軍に所属しています」

 

 コビーはなぜか申し訳なさそうに言った。

 

「てか、お前なんでそんなに詳しいんだ?」

 

「海軍が発行してる広報誌があるんですよ。結構前ですけど、それに載ってたんです。たしか、剣の腕が立つ若い海兵として紹介されてました」

 

「若い海兵として紹介……」

 

 ロロノア・ゾロ。海兵。広報誌に載る。若い有望株。

 頭の中で、三本の刀を腰に差したゾロが、海軍の制服を着て敬礼している姿を想像してみる。

 ……いや、似合わねぇ。

 

「うーん……ないな」

 

「え?」

 

「いや、こっちの話」

 

 そんな会話を、コビーとしていた。

 そして現在。

 

「はぁー……ショックだわ。ゾロが海兵ねぇ」

 

 俺はボートの上に仰向けになり、空を見上げた。

 

「しかし、どうなってんだこの世界」

 

 転生した時のことを思い返せば、確かに神様は“よく似た世界に転生させる”と言っていた。

 なら、こういう違いがあっても不思議じゃないのかもしれない。

 けど、ゾロが海兵は予想外すぎるだろ。

 他にも、俺が知らないところで色々変わっていたりするのだろうか。

 

「頼むから変な改変起きてないでくれよ……マジで」

 

 そんなことを考えながら、俺は潮の流れに任せて海を進んでいった。

 

――♢――

 

「ありったけの夢をー、かきあつめー♪」

 

 オールを漕ぎながら、俺はまたもや現実逃避に歌っていた。

 仕方がない。だって、誰がゾロが海兵になってるなんて予想できる?

 競馬なら大荒れどころじゃない、オッズ何倍だよって話だ。

 

「ウィーアー! ……ん?」

 

 気分よく歌っていると、前方に船が見えた。

 海のど真ん中で、ぽつんと停泊している。

 帆は下りているし、船体が大きく壊れている様子はない。

 海賊旗も見えない。商船か?

 

「こんな場所で止まってるなんて、何かあったのか?」

 

 気になった俺は、ボートをそちらへ近づけることにした。

 船の側面まで寄せると、上に向かって声を張る。

 

「おーい!誰かいるのかー?」

 

 しばらくすると、船縁から一人のおっちゃんが顔を出した。

 顔が赤い。どう見ても、酒が入ってる顔だった。

 

「なんだ兄ちゃん。旅人か?それとも海賊か?」

 

「海賊だ。こんな海のど真ん中で何やってんだ?」

 

「海賊か。なら一足遅かったな!」

 

 おっちゃんは酒瓶を片手に、豪快に笑った。

 

「金目の物なら、ついさっき別の海賊に奪われたばっかりだ! ぐはははは!」

 

「いや、俺は別に何も取らねぇよ。この船は商船なのか?」

 

「ああ、そうだ。金目の物はもうないが、酒や食料は残ってる。俺たちを助けると思って、何か買っちゃくれねぇか?よかったら上がってくれ」

 

「おう。そっちに上がるよ」

 

 商人のおっちゃんに言われ、俺はロープを使って商船に上がった。

 甲板に足をつけて見渡してみると、空気は妙にゆるい。

 船員たちは暗い顔をしている者もいるが、血の跡はないし、大きな怪我人も見当たらない。船体も壊されていない。

 どうやら、本当に金目の物だけ奪って立ち去られたらしい。

 命があるだけマシ、ってところかな。

 

「お邪魔すんでー」

 

「おう兄ちゃん、いらっしゃい!なんか入り用な物はないか? うちはなんでも揃ってるぞ」

 

「なんでもって言われてもな……」

 

 特に必要な物は――

 いや、ある。今の俺に一番必要なやつがある。

 

「おっちゃん、コンパスと海図ないか?」

 

「あるぞ!おーい、コンパスと海図だ! 持ってこい!」

 

 おっちゃんが船員に声を飛ばす。

 船員の一人が慌てて船室の奥へ走っていった。

 それにしてもやっぱりこのおっちゃん。

 

「酔っ払ってるのか?」

 

「あたりめぇよ!海賊に金を奪われたんだ。飲まなきゃやってられん!」

 

「どんな奴に奪われたんだ?」

 

「ヘンテコな三人組だったな。あの海賊旗は、道化のバギーのところだ」

 

 おっちゃんは悔しそうに酒瓶をあおった。

 

「クソッタレ。せっかくの商談がパァになっちまった」

 

 バギー海賊団の三人組。

 たしか、ナミに船ごと金を奪われる奴らだったよな。

 まさか、その三人組に襲われた商船と出くわすとは。

 ……ということは、バギーもナミも近くにいる可能性が高い。

 考え込んでいると、船員がコンパスと海図を持って戻ってきた。

 

「ほらよ、兄ちゃん」

 

「助かる」

 

「てか、コンパスも海図もなしに船出するなんて、兄ちゃんも勇気あるな」

 

「いやー、そんな照れるなぁ。勇気あるなんて言われると!」

 

「いや、褒めてるわけじゃねぇんだが」

 

 おっちゃんは呆れたように笑った。

 

「まあいいや。他に欲しい物はあるか?」

 

「うーん。他に欲しい物って言われてもな……」

 

「頼むよ兄ちゃん。俺たちを救うと思ってさ」

 

 おっちゃんは酒瓶を置き、両手を合わせる勢いで頼んできた。

 海賊に襲われた直後に、また海賊相手に商売しようってんだから、商人根性ってのはすげぇな。

 ……あ!そこで、ふと思い出した。

 

「おっちゃん、海軍が発行してる広報誌ってあるか?」

 

「お、おお。あるぞ。おーい、月刊マーリンだ!持ってこい!」

 

「月刊マーリン……」

 

 そんな名前なのか。

 正直、コビーの話を聞いてからずっと気になっていた。

 ゾロが海兵として載っていたという海軍の広報誌。

 この世界の情報を知るには、ちょうどいいかもしれない。

 しばらくすると、船員が雑誌の束を持って戻ってきた。

 

「ほいよ、兄ちゃん。最新号から一年前の分まで揃ってるぜ」

 

「なら全部くれ」

 

「あいよ。しかし兄ちゃんも、海賊なのにこんなもん読むなんて変わってるな。まあ、こっちは在庫処分できてありがたいんだが」

 

 おっちゃんから十二冊まとめて受け取る。

 

「ん?海賊は誰も読まないのか?海軍の情報とか仕入れれるんじゃないの?」

 

「なんだ、知らないのか?これは広報誌なんて言っちゃいるが、ほとんど海軍のプロパガンダ雑誌だ。誰でも知ってるぜ」

 

「中身は適当なのか?」

 

「いや、記事自体は本当だ。ただ、かなり盛ってる。海軍がどれだけ偉大か、どれだけ平和を守ってるか、そういう話ばっかりだな」

 

「なるほどなぁ」

 

 大海賊時代。

 世の中には海賊がうじゃうじゃいる。海軍としても、あの手この手で入隊希望者を増やしたいんだろう。

 それに、プロパガンダ雑誌とはいえ情報は情報だ。

 こういう物から今の世界を拾っていくしかない。

 

「一番欲しかった物が手に入った。助かったよ」

 

「そりゃよかった」

 

「ついでに、商品を全部買っていくよ」

 

「なに!? 本当か!?」

 

 おっちゃんの赤い顔が、一瞬で明るくなる。

 

「兄ちゃん、そりゃ本当に助かるぜ!」

 

「食料、酒、武器、生活用品。その辺まとめてくれ」

 

「お、おう! おーい!兄ちゃんが買ってくれるってよ!使えるもん全部出せ!」

 

 船員たちが急に慌ただしく動き始めた。

 さっきまでしょぼくれていた船が、少しだけ活気を取り戻す。

 俺は代金を払い、まとめられた品を収納袋へ放り込んでいった。

 

「お、おい兄ちゃん……その袋、どんだけ入るんだ?」

 

「無限」

 

「む……無限」

 

 おっちゃんたちが目を丸くしていたが、細かい説明はしない。

 生き物以外は何でも入る便利袋だ。航海するにはチートすぎる代物である。

 食料も酒も、いくらあっても困らない。

 収納袋の中なら腐らないし、場所も取らない。買える時に買っておくに限る。

 

「いやー、助かったぜ兄ちゃん!金を奪われてもうダメかと思ったけど、兄ちゃんのおかげで奪われた以上稼げたよ!」

 

「こっちも助かったよ。コンパスと海図、それに広報誌まで手に入ったしな」

 

「そんじゃ気をつけろよ。バギー一味の連中、この先の町を根城にしてるって話だ」

 

「おう。ちょうどそこに行くつもりだ」

 

「……兄ちゃん、やっぱ変わってるな」

 

 おっちゃんは呆れたように笑いながらも、最後には手を振って見送ってくれた。

 俺は商船を降り、ボートに戻る。

 買ったばかりの海図を広げ、コンパスで方角を確認した。

 

「とりあえずバギーのいる町、オレンジの町に行くか」

 

 そこに行けば、ナミにも会えるはずだ。

 

 泥棒猫のナミ。天候を読む天才。そして何より可愛いし、ナイスバディの持ち主!

 航海士としてぜひ仲間にしたい!

 

「今の俺に一番必要な仲間だな」

 

 俺は、オレンジ町へ向かって進み始めた。

 

――♢――

 

 ボートの上、俺はオレンジの町へ向かうべく進んでいた。

 手元には、さっき商船で買った海軍の広報誌――月刊マーリンがある。

 まずは一年前の号から順番に読んでみることにした。

 ペラペラとページをめくっていると、さっそく目当ての記事を見つけた。

 

「なになに……ロロノア・ゾロは海軍期待の新人。賞金稼ぎとしての実績もあり、くいな曹長とは幼馴染。三刀流の使い手であり、未来の海軍を担う偉大な若者である……」

 

 記事には写真も載っていた。

 海兵の制服を着用し帽子まで被っているゾロ。

 腕を組んで、ものすごく不機嫌そうな顔をしている。

 

「……まじで似合わねぇ」

 

 信じられないくらい似合ってない。

 本人も明らかに嫌そうだ。写真越しでも「早く終われ」と言ってるように見える。

 けど、それ以上に気になる名前があった。

 

「くいな……生きてるんだ」

 

 記事には、はっきりと“くいな曹長”と書かれている。

 つまり、この世界ではくいなが生きている。しかも海兵になっているらしい。

 

「賞金稼ぎしてたゾロが、くいなに勧誘されたとかか?」

 

 あり得なくはない。

 というか、この世界なら普通にあり得そうだから困る。

 その後も残りの月刊マーリンを読み漁ってみたが、ゾロの記事はその一つだけだった。

 

 代わりに、くいなの記事はいくつか見つかった。

 どこそこの海賊を捕まえただの、若き美人剣士だの、海軍期待の女性剣士だの、内容はだいぶ盛られている気がする。

 けど、くいなが海軍で活躍しているのは間違いなさそうだった。

 

「にしても、なんなんだこの雑誌は」

 

 読み進めるうちに、だんだん別方向で気になってきた。

 海軍イケメン特集。

 海軍美人特集。

 海軍イケオジ特集。

 マリンフォードベストグルメ。

 対決、海軍各支部のカレーランキング。

 

「……意外と面白いな、月刊マーリン」

 

 完全に海軍の宣伝雑誌だと思っていたが、これはこれで読み物として楽しめる。

 プロパガンダにしては、妙に俗っぽいところもあるのが逆に面白い。これで勧誘のつもりなのだろうか?

 もっと“立てよ国民” “ジークジオン”みたいな感じで募集してるかと思ってた。

 

 そんなふうに雑誌を読みながら船を進めていると、遠くからかすかな声が聞こえてきた。

 

「おーーい! そこの船、止まってくれぇー!」

「止まれぇーー!」

「助けてくれぇーー!」

 

 声のする方へ目を向けると、三人組の男が海に浮かんでいた。

 遭難かと思ったが、よく見れば一人がバギー一味のマークがついた帽子をかぶっている。

 

「あいつら、さっきの商船を襲った奴らか」

 

 なるほど。因果応報ってやつだな。

 

「無視無視っと」

 

 俺はそのまま進もうとした。

 

「おいコラァー! 無視すんなぁーー!」

「溺れてるだろうがぁーー!」

「助けろぉーー!」

 

 ……とても溺れてるとは思えない声量だ。

 海賊って逞しいな。

 まあ、考えてみれば、あいつらに道案内させた方が確実にオレンジの町へ着ける。

 仕方ない。助けてやるか。

 俺はボートを三人組の近くへ寄せた。

 

「おーい、溺死したくなかったら、さっさと乗れ!」

 

 三人組はその声を聞くやいなや、一目散にボートへよじ登ってきた。

 そして息を整える間もなく、ニヤリと笑う。

 

「ふぅー、助かったぜぇ。兄ちゃん、早速で悪いが船を止めな!」

「俺たちゃ、あの道化のバギー様の一味のもんだ!」

「この意味、わかるよな兄ちゃん!」

 

 助けられた直後に、さっそく俺のボートを奪おうとしてきやがった。

 しめとくか。

 ボコッ!ボコッ!ドカッ!ボキッ!ボガッ!

 

「ぐえっ」

「ぐはっ」

「ぐふぉっ」

 

 バギー一味の三人組は、あっという間にボートの床に転がった。

 

「しゅびばしぇん……もう殴らないでください……」

「「しゅみませんでした……」」

 

「おう。もう馬鹿なことするんじゃねぇぞ」

 

 俺はオールを指さした。

 

「ほら、代わりに漕げ」

 

「は、はい……。どこまで行きますか?」

 

「オレンジの町まで。場所はわかるか?」

 

「もちろんです! バギー様が拠点にしてる町です!」

「俺たちもその町に帰るところだったんです!」

「あの女が現れたせいで!」

 

 あの女。

 たぶんナミのことだな。

 一応、確認しておくか。

 

「何があったんだ?」

 

 三人組に話を聞いてみると、やっぱりナミのことだった。

 商船を襲って帰る途中、助けを求めてきた女の船を見つけた。

 それで近づいて乗り込んだら、逆に騙されて船を奪われたらしい。

 おまけに、その直後に天候が悪くなって転覆。三人そろって海に投げ出された、という話だった。

 

「てなことがあったんですよ! 酷い話でしょう!?」

「あの女、次会ったらタダじゃおかねぇ!」

「見つけたらぶっ殺してやる!」

 

 やっぱり天候の変化まで読んでやがる。

 ますます仲間にしたいな。

 

「まあ、運がなかったな。諦めろ」

 

 そもそも海賊が騙されたからって、酷いもクソもないだろうに。

 

「そんな軽く!?」

「このまま帰ったら俺たち……」

「バギー船長に殺されちまう……」

 

 バギーか。

 ゾロの件もあるし、こいつにも何か変化が起きてないとは限らない。一応、聞いておくか。

 

「バギーってのは、どんな奴なんだ?」

 

「俺たちの海賊船の船長です!」

「ある悪魔の実を食べた恐ろしい男でさぁ!」

「幹部には猛獣使いのモージ、曲芸のカバジ、それにライオンのリッチーがいます!」

 

 そこから三人に、バギー一味の情報をいくつか聞いた。

 話を聞く限り、俺の知っている情報とだいたい同じらしい。

 

 少なくとも、バギー一味に関しては大きなズレはなさそうだ。

 そんな話をしているうちに、ボートはオレンジの町へ近づいていった。

 

「到着しましたぜ、ルフィの旦那」

 

「全然人の気配がないな、この町」

 

 港から見える町は、不気味なくらい静かだった。

 

「実はこの町、今バギー一味が襲撃中でして……」

 

「そうなのか。んで、お前らはどうするんだ?」

 

「手ぶらで戻ってもあれなんで、俺たちはこの辺で時間でも潰しときやす」

 

「そうか。送ってくれてありがとな」

 

 三人組と別れ、俺は町の中へ入っていった。

 少し歩いてみるが、本当に人の気配がない。

 それどころか、家々はご丁寧に荒らされていた。

 ドアは蹴破られ、窓ガラスは割られ、家の中はぐちゃぐちゃにかき回されている。

 通りには、略奪されたあとに要らないと判断されたらしい物が、乱雑に捨てられていた。

 

「にしても、原作だとこんなに町、汚かったっけ?」

 

 少なくとも、俺の記憶ではここまで酷くなかったはずだ。

 道路はもっと綺麗だったし、民家も一軒一軒荒らされた感じではなかった。

 せいぜい、ペットフード屋がライオンに襲われて燃やされたくらい。

 あとはバギー玉で何軒か壊されたとかだったような。

 

「海賊が町を襲撃するってなると、実際はこんなもんなのかな」

 

 そんなことを考えながらさらに歩いていると、遠くから怒鳴り声が聞こえてきた。

 

「待てぇーー! 貴様ぁーーっ!」

「海図をよこせぇぇーっ! 泥棒女ぁ!」

 

 泥棒女。

 ってことは、ナミか。

 声の方を見ると、オレンジ色の髪をした女が、バギー一味の連中に追われていた。

 やっぱりナミだ。

 

 そのナミが、こっちへ向かって走ってくる。

 

「おーやぶーん!」

 

 ……ん?

 なんか俺の方に向かって叫んでるな。

 

「親分! 助けに来てくれたのね!」

 

 俺の目の前まで来るなり、ナミはそう叫んだ。

 

「お、親分? 俺が?」

 

「そうよ!何言ってるの!」

 

 ナミは当たり前みたいな顔で言う。

 

「それじゃ、あとは親分に任せたわ!」

 

 そう言い残すと、俺を囮にして横をすり抜け、そのまま逃げていきやがった。

 

「おい待て、女ぁ!」

 

 海賊の一人がナミを追いかけようとする。

 だが、別の海賊がそれを止めた。

 

「追う必要はねぇさ。なんせ親分が残ってくれたんだからな」

「なるほど。子分を庇ったってわけだな!」

 

 勝手に納得するな。そしてまた雑魚に絡まれた。

 だが、ナミを仲間にするためだ。ここは仕方ない。

 

「あの女が持ってる海図はなぁ、俺たちの船長、道化のバギー様にこそふさわしいんだよ! おとなしくよこしな、親分!」

 

 そう言いながら海賊が殴りかかってきた。

 当然、避けて反撃する。

 ボゴッ!

 殴り飛ばされた海賊が地面に伏せる。

 

「なっ!?」

「この野郎!」

 

 残りの二人も挑んできたが――

 ボゴッ! ボゴッ!

 当然、勝負にもならない。

 三人まとめて地面に沈んだ。

 すると、後ろから声がかかる。

 

「すごいっ! やっぱり強いのね、あんた!」

 

 振り返ると、そこにはさっき逃げたはずのナミがいた。

 

「やっぱりって……初対面だと思うけど」

 

「ええ、そうね。私が一方的に知ってるだけ」

 

 ナミはにっと笑った。

 

「シェルズタウンで見たわ」

 

「あの町にいたのか?」

 

「ええ、いたわよ」

 

 そう言うと、ナミは一歩近づいてきた。

 

「ねえ、あんた。私は海賊専門の泥棒、ナミっていうの」

 

 そして、悪びれもなく笑って言った。

 

「私と組まない?」

 

 これが、未来の海賊王の航海士との初めての会合だった。




どうだったでしょうか?
感想、評価待ってます!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。