「傑! お前、どこ行ってたんだよ!」
「心配させんな、クズ。保護した女の子はどうした」
「悟。硝子。私、なりたい自分を見つけたんだ」
「は?」
「私を必要だと言ってくれる子もいてね。遠い所に行って、もう戻らないと思う」
「何言ってんだ、俺がお前を必要としてるだろ!!!!」
あまりにもあっさりと言われたそれに、私は笑った。久しぶりに笑った。
そうだ、必要とされてたんだ。もう他に居場所を作ってしまったけれど。
私は結構悟に思われてるんだ。きっと、遺伝子ごと。
悟を見つめる。翼雷と悟は、そっくりだけど違う。私と継も違う。
私や悟は1人で生きていけるけど、彼らは支えてやらないとダメなんだ。
継はもう家出寸前だったし、翼雷は継が側にいないだけでしおしおする。
当番制が必要だった。私が必要とされる余地はあるのだ。
「君は彼と違って、1人でも大丈夫だろ」
「はぁー!? 彼って誰だよ!」
「2人の顔が見れてよかった。じゃあね」
そして私は、身一つで向こうの五条家へと行った。
私が虐められているから、心配だったけど大歓迎された。
引くほど大宴会をされた。
「私は無個性で……」
「人間ちゃん可愛いと思います」
「むしろ最高では?」
「かわよ」
「翼がなくてもいいのかい?」
「あの、継さんには言わないでくださいね? 翼が有る子を産んでくれないとお仕事が終わらないって主張しないと、継さん、次のお仕事で禪院家に行っちゃいそうで」
私は、その言葉を聞いて目を見開いた。
「そう、かな。でも流石に子供まで作ってるのに。でも禪院家のこと言ってたな……」
「個性の欲求っていうのは強いものなんです。継さんは子供への能力の継承が個性ですし、それを生業とするのは十分あり得ると思います。継さんの貞操観念がどうとかではなく、そういう個性なら仕方ないんです」
「傑さんはこちらで術式を活用してヒーロー活動や人助けをしたいとかで、素晴らしいと思います! 幼稚園はこちらでは危険で最前線の仕事ですから、呪霊操術はかなり有り難がられると思います! 無理をして若様のお嫁さんになる必要はないので、こちらで力を生かして幸せをゲットしてください! サポートしますので!」
や、優しい……!!
「傑は鵺のお嫁さんになるんだからね! 絶対だからね!!」
「ふふふ、鵺くんは可愛いね。大人になってまだそう思ってたら、聞いてあげるよ」
「美々子も夏油様のお嫁さんになります!」
「菜々子も夏油様のお嫁さんになります!」
「さ、お酒を飲んでください。今日はお祝いです」
「ふたなりになる個性の持ち主はもう呼んでますので、ささ」
「えっ」
「あって悪いものじゃないですって! ささ!」
お酒を勧められ、ふたなりになる個性を使われ(どんな個性なんだ。なんでもありだね)、よくわからなくなって部屋に連れて行かれた時、翼雷は怒って五条家の皆さんを追い出した。怒りのあまり、紫電がパリパリしている。
「お前ら、初日から傑を食おうとすんなバカ!!」
「若さまには継様がおられるのでいいではないですか!」
「私たちだって人間ちゃんにヨシヨシされつつヨシヨシしたいです!」
えっ 私、狙われてたのか?
「同じ私なのにこの人気の差は一体……」
驚愕する継。申し訳ないけど、実際にグイグイきてくれている。
「継を口説いたら俺が殺すからに決まってんだろ」
「なるほど?」
「傑もくれるなら欲しいけど、継もいるし、傑には傑だけを愛してくれる人と最高に幸せになって欲しい思いもあるから……」
「僕! 僕!」
鵺くんがぴょんぴょんと跳ねて存在をアピールする。
なるほど?
実は私、こっちでの生活ヌルゲーだな?
そして、恋愛はとりあえず置いておいて、幼稚園の先生になる事になった。
既に何度か経験させて貰っているが、世代を経るごとに強力になる個性のあるこの世界、幼稚園は個性の情報が少ない・個性が最も強力・理性や躾が未熟・体は小さく弱いとまさに最前線の力量が求められる。高い倫理・コミュ力・制圧力・適応力と、下手な警察官よりエリートでしか勤められない仕事だ。
呪力を持つ子は少ない為、呪力でしか消滅させられない呪霊は幼児を世話する人手にも盾にも実験台にもなる。
凄腕の保育士が増えたと大絶賛で、私は自分で言うのもアレだが大活躍である。
そして、ほんっとうに治安が悪い。
私でさえヒヤリとする事があるくらい治安が悪い。
何がすごいって、ピンチの私が園児に救われた事があるくらい、めっちゃくちゃなんだよ、この世界。
突発的に個性が目覚めて暴走なんて事もある。子供の個性の暴走で親が死ぬ事件は多い。聞き分けのいい鵺くんだって、飛んでいっちゃう事があるから油断はできない。
個性って本当になんでもありで、小さい子ほどすごい個性を持っていて、個性に心が乗っ取られてるのか? って程に凶悪な個性の持ち主は性格も弾けている。
だからこそ、躾が重要で、幼稚園の先生は一番のエリートと言っていいかもしれない。全てのパラメーターがマックスでないと務まらない仕事だ。
美々子と菜々子は個性はないけど術式はあるから、頑張って教えないといけない。
でも、園児の躾は社会貢献しているという実感が物凄かった。
レスキューも人助けという感じがするが、暴れん坊だった園児がいい子になると世界の未来を救った気になる。というか、多分救ってる。
この世界の悪人はそれはもう凄まじく、個性を奪う個性なんてものがあって、術式は奪えないので呪術師が対抗馬として駆り出されてたりして、凄く大変だし、私も園児を守って戦った。
なんかの間違いでいつ滅んでしまっても仕方ない世界だが、だからこそ精一杯頑張って今日を生きている。
なお、継には一回襲われてしまって、私は処女ではあるが童貞ではない。
その上、私も個性を発現してしまった。
継は私の子供1人、翼雷との子供を5人ほど産んでいる。
幸いな事に、私を欲しいと言ってくれる人は大勢いるのだが、仕事が楽しくて継と作った子以外は子供はいない。
鵺くんが未だに嫁嫁言ってくるので、本当にお嫁さんになっちゃうのもいいかもしれない。
私は思いもしなかった。
AFOと呪詛師羂索が手を組み、凄まじい戦いが起きた結果、子供達を連れて、疎開をする事になるなんて。
マシュマロ
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