マシュリリス「え!?〇〇〇しないと出れない部屋!?」 作:もるげんれえて
マスターもとうとう限界になり、二人は折檻を受けることになる。
C108で当選したら頒布予定の小説です。
続きは当選後に公開していきます。
「マシュ!リリス!二人とも、また喧嘩して!」
マスターの怒声がカルデア中に響いた。何人かはその声に振り向き、また何人かはやれやれと苦笑いを浮かべ合う。
カルデアの食堂、その壁際に二人のサーヴァントが、マシュとリリスが正座で座らされていた。二人揃って首には「私たちがめちゃくちゃにしました」と看板をぶら下げている。文字通り、食堂は机がひっくり返り椅子が壁に突き刺さっていて、バイコーンが暴れたかの様な有様だった。
「ごめんなさい先輩……」
マシュが上目遣いに言う。本当に反省している、しょんぼりとした声だ。「リリスさんの悪口が聞くに堪えなくて、つい手が出てしまいました……」反省していなさそうだ。
「ごめんマスター」
リリスも声には申し訳なさが滲んでいる。「アテシ、キリエライトがどこまで悪口我慢できるか試してたら、思ったより沸点が低くて」こいつもダメだ。
「本当に申し訳ありません先輩。リリスさんが倫理にも劣る、本当になんでサーヴァントとしてここにいるか分からない罵詈雑言を捲し立てるので、他のサーヴァントの皆さんのお耳汚しになってしまうかと」
「そうやって人のせいにするの、キリエライトらしくないな〜。あ、シールダーやめたからもういいんだけっけ」
「はあ?シールダー・パラディーンですけど?サーヴァントなのにクラスもまともに理解されてないんですか?」
「クラス名が長すぎますぅ〜。しかもアンタ専用のクラスとか、覚える必要ないし。ただのキリエライトで十分だし」
「ああ、バーサーカーには少し難しすぎましたか。でも、バーサーカーの皆さんは覚えてくださってますけど。リリスさんは覚えられなかったらパラディーンで覚えてくださいね」
「そうやって見せびらかすの、ガキくさい」
「ぬぬぬ……」
「ぎぎぎ……」
「はいはい、そこまでー」
メンチを切る二人をどうどう、と引き離す。
「全く、このままダチョウ倶楽部でも始めるつもり?」
「「ダチョウ……?」」
揃ってきょとんと呆け、マスターはしまったと額を叩いた。後ろのエミヤがうんうんと頷いている。
「とにかく、二人はまったく反省の色なし。別に仲良くしなくていいけど、こうやって毎回物的被害を出すのは感心できません」
珍しく説教モードのマスターにマシュはさらに肩身を小さくする。そんな彼女を見てリリスはニヤリと笑うが、マスターが睨むと表情を正した。
まだまだ反省していない二人に、いよいよマスターの堪忍袋も限界だった。正確には堪忍袋と胃袋と巾着袋。毎回、ダ・ヴィンチちゃんやゴルドルフ所長に怒られる身にもなって欲しい。
「なので!」マスターはさらに声を張り上げた「二人は特別折檻メニューをこなしていただきます!」
「特別?」
「折檻メニュー?」
ふたたび呆然とする二人。そのとき、食堂の電気が突然消えた。
「え!なんですか!?」
「それでは、今回の特別折檻メニューの協力してくださった皆さんをご紹介します!」
どういう原理か、マスターだけにスポットライトが当たっていた。彼女はどこから取り出したのか、マイクを構えている。
マスターがこちら!と手を振ると、その方へ新たなスポットライトが照らされる。
「企画設定担当!殺生院キアラ!」
「ふふ。マンゴープリン♡フェラーリ♡チュニジア♡」
「システム設計担当!BBちゃん!」
「最近、私のことを万能系ラスボスだと思って便利に使ってませんか?まあ、その通りですけどね!」
「ルーン魔術担当!スカサハ!」
「うむ。なんだかわからんが、とにかくヨシ!」
「封印結界処理担当!ヴリトラ!」
「ワエはお前たちが頑張るところが見たいのじゃ。頑張れ!頑張れ!」
「最後に建築担当!テノチティトラン!」
「打ちっぱなし♡突貫工事♡マチュピチュ♡」
「以上の5名が協力してくれました!ありがとう!」
マスターが手を振ると、5人がにこやかに振り返した。その満面の笑みは、おそらくなんらかの裏取引があったのだろう。カルデアの暗部である。
「殺生院さん、BBさん、スカサハさんはいいとして、テノチティトランさんと、ヴリトラさん……?」
マシュが担当する5名を改めて見て、ぶつぶつと思案するように口元に手を当てる。すると、彼女は突然目を見開き、顔を蒼白にした。
「ま、待ってください先輩!それだけは!それだけは許してください!」
「どうしたん、キリエライト?」
彼女の今までにない必死な様子にリリスも狼狽えた。何より、彼女が、マシュ・キリエライトが、心酔するマスターに対してこんな拒絶を見せることなど見たこともなかった。マシュは見たことない形相でリリスに向いた。
「リリスさんも!とにかく謝りましょう!この折檻だけは回避しなくちゃいけません!」
「え、ほんとどうゆうこと?ちょっとわからないよ……」
「いいから!先輩!もうリリスさんとも喧嘩しません!手も出しません!おやつの横取りもしません!ですから、それだけは勘弁を!」
「うん、うん」
マスターは静かに目を瞑り、腕を組んで考える。
そしてゆっくり腕組みを解いて、その腕で答えを見せる。丸を作ろうとして腕を上げてーー
「ダメでーす!!」
バツを作った。マシュの顔に絶望が走る。
「え、マジでこれなんなの?コントなの?」
「そんなわけありません!」
「そう、そんなわけありません。では二人とも」
この世の終わりの様な表情のマシュといまだに事態を飲み込めていないリリスを見据えて、マスターは指を鳴らした。
「お仕置きの時間です」
「んにゃ、ここは」
飛ばされた意識が戻ると、リリスは身を起こした。辺りを見渡すと、どこかの部屋の様だ。カルデアの個室よりも少し広いくらいで、テレビや小さな冷蔵庫が収まった棚、ソファーと机にベッドがあった。他にはすりガラスの扉とトイレへの扉がある。前者は恐らく浴室に繋がっているのだろう。まるで――リリスは見たことはないが――どこかのホテルのようであった。
一足先に起きていただろうマシュは、この部屋唯一の、外に繋がるだろう扉の前に立ち尽くしていた。その後ろ姿は背中でもわかるくらいの哀愁を漂わせ、リリスはほくそ笑む心地になる。ただ、笑えはしないのは、ここに飛ばされる前のキリエライトの動揺ぶりがどうしても気になるからだった。
「どしたん、キリエライト」
その尊顔を眺めてやろうとゆっくり近づいた。
けれどマシュはそんなリリスには目もくれず、ただ扉の一点を指さした。つられてリリスも見る。
そこには簡潔に、端的に、この部屋がどんな部屋であるか、驚くべき状況を解説していた。
その文言に、リリスとマシュは思わず声を上げてしまうのだった。
「「え!?〇〇〇しないと出れない部屋!?」」
面白かったら高評価、ブックマーク、感想のコメント、フォローなどよろしくお願いいたします。
マシュマロでも感想を待ってます。
https://marshmallow-qa.com/morghenrate?t=s2pkoY&utm_medium=url_text&utm_source=promotion