マシュリリス「え!?〇〇〇しないと出れない部屋!?」 作:もるげんれえて
リリスは何とかしてS〇Xをせず脱出を図るのだが――
注:まだそういう行為は出てきません
C108で頒布予定の新刊「え!?S〇Xしないと出れない部屋!?」です
頒布版では加筆修正、展開の相違などがある可能性がありますので承知ください
詳細はこちら(https://www.pixiv.net/artworks/147576893)から
「……って、なに」
流れでキリエライトと叫んだアテシだけど、冷静になって問い返した。いや、言葉はわかる。文も、意味もわかる。その全てが合わさった時に指し示される状況が分からなかった。脳が理解を拒絶していた。
「常識で考えて、そんなのありなの。その……」
「S○Xを出られない部屋が」
「そだよ。てか、なにそれ。キリエライトは知ってた風だけど」
ゆらり、というふうにキリエライトはソファーに腰掛けた。いつものハキハキとした彼女とは違う項垂れた姿にこそばゆい心地よさを感じた。けれどそれを堪能するだけの余裕はなかった。
「S○Xをしないと出れない部屋。それは、S○Xをしないと出れない部屋なんです」
「何の説明にもなってないんだけど」
小馬鹿にして言おうとした言葉は、思ったより深刻な音で出た。
「ええ、それ以上でも、以下でもないんです。S○Xをしないと出れない部屋は、S○Xをしないと出れないんです」
「いやだからさ」
と続けようとして、アテシは気づいた。自分自身が呪いのような存在である以上、呪いの在り方は身に染みている。自分が嵐の魔女であるように。
呪いは解釈を与えてはならない。解釈されれば解呪される。解釈の余地がないほと、そして呪いを解く方法が明確であればあるほど、呪いは解呪されにくく強くなる。永遠の愛を見つけなければ解けないカエルの王子のように。
そのことに気づいたアテシは、ようやく思ったよりヤバい状況だと気付いた。
「この部屋は極東のとある地域で発生した呪術と聞きます。家の都合で婚姻した二人がいつまでも子を成さないために、無理矢理
それほんとかよ、とアテシは半目で呟いた。実際のキリエライトの知識はマスターのベッド下に隠された薄い本からもたらされたもので、カルデアデータベース有明支部や虎穴支部、メロン支部などを自主研鑽した結果の知識だった。しかしこの部屋の源流は天岩戸をベースとする呪術でもあり、全てが嘘というわけではなかった。
「おそらくはこの話をベースに、聖杯を使ってこの特異点を構築したのでしょう」
「まじで」
聖杯の使い方として、これは本当にいいのだろうか。流石に誰か注意してやれよと呆れてしまった。
「聖杯の魔力リソースをベースに、先ほどの皆さんの力を借りて作られた特異点です。そして、ルールが単純明快な以上、おそらく裏をかくことはできません」
「いやいや、でも私たちサーヴァントじゃん。その気になれば破壊してでも」
「おそらく無理だと思います。ヴリトラさんとテノチティトランさんによる特別施工です。震度8でも、エクスカリバーでも、人理焼却砲でも、おそらくは」
そう言われて片方の眉を立てて、リリスは扉に向かった。
「キリエライトにしては弱気じゃん。はじめっから諦めるなんて」
「……事実をお話ししただけです」
「ふん。じゃあそこで指咥えてみてなよ。アテシだけ脱出して、どうやって一人S○Xしてアンタが出てくるか見てやるから」
◇◇◇
「……」
五体投地でベッドに体を放り投げたアテシは、天井の何だかムーディーな壁紙をぼんやりと見ていた。
都合五発の宝具を打ち込んだが、この部屋の何もかもがびくともしなかった。部屋どころか調度品も壊れなかった。
確かにアテシは攻撃的なサーヴァントではない。バーサーカーだけれどヘラクレスやペンテレイシアのような怪力があるわけじゃない。それでも、ここまで何も起こらないのでは、アテシのサーヴァントととしての自信が揺らいでしまう。
「……はあ」
明らかに、あからさまに、キリエライトが「だから言ったじゃないですか」と言いたげにため息をついた。彼女はずっとソファーでぼんやりこっちを見てただけだ。
何の労力もなしに、笑いやがって。腹が立つ。腹の奥に火が入るのを感じた。
「ご自慢のパラディーンでは壊せないんですかね。ここまで使わないとか、ずいぶんと貴重な武器でありますことー」
「部屋が狭くて展開できません。あと、ブラックバレルは寿命を持つものに有効ですから、部屋には効きません」
「じゃああれは?きりえらいと〜うるとら〜た〜っくる!」
「……」
彼女の視線が鋭くなり、その痛みが心地よかった。思わず口が釣り上がる。
「えー、やってよ!アテシあれ好きだよー」
「無駄な労力は使いませんから」
「自信ないんだぁ。やっぱ、シールダーってその程度なの?あ、パラディーンか」
「そういうリリスさんはやたら無鉄砲に宝具を放つしか能がありませんね」
「キリエライトは何もしないで。もしかして〜〜」にやり、と嗤ってみせる。
「アテシと、シたいの?」
「誰が!」
キリエライトが立ち上がり、ベッドで寝ている自分を見下ろす。
「あなたなんかと」
「だってそうじゃん。何もしないってことはそういうことでしょ?やだなーベースケだなー」
「そうじゃありません。宝具を撃つしかできないあなたと違って、ちゃんと現状を認識しようと」
「じゃあ何かやったらどう?ただ座ってて開くような扉じゃないんでしょ」
「どっかの誰かが宝具を撒き散らすから、当たらないように静かにしてたんです」
その言葉についた火が燃え上がった。腹から頭へ。バネのように跳ね起きた体は、キリエライトの冷たい目を一身に浴びた。彼女の瞳が熱っぽい。
「はあ、アテシのせいだって言いたいんですか」
「言っても聞かないじゃないですか」
「アンタは何も言わなかったじゃない。ホウレンソウもできないわけ?」
「わたしが言っても聞かないことくらいわかりますよ」
口舌は激しく、お互いの唾液が降りかかるくらいに顔が近付いていく。もっとこの女の子を口汚く罵りたい。馬鹿にしたい。無価値に貶めたい。
無感情を徹する表情のキリエライトを、突き飛ばしてやりたい。
「キリエライトの、そういうところが嫌い」
「奇遇ですね。わたしもです」
はらわたが煮えたぎっていた。喉をぐらぐらと吐き気のような嫌悪が頭に注がれていた。熱に浮かされたように、足元がおぼつかなくなる。意識はすべて、目の前のこの女しか見ていなかった。
怒りが滲む向かい合った女の目に、アテシにもこんな色があるのだろうと思った。そう思うと少し愉快で、かなり不快だった。
熱は衝動のように全身を走り、手が出そうになる手を抑える。けれども抑えが効かない衝動がアテシたちを突き動かして、顔と顔を、胸と胸を突き合わせていた。
もう戻れない。逃げられない。逃げない。
こんな奴に逃げてたまるか。
キリエライトの柔らかく艶のある唇から熱い吐息が溢れ、頬を撫でた。腹立たしくて荒い鼻息を吹きかけてしまう。
今すぐにこいつを、こいつを、どうすればいいんだーー
「ーー」
「ーー」
そして、アテシたちはーー
キスをした。
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