※この作品はR-18です。

性年のしがらみ   作:村上しんご

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第十話 狂い始めた人生③

 ユウヤは、あまりにも優しかった。

 

 あの男のように、私の嫌がることを無理やりしようとはしない。

 何をするにも、私の許可を得てから行動に移る。

 

 ホテルに入って抱き寄せるその腕は、どこまでも慎重で、触れる指先にさえ、気遣いが滲んでいた。

 一つひとつの仕草に、確かな愛を感じる。

 

 本来なら、それだけで満たされるはずだった。

 

 なのに、何かが足りない。

 胸の奥に、ぽっかりと穴が空いたような感覚。

 

 その違和感が、じわじわと広がっていく。

 

 どうしてなのか、自分でも分からないまま──ただ、胸だけがひどく痛んでいた。

 

 最愛の人と結ばれようとしてるのに、あの男の姿がどうしても頭を離れない。

 ユウヤとキスをしてるはずなのに、あの醜い顔面が目前に迫り、ムチュムチュと唇を奪われた時のことを思い浮かべてしまう。

 

 その記憶を払拭しようと、私から積極的に求めても、痕跡はまったく消えようとしない。

 

 私はユウヤの唇を無我夢中で貪りながらも、赤ら顔でパンパンに膨れたあの醜い顔を思い浮かべ、股間をびっしょりと濡らし続けていた。

 

「タカコ……本当に、良いんだね?」

 

 唇が離れると、そう言って私の顔をじっくりと覗き込むユウヤ。

 

 シャワーを浴びてベッドに潜り込んだ私たちは、すでに生まれたままの姿で互いの身体を抱きしめ合っていた。

 

 あの男と違って、ベトつきのないサラッとした肌──。

 吹きかかる息さえ爽やか。

 なのに、心の中のわだかまりだけはどうしても消えない。

 

「……うん。……いいよ。……何もかも忘れさせて」

 

 私がそう言って頷くと、ユウヤは首筋にキスをして、そこからゆっくりと舌を這わせていく。

 たどたどしくはありながらも、その舌使いは丁寧で、溢れんばかりの愛情が宿っている。

 

「……あぁっ!」

 

 ゆっくりと滑っていく舌の感触に、思わず声が漏れる。

 瞳をギュッと閉じて、身体をビクビクと震わせている。

 

 だが、頭に浮かんでいるのは、ベッチョリと絡み付くように肌を這いずり回った、あの時の忌まわしい感触。

 

「……ゆ、ユウヤ! ……もっと、激しくしてっ!」

 

 どうしても消えない、あの男との記憶──

 声を張り上げると、ユウヤは戸惑いを見せながらも、私の身体を荒々しく舐めていった。

 

 肌を滑るようにその手が私の股間に伸びる。

 そして、彼の唇が胸の膨らみに辿り着く。

 

 その温かさと、いっぱいの愛情を感じて心地好いとは思っている。

 だが、どうしてもあの男の面影が頭から離れない。

 

 余計なことをペラペラと語りながら、ニヤニヤと笑って私の身体を唾液で汚したあの記憶。

 心の中でどんなに否定しようと、悩ましい声が漏れるのを防ぐことはできなかった。

 

 知らず知らずのうちに、脂ぎった禿げ頭を愛おしむように撫で回し、気持ち良さげに声を張り上げていた。

 私は、あの男との行為に心を奪われ、感じてしまっていたのだ──。

 

 今もそれを否定することはできない。

 ユウヤに舐められているのに、脳裏に浮かんでいるのは小太りなあの男。

 

「……あっ……だ、ダメっ!」

 

 乳首をパクっと咥えているのはユウヤなのに、閉じた瞳に映っているのは、ここに居るはずもない憎らしい姿だった。

 ニンマリと笑った口からニュルっと舌が伸び、乳首の先端をチロチロと擽っている。

 

 気持ちの中では、こんなにも拒絶してるのに、それが頭に浮かんで身体の疼きが抑えられない。

 私はそれを何とか振り払おうと、衝動的に身体を反転させた。

 

 そして彼に馬乗りになっていった。

 

「私がしてあげる。……だから、任せて」

 

 突然、積極的になった私を見て、ユウヤは呆然と目を見開いた。

 今までの私からは想像もできないその様子に、まるで別人を見ているかのように、言葉を失っている。

 

 それでも──

 

 彼は、何も言わなかった。

 思うところはあるはずなのに、ただ静かに、私の身体を抱き寄せる。

 

 私はその胸に軽くとキスをすると、乳首を甚振るように、周りからゆっくりと舌を這わせていった。

 

「……あ…………あぁ…………あっ!」

 

 険しい顔で、すすり泣くような声を上げるユウヤ。

 呼吸が激しくなり、その胸が上下に激しく揺れ動いている。

 

 泣きそうな顔で悶えながらも、私の頭を愛おしむように撫で回している。

 優しさに溢れたその温もり──。

 

 しかし、これは私があの男にさせられたことを、ただ真似ているだけ。

 何度も行為を繰り返すうちに、私は奴の言いなりになり、あの醜い身体を労わるように舐めさせられていた。

 

 屈辱を感じながらも、拒むことさえできなかった。

 憤りを感じているはずなのに、奴隷のように扱われて、なぜだか子宮の奥がキュンキュンと疼きだしていた。

 

『もっと、丁寧に……労わるように舐めて~。そう、上手いよ~』

 

 いまだにあの時のニヤけた声が頭に浮かぶ。

 奴は頭の下に腕を組んで、寝転んだまま、王様気分で私の心まで滅茶苦茶にしていったのだ。

 

 そんな扱いをさせられていたのに、股間はびっしょりと濡れたまま。

 ついには、あの男の汚らしいものまで咥えさせられた──。

 

 ハァハァと息を荒げるユウヤを見つめながら、私はその乳首を舌と指でじっくりと甚振っていた。

 下半身に伸びたもう片方の手は、股間のものを握りしめ、ゆっくりと上下に動かし続けている。

 

 気持ち良さげな彼の様子を伺いながらも、どうしても物足りないという思いばかりが募っていく。

 

 私はあの男にしたのと同じように、身体中をペロペロと舐めながら、下半身に向かって唇をゆっくりと移動させていった。

 

「……た、タカコ~」

 

 唇がそこに向かうにつれて、彼の表情が切なげになっていく。

 甘えるように私の名前を呼びながら、恋人つなぎで指を絡めていく。

 

 彼の大切なところに辿り着いた私は、天に向かって伸びるそれを、根元の方からチロチロと舐めていった。

 その途端に、手に握ったものはビクンビクンと飛び跳ねて、制御できないほど暴れ回っていく。

 

 ユウヤのそれはあの男とは、まったく違っていた。

 大きさや太さはもちろんだが、皮を被ってまだ幼さが残っている。

 

 ちょっぴりオシッコ臭く、あの男のような逞しさもない。

 それでメチャメチャにされることを望んでいた私は、未成熟なその姿に、少しだけ期待を裏切られたような気がしていた。

 

 ──あの男の痕跡を失くすには、もっと太くて大きくなければ、消し去ることはできないだろう。

 中を目一杯に押し広げ、激しく掻き回されていた感覚が、いまだにあそこに残っている。

 

 あの漲るような力強さが、いつまで経っても頭に焼き付いて離れない。

 

 私はそれを払拭するように、彼のものを口に含んで、夢中でしゃぶり始めていった。

 ジュプジュプと音を立てながら、何かに憑りつかれたように上下に激しく首を動かす。

 

 奴の汚らしいものを咥えていたという事実を、どんなことをしてでも消し去りたかった。

 

『ほら~、カリの裏側を、もっと丁寧に舐めてよ~』

 

 だが、そう言いながら私の頭を撫でていた、奴の声が頭を過る。

 その時だけは何故か優しくて、頭を撫でるその手の温もりに、胸がキュンキュンと締め付けられていた。

 

 その後、私は奴の上に乗せられて、激しく腰を突き上げられた。

 何度も繋がってるうちに痛みはなくなり、あれが出たり入ったりする刺激に、ゾクゾクしたものを感じていた。

 

 そして熱いものがビュッビュビュッビュと飛び出てくると共に、初めての中イキを経験する。

 

 その時、中に入ったカチカチのものを、ギュッと締め付けていた自分が許せない。

 

 あのプヨプヨな身体に縋るようにしがみ付き、ビクンビクンと身体を痙攣させていたことが恨めしくて堪らない。

 

 その時のことを思い浮かべるたびに、死にたくなってしまう。

 なのに、同時に身体中がどんどん熱くなっていく。

 

 衝動が抑えきれなくなってしまった私は、彼の腰の上に跨っていった。

 

「……挿れるよ」

 

「……う、うん」

 

 唐突に繋がろうとする私を見て、彼は躊躇いながらも目を見開いていた。

 恥じらいもなく、大股開きで跨る私の姿に、信じられないといった表情を浮かべていた。

 

 硬くなったものに手を添えて、腰を沈めていくと、入り口に火照ったものが突き当たる。

 すでにヌルヌルになっていた私のあそこは準備万端──。

 

 ユウヤのそれを、いとも簡単にニュルっと飲み込んでいった。

 

「ま、待って! ……ゴムは!?」

 

 そんなことまで、気を配ってくれるユウヤは確かに優しい。

 でも、今の私にとってそんなことは正直どうでもよかった。

 

 むしろ、あの男に中出しされた跡を、彼のもので上書きして欲しかった。

 

「大丈夫だから……中に出して」

 

 そう言って腰を振ると、彼の顔つきがみるみるうちに険しくなっていく。

 

 ラブジュースを溢れさせながら、クッチュクッチュっと卑猥な音を立てていく私のあそこ──。

 

 熱くなったものが出たり入ったりを繰り返し、眉間に皺を寄せる彼の口から、咽び泣くような声が漏れていく。

 

「……あぁっ……くぅっ……す、すごい……」

 

 ベッドのシーツを握り締め、気持ち良さげに悶えるユウヤ。

 

 だが、あの男を忘れようと必死に腰を動かす私は、そんな彼のことなどまったく見えてはいなかった。

 何かに憑りつかれたように腰を動かし、気持ちの良いところに、ユウヤのあれをひたすら擦り付ける。

 

 一心不乱に腰を振り、快楽を貪る姿は、きっと淫乱女のように見えているだろう。

 

 なのに、どうしてもあの男のものを思い浮かべてしまう。

 重量感があって、目一杯に中を埋め尽くす力強さ──ユウヤのものにはそれがなかった。

 

 出たり入ったりするたびに心地好いとは感じる。

 

 だが、ただそれだけ。

 

 あの男の形跡を消すなど、到底不可能だ。

 

 私はそれを受け入れることができず、狂ったように腰を動かし続けていった。

 あの男との一夜を必死になって消そうと──

 

 だが、その脳裏には奴に下から突かれた時の、生々しい感触が鮮明に蘇っている。

「ムフフ……」と笑いながら私の胸を揉み、感じてる様子を見て、得意げになっているニヤけた顔も。

 

「タカコー! ……お、俺、もうダメ!」

 

 そんな時、突如としてユウヤの叫びが響く。

 辛そうに何かを必死に堪えてるような切なげなその顔。

 

「い……イクぅ──────ーっ!」

 

 その叫びと共に、ピュッピュピュッピュと中にまき散らされる熱い体液。

 

「……私も……イクっ、イクっ、イッちゃう──────っ!」

 

 子宮口に打ち当たるその感触を感じながら、私も絶頂を迎えていった。

 遠ざかる意識の中で思い浮かべていたのは、あの男の忌まわしいニヤニヤとした笑顔。

 

 ──数日後。

 

 あの男──マエジマから連絡を受けた私は、迷うこともなく、その待ち合わせ場所へと足を運んでいた。

 

 

 

 

 

 

              ~to be continued~

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