あれから僕は死に物狂いで勉強した。
しかし、“ご褒美”を与えられるのは、いつも──宮田、安西、加納といった決まったメンバーばかり。
元々おとなしく、勉強だけが取り柄だった彼らは、ここぞとばかりに頭角を現し、先生を独占していった。
一方で──
僕や井上、林といった面々も、確かに成績は上がっている。
なのに、クラス内ではいつも最下位。
そのチャンスはいつまで経っても巡ってはこなかった。
先生から”ご褒美”を貰いたい──
その想いは一緒のはずなのに、どうして彼らばかりがいい思いをしているのだろう。
彼らと先生がパーテーションの向こうに消えていくだけで、胸が締め付けられるように苦しくなっていく。
しかも最近は、行為の内容もどんどん激しさを増し、先生の口から悩ましい声が漏れるようになっていた。
最初は少し戸惑い気味で、自分からは何もできなかった彼ら──。
しかし、回数を重ねる毎に大胆さは増し、次第に彼女の身体を好き勝手に蹂躙し始めようになっていた。
もう、童貞だった頃のうぶな面影など微塵もない。
AVで覚えたような知識を真似て、欲望の限りを尽くす姿は、まさに盛りの付いた雄。
女の身体を知った彼らは、もうこの特権を手放す気はないだろう。
自分らだけが”ご褒美”を得ようと躍起になり、身体だけではなく心まで奪って、先生を自分のものにしようとしてるかのようだ。
先生だって、それを咎める気はまったくない。
彼らのどんな要求にも応え、目の前でそれを見ている僕たちを、やきもきさせている。
”ご褒美”という名目で、あんな美女の身体を自由にできるのだ。
どんな手段を使っても自分のものにしたいと思うのは、あたりまえなのかも知れない。
だが、僕のようにいつまで経っても報われない生徒たちが、どんな想いでその光景を眺めているのか、彼女は知っているのだろうか。
一度でいいから先生としてみたい──
その想いは日毎に増すばかり。
なのに、いくら頑張っても彼らの壁は、まるで越えられる気がしない。
放課後の誰もいなくなった教室で、僕と井上、それに林は、いつものように居残って予習に励んでいた。
無駄な努力だと言われようが、僕たちは諦めることなどできなかった。
やりたいのにできないという鬱憤が、僕たちの心にどす黒い欲望となって渦巻いているのだ。
このままでは、彼らと結託して先生を犯しかねない。
僕たちは余計な雑念を振り払うかのように、夢中になって勉強に没頭していた。
「……頑張ってるわね」
そんな時、不意に扉が開き、先生が姿を現した。
相変わらず無表情──
なのに、きりっと引き締まったその端麗な顔付きは、否応なく人の視線を引き寄せる。
紺のスカートスーツに身を包んだ姿は、威厳に満ち、隙のない厳しさを漂わせていた。
その身だしなみはどこか近寄りがたく、男に媚びる気配などまったくない。
しかし、豊満な胸がスーツの胸元を魅惑的に膨らませ、それでいながらキュッと引き締まった腰のくびれ──。
さらに下半身に向かうと、むっちりとした肉付きのいい太股とお尻が、見てくれと言わんばかりに存在感を主張している。
その中身を想像しただけで、男性の本能が揺さぶられていく。
しかも、ほんのりと漂ってくる欲情をそそる匂いと、その美しい顔立ち。
僕たちは先生がそばに来るだけで、鼓動を弾ませ、呼吸を荒げ、興奮を抑え切れずにいた。
「予習をしているのね。……いい心がけだわ」
僕たちは突然、先生が現れたことで慌てふためいていた。
何も応えられずに狼狽えていると、先生はそう言いながら、僕の膝に手を乗せ、開いていた教科書を覗き込む。
胸元の開いたブラウスの隙間から胸の谷間が見えている──
それだけで、どうにかなってしまいそう。
なのに、先生は悪びれたようすもなく顔を近付けてくる。
艶やかなその唇が、まるで誘っているかのように僕を困惑させていく。
僕は我慢しきれずに、先生に抱き付こうとした。
「そんなに頑張っているなら、補習してあげましょうか?」
しかし、僕はその一言でハッと我に返る。
「……ほ、補習って……」
意味ありげに微笑む先生の様子に、僕はどこか妙な違和感を覚えていた。
それは、単に勉強を教えると言っているのではない。
まるで、僕たちを誘惑でもしてるかのような妖しさに満ちたその態度。
途轍もないチャンスが、今まさに目の前に差し出されている──
そんな警告だけが、胸の奥で膨れ上がっていった。
「え、えぇーっ……!?」
「……ほ、本当ですか?」
その態度に、井上と林も何かを感じ取ったかのように、思わず声を上げる。
先生を見つめるその目には、やっと巡ってきた“チャンス”への期待にあふれていた。
「ええ……本当よ」
キラキラと目を輝かせる僕たちを前にして、先生は表情も変えずにキッパリと言い放つ。
「では、帰る準備をしなさい。……ここで、できることではないわ」
次の一言が、決定打のように、全員の胸に突き刺さっていた。
ここで、できるようなことではない──ということは普段の“ご褒美”以上のことが待っているのは間違いない。
誰もが慌てて教科書とノートを鞄にしまい込む。
「さあ、行きましょうか」
そう言って、何ごともなかったかのようにくるりと背を向ける先生。
教室を後にしてプリプリと揺れるお尻を、僕たちは息を呑みながら食い入るように、いつまでも眺め続けていた。
~to be continued~