気が狂いそうな日々が続き、ハジメにはもうヤスコに頼る以外の道しか残されていなかった。
しかし、彼女のあの悍ましい姿を想像するだけでも吐き気がする。
正直、顔を見ることすら耐えられないだろう。
それでも──
胸の奥で渦巻く、どうしようもない衝動を鎮められるのは、彼女しかいない。
だが、二人でいるところを知り合いに見られるのだけは、どうしても避けたかった。
ハジメは校門近くの木の陰に身を潜め、登校してくるヤスコをじっと待っていた。
その間も、あそこは疼くばかり。
ズボンの上から硬くなったところを無意識で撫でていると、遠くの方から「ドスン、ドスン」と地響きが響く。
腫れぼったい目に瓶底眼鏡──それにぼさぼさの頭。
パンパンに膨れた頬には、吹き出物がびっしり浮かんでいる。
何重にも垂れた顎が、頭と胴体の境目を完全に隠していた。
突き出た腹は、横綱のようにどっしりとしている。
風船のように丸々と膨れた大きな身体を揺らしながら、威風堂々と現れたのはヤスコ。
遠目で見ているだけでも、圧倒的な存在感。
その異様さに、ハジメは思わず眩暈を覚えた。
まさに、その姿は冒険漫画に出てくる凶暴なトロール。
こんな女に童貞を奪われた自分を呪いたくなった。
しかし、その瞬間、身体がぽっと熱くなり始める。
あそこは痛くなるほど膨れ上がり、まるで彼女と一つになるのを待ち望んでいるようだ。
その脳裏には、あそこにハマっていた時の生々しい記憶が蘇り、見た目なんてもうどうでもよくなっていく。
ハジメは引き寄せられるように、彼女の元に歩み始めていった。
「あら、ハジメじゃん。……昨日は、学校休んだんだね。どうしたの?」
涼しい顔のヤスコは、ハジメの童貞を奪ったことなど、忘れたように話す。
ニタリと微笑むその顔は、アニメに出てくるガマガエルのようだ。
しかし、この時の彼には、すでに現実など見えていない。
もう一度、彼女としたいという思いで頭がいっぱい。
あれほど悍ましいと思っていたはずなのに、ハジメはうっとりとした目で彼女を見つめていた。
スカートに隠れた股間のあたりを、ニヤニヤと笑いながら見つめるその姿は、明らかに普通ではない。
だがヤスコは、そんな彼を前にしてもまったく動じていなかった。
──いや、肉が付きすぎて、そもそも表情がほとんど変わらないのだ。
無言でそこを見つめ続けるハジメを見て、ヤスコが先に口を開いた。
「ちょっと~。……どこ見てんの~?」
まるで恥じらう乙女のような口ぶり。
だが、その姿にはあまりにも似合わない。
ハジメはその言葉に、ハッと我に返った。
そして、意を決したようにガマガエルのようなその顔を、じっと見据える。
「も、もう一度……あの続き……もう一度しない?」
その額から汗がダラダラと流れ落ちる。
引き攣った顔には、隠しきれない緊張が浮かんでいた。
そんな彼のオドオドとした様子を見て、ヤスコはニヤリと笑い、白い歯を覗かせる。
「あの続きって……?」
その意味を、彼女がわかっていないはずがない。
それでも、わざと惚けてみせているのだ。
嫌らしく歪んだその笑みは、どこか恥じらっているようにも見える。
だが同時に、ハジメの慌てる様子を楽しんでいるようでもあった。
ヤスコは彼の口から、はっきりと言わせたいのだ。
その証拠に、戸惑う彼を見ても、その笑みは少しも崩れなかった。
「あ……その……おととい、僕の上にまたがって……えっと……」
歯切れの悪いハジメの言葉。
傍から見れば、何を言いたいのかまったくわからない。
しかし、ヤスコは落ち着いた素振りで、はっきりとそれを言い切った。
「ああ……また、私としたくなっちゃったの?」
それは、まるで自分が求められるような存在であるかのような言いっぷり。
涼しげな表情と見下すよう態度は、明らかにハジメを下に見ている証拠。
醜い彼女の見た目に、その姿はまったく似合っていない。
「……う……うん……」
しかし、ハジメは否定することはできなかった。
いまだに悶々とした気持ちは胸の奥で渦を巻き、あの時の心地よさが鮮明によみがえっている。
そんな彼女の態度を、突っ込みたいという気持ちもある。
だが、彼女の機嫌を損ねるわけにはいかない。
ハジメはモジモジとしながら唇を噛み、彼女の返事を待った。
そして、ほんのわずかな沈黙。
しかし次の瞬間、ヤスコの口から出た言葉は、そんな彼を絶望の底へ突き落とすものだった。
「……そうなんだ……嬉しい。……でも、ごめんね」
まったく予想もしていなかったその言葉。
呆然とするハジメは、口を開いたまま言葉も出せずに、ポカーンと立ち尽くす。
ヤスコは気まずそうに視線を逸らし、ぽつりと言った。
「私、付き合ってもいない人と、そういうことはできないよ……」
その瞬間、ハジメの思考は完全に止まった。
呆気に取られたその顔は、まさに開いた口が塞がらないといった面持ち。
(……こいつ……人の童貞奪っといて、何言ってんだ!?)
そう思っても口に出すことはできない。
そんなことを言ってしまったら、ヤスコと繋がるなんて二度と出来なくなってしまうだろう。
青ざめた顔で視線を落とし、どう説得すればいいのかと必死に頭を巡らせる。
その時だった──
ヤスコがタイミングを見計らったように、ぽつりと言った。
「もし……ハジメが私のこと好きで、付き合いたいって言うなら、話は別だけど……」
その一言で、ハジメは彼女の意図を悟った。
ヤスコは、ハジメの口から「付き合ってほしい」と言わせたいのだ。
以前のハジメなら、絶対にそんな言葉を口にすることはなかっただろう。
だが──今は違う。
「ぼ、僕、ヤスコと付き合いたい! ……好きなんだ!」
ここぞとばかりに叫ぶハジメ。
その瞬間、ヤスコの口角がゆっくりと吊り上がった。
それはまるで、最初からこうなることを知っていたかのような笑み。
だが──今のハジメには、そんなことはどうでもよかった。
たとえ悪魔に魂を売ってでも、ヤスコと繋がって、あの快感をもう一度味わいたい。
ヤスコがどんなに不細工でも、それを覆してしまうだけの魅力がそこにはあった。
ニタリと笑うヤスコを前に、ハジメはうっとりと見惚れている。
だが、彼が見ているのはヤスコの姿ではない。
その先に待っているであろう快楽を思い描き、それに心を奪われているのだ。
「そうだったんだ……実は、私も前からハジメのことが気になってたの……」
ヤスコは落ち着いた口調で言った。
まるで、その言葉を最初から用意していたかのように。
しかし次の瞬間、わざとらしく頬を染め、モジモジしながらポツリと呟く。
「それなら……付き合おうか?」
その仕草はまるで恋する乙女。
だが、ブクブクに太った醜い姿には、やはり似合わない。
それを聞いた瞬間、ハジメの瞳がぱっと輝いた。
「うん、じゃあ! 今から……」
身を乗り出して言いかけたその言葉を、ヤスコは咄嗟に遮った。
「ダメだよ。……これから学校でしょ? 続きは、授業が終わった……あ・と・で♪」
そう言って可愛いげに振る舞う彼女の姿は、まさにぶりっ子。
しかし、その仕草と見た目がどうしても嚙みあっていない。
ハジメは愕然とした。
やっと念願が叶うと思ったのに、放課後まで待たなければならない。
そう思うと、気が遠くなりそうだった。
だが、否定などできない。
嫌われてしまえば、それですべてが終わるのだから。
「……う……うん……」
気のない返事をするハジメ。
あからさまに落ち込んだその様子を見て、ヤスコはまたしてもニヤリと笑った。
「でも、どうする? ……それ。……そのままじゃ、学校行けないよね?」
彼女は意味ありげに言った。
その眼鏡の奥の瞳がじっと見つめているのは、テントを張った彼の股間。
ハジメはそれに気づくと、慌てて両手でそこを隠した。
二人は恥じらうように、同時に頬を赤く染めた。
そして、気まずそうに視線を逸らし、互いにモジモジとそっぽを向いた。
その姿は、まるで付き合い始めたばかりの初々しい恋人のようだ。
しばらくの沈黙のあと、ヤスコがふいに口を開いた。
「……口で……してあげようか?」
突然の申し出に、ハジメの胸の中で様々な思惑が渦を巻く。
もしかしたら、それ以上の展開になるかもしれない──。
ハッと顔を上げ、呆然とヤスコを見つめる。
「……えっ? ……う……うん……」
だが、躊躇いながら返事をすると、すぐに視線を避けた。
落ち着かない様子で、どこを見ていいのかわからずに狼狽えている。
しかし、ちらちらと目を向けているのは、タラコのようにふっくらとしたヤスコの大きな唇。
──どんなことをされるのだろうと、期待を抱かずにはいられなかった。
口でしてもらったことなど、今まで一度もない。
呆然と立ち尽くし、落ち着きなく辺りをキョロキョロと見回している。
すると、ヤスコが突然その手を掴んだ。
「すぐに済むから、こっち来て……」
大きな手に引かれるまま連れて来られたのは、ハジメが身を潜めていた校門近くの木の陰。
登校してくる生徒たちの声が、すぐ近くから聞こえている。
ハジメは木を背にして立ち竦む。
そして、ヤスコはその前にしゃがみ込んだ。
無理な姿勢で身体を丸めているせいか、ヤスコの着ているシャツは今にもはち切れそうだ。
背中までたっぷりと肉がついたその姿は、まるで巨大な饅頭。
ヤスコは下からハジメを見上げ、恥ずかしそうにはにかんでいる。
──だが、ハジメにはそれが可愛いとは、とても思えなかった。
たしかにヤスコを夢見心地で見つめている。
だがそれは、これからどんなことをしてくれるのかという期待があるからだ。
悍ましいとは思っていても、雄の本能には打ち勝てない。
彼女の大きな姿を見下ろしながら、無意識にニヤニヤと笑みを浮かべていることにさえ、気付いていない。
やがて、ヤスコの手が彼のテントを張った部分を、ズボンの上から優しく撫でていった。
その瞬間、人に労わられる心地好さで、ハジメの身体から力が一気に抜けていった。
──だが、それだけではない。
ただ撫でられているだけなのに、今までのモヤモヤした気持ちが一気に消し飛んでいった。
まるで駄々をこねる子供を、優しく諭す母親のような温かさに包まれ、心が穏やかになっていく。
そして、臭いと決めつけていたのに、その身体からほんのりと漂ってくる甘い香り──。
いつの間にか、ズボンのファスナーは下げられ、ハジメのビンビンになったものはヤスコの手で剥き出しにされていた。
「わぁー! すごいね。……はち切れそうだよ」
そう言っておどけて見せる彼女。
その唇が、丸出しの部分に向かってゆっくりと近付いている。
脈打つ場所にふわりとかかる、ほんのり温かな吐息──。
そして息をつく間もなく、想像以上に柔らかい唇が、そこにチュッと吸い付いていった。
ハジメは思わず声を上げた。
「あ……あぁ──っ!」
悶えずにはいられなかった。
泣きそうな顔で呼吸を荒げ、ぎゅっと目を閉じながら天を仰ぐ。
硬くなった所はヤスコの手の中でビクンビクンと暴れ回り、先端から透明な粘膜がじわじわと溢れている。
ヤスコは、そんな彼の様子を伺いながら、妖しげにぺろりと舌を覗かせた。
そして、それの側面をなぞるように、突き出した舌をチロチロと滑らせていった。
巨体には不釣り合いな、愛らしい小さな舌──。
唾液の滴る舌先が、血管を浮かび上がらせたそれの根元から先っぽを、行ったり来たりと繰り返していく。
ピチャピチャと音を立てて、艶めかしげに動くその舌使いはとても丁寧で、手の届かないところまで隅々に行き渡っていく。
ハジメはその心地好さに、安堵の表情を浮かべながら、身体を小刻みに震わせていた。
啜り泣くような声を上げながら、いつの間にか抱えたヤスコの頭を、一心不乱に撫で回していく。
彼女のぼさぼさの髪をクシャクシャにして悶える彼には、相手がどんな容姿であろうともう関係ない。
あれほど嫌っていたのが嘘のように、慈しむ姿はまるで欲望に取り憑かれた亡者のよう。
込み上げてくる切ない思いを、発散させなければ気が狂ってしまいそうだった。
だが、今すぐにでも発射したいのに、このまま出すのはなぜか名残惜しい。
この快感をずっと味わっていたいという気持ちと、我慢し続ければもっと凄いことをされるかも知れないという期待もある。
彼は込み上げてくる射精感を必死になって堪えていた。
しかし──
次の瞬間、亀頭をパクっと包み込む生温かい感触。
唾液をたっぷり含んだ舌がねっとりと絡みつき、プルプルした唇がゆっくりとスライドを始める。
「あぁ──────っ! ……だ……だめぇ────ーっ!」
時間にすれば僅か数秒──
もっと、この心地好さを味わっていたいと思うのに、飛び出すものは止められない。
彼女の頭を押さえながらその口の中に、有りっ丈の子種をビュッビュビュッビュとまき散らしていった。
たしかに、繋がって絶頂を迎えた時のような衝撃はない。
だが、カズミの中に出した時より遥かに心が満たされていた。
朦朧とした顔でポカーンと口を開き、天を見上げたまま、残りのものを出し続ける。
感極まって涙まで流し、呆然と立ち尽くすその姿はまさに抜け殻。
ヤスコはそんな彼を見つめながら、口の中に飛び出でてくるものを、チューチューと吸い込んでいた。
そして、ハジメの子種を無駄にしたくないとばかりに、さらにそれを飲み込んで献身的に愛情を注ぐ。
すべてを搾り取ると、萎んでいくものを丁寧に舐め、お掃除まで始めていく。
その姿には、言葉では言いあらわせないほどの愛があふれていた。
「いっぱい出たね~。……気持ち良かった?」
そう言ってニタリと笑うヤスコの顔は、やはりガマガエルにしか見えない。
だが、幸せな気持ちに満ちた今のハジメには、そんなことなどどうでもよかった。
いや──むしろ可愛いとさえ思える。
ハジメはその大きな身体をギュッと抱きしめ、子供のように甘えた。
「ヤスコ~。……僕、続きがしたい……すぐにでも続きがしたいよぉ~」
そう言って泣いている様子は、駄々をこねる大きな子供。
ヤスコは少し困ったような顔をすると、呆れたようにフッと笑う。
「しょうがないなぁ~。……じゃあ、二人で学校サボっちゃおうか?」
その言葉を聞いた瞬間、ハジメの顔がパッと明るくなった。
「……う……うん……」
少し照れながら、瞳をキラキラと輝かせてヤスコの手をギュッと握る。
登校してくる生徒たちは、群れをなして次々と校門へ向かって歩いている。
その流れに逆らうように、二人は手を繋いだまま来た道を歩いていった。
この時のハジメは、それがどこへ向かう道なのか考えもしなかった。
~to be continued~