ラスボス倒して世界を救った死を操る魔法少女の僕♂が終末思想教団の教祖にさせられた 作:ことばの目
断罪の聖女が突撃してきた後、ライブはなんとも言えない空気のまま終わった。
帰る皆を見ていると、怒っていたり不安そうにしていたりと皆が不安定になっているのを感じる。
僕が何か気の利いた事言えたら良かったが、出来たら苦労しない……。
撤収はアタシ達に任せて、とファメちゃんなどのスタッフに言われてしまい、僕は帰る事にした。
さっさと走って帰る気分にもなれない。
「チェンジオフ。」
楽屋でいつもの「変身解除風の姿」に変身し、歩き慣れた道を歩く。
この時間は真っ暗で街灯も少ないので、1人で考え事をしたい時にはよく通る道だ。
そしてこの姿は、体は女の子のまま白髪だった髪色を黒髪にしたり、ファメちゃんにコーディネートされた服を上から着る事でそれっぽくしただけの状態。
別に魔法少女から変身解除した訳ではない。
だから、こうして背後から突然、光り輝く剣で心臓の辺りを貫かれても、ええっ?
「変身解除しても、体を魔力で構成しているのね。流石、世界の救世主。不意打ちなんて想定内って訳ね。」
後ろから断罪の聖女の声がする。
へ、変身解除してなくて助かった〜!
多分変身してなかったら、死んでた……。
いや確認してないし変身前も平気だったら怖い。自分が。
「別に争おうってつもりも無いのよ。ただ平和的解決の1つとして試しただけで、この程度でやられるとは思ってないもの。」
剣を仕舞いながらそんな事を言う断罪の聖女。
それにしては殺意高すぎませんか!?
「なんでここまで無警戒なのかと不思議だったけど、そんな体ならそりゃそうよね。突き刺さって、一瞬焦ったわよ。」
平然とした様子で語る彼女に、少し怖くなる。もしかして、人殺した事あります……?
黙ってる僕に対して、不思議そうな顔をして断罪の聖女は尋ねてきた。
「……反撃さえしてこないなんて。貴方、頭おかしいんじゃないのかしら。」
今のアンタにだけは言われたくないやい!!
脳内で反論しつつ疑問に答える。
「僕の力、手加減とか出来ないから……。こ、こらー!って怒るくらいなら出来るけど……。」
「なるほど。貴方の信者がやたら熱心な理由が分かったわ。」
なんでそんな話になるんだ……?
「それで、本題だけど。貴方は信者達の事どう思ってるのかしら。」
「ど、どうって言われても……。」
頑張って解答を考え、思った通り正直に答えるしかない。
「信者のみんなのお陰で、今、生活出来てるからありがたいなとしか……。たまに暴走するけど……。」
「何も考えてないって訳ね。」
むしろどうすればいいか教えて下さい……!
ため息混じりに断罪の聖女は語り出す。
「ああいう信者ってのは、馬鹿しか居ないのよ。貴方のような存在がちゃんと導かないと。」
そ、そういうもんなのかな……?
「ちゃんと選別し、競争させ、より正しい存在になるようにコントロールしなさい。ちゃんと金を払う信者はちゃんとまともだもの。」
ずいっと僕に近寄りながら強く言い切る。
「正しくて美しい心を持った人間は、競争でしか生まれないもの。」
誰もいない向こうに突然目を向ける断罪の聖女。
「ねぇ、さっきからそこでこっそり聞いてる貴方もそう思うでしょう?」
「ひえっ……。」
物陰から突然女の子が出てくる。いつの間に居たんだ。
よく見るとその子は見覚えのある子で。
「エキテカちゃん……?」
よく見る信者の子だ。名前覚えられてて良かった……。
「盗み聞きなんて、あまりお行儀良くないわよ?」
「いえ、そんなつもりは無く、たまたま……。」
笑顔で尋ねる断罪の聖女に、少し怯えながら答えるエキテカちゃん。
「サナ様。確かに断罪の聖女の言う事は間違ってないと思う。」
「良かった。賛同してくれるのね。」
拳を胸の前で握り少し俯きながら答えるエキテカちゃんに断罪の聖女は嬉しそうに答える。
「私、これからガンマリますから!!」
恐らく「頑張る」を噛んだエキテカちゃんはそれだけ言い残してそのまま去っていった。
「少なくとも1人の信者は説得できたようね。貴方も、ちゃんとあの子の期待に答えてあげるようにね。」
それだけ言って断罪の聖女は暗い夜道に消えて行った。
僕にはどこにも逃げ道が無さそうだなと思いながら、家路についた。