ラスボス倒して世界を救った死を操る魔法少女の僕♂が終末思想教団の教祖にさせられた 作:ことばの目
僕は、普通の日常が、欲しい。
ファンのみんなが明らかにおかしくなったり、断罪の聖女に脅されたりしたから、余計にそう思う。
どうすれば普通になれるのかは皆目見当もつかないけど……とりあえず何か動かなければ。
魔法少女になった時も、がむしゃらに目の前に現れた魔物に立ち向かったんだ。
今回も上手くいくはず……。
倒せば終わる対魔物と人間じゃ大違いってのは、一旦忘れる。考えたら終わるから……。
1週間くらい経ったある日。
僕は真斗としてアルバイトをする決意をした。
1週間何してたって?……必死に悩んでたらいつの間にか経っていた……。
終末思想教団の人達をどうするかなんていくら考えても答えなんて出ないので、どうにかして逃げる方法を考えてた。
完全にサナをやめて逃げるのは、流石に無責任すぎるのでやらない。
でも、責任ある立場ってのも分からない。
こんな僕が、ごく普通の人間になる為の第一歩として妥当だろう……。
真斗として誰かと話すなんて、何十年もしていない。死ぬ程緊張する……。胃がキリキリと痛い……。
吐きそうになりながら、僕は変身解除風のサナの姿に変身し、ファンシーな家を出る。
とりあえずは敵情視察。街を歩き回ろう……。
しばらく歩いてると、大荷物でよく見えないけど……なんだか見覚えのある後ろ姿が目に入った。
「エキテカちゃん……?」
彼女は振り返ると、パッと顔を綻ばせた。
断罪の聖女と会話してた時に、偶然見ちゃったファンの子と早速会うなんて。
「サナ様!無事だったのですね!」
「う、うん。別に何もされてないから大丈夫。」
心臓の辺り刺された以外は何もされてないし多分嘘にはならない……。
「あっ……!握手会でもないのに、サナ様にここまで近づいていいのかな……!?」
「まあ、いいんじゃない……?」
ファメちゃん主催で握手会やらされた時、なるべくファンの子達は覚えようとしていたので知ってはいた。
その中でもエキテカちゃんは、有り難そうに御利益でも貰うかのような握手だったので印象に残っていた。
ずっと視界に入ってくるので、気になる事を思わず尋ねる。
「えっと……そんな大荷物で何してたの?」
「お掃除です!この間、断罪の聖女が言ってたみたいに、サナ様に誇れるような人間になろうって頑張ってるんです!」
「おお……!すごいね。」
「そうでしょ!えへへ!最近の人たちはみんな怒ってばっかで、心まで汚れてる感じがするじゃないですか!だから、お掃除して少しでも世の中を良くしたいなーって!」
褒められて嬉しそうに語るエキテカちゃん。
「僕も頑張らないと……。ありがとうね。」
「はい!もっと頑張りますね!」
笑顔で彼女と別れる。
僕もバイト探し頑張ろう!
全く決まらない。
真斗の姿だと余計に上手く喋れない。
そもそも勇気も出せずに入れなかった場所もかなりある。
知り合いは誰一人として居ない。
終末思想教団のみんなの言ってる事の一つ、死が脳裏を巡ってきた頃、突然声をかけられた。
「サナのお兄さんじゃん。なにやってんの。」
!?……ファメちゃん!?
変身前のファメちゃんが目の前に立っていた。
昔、変身前の姿がバレた時、とっさに兄って言い訳したんだっけ……。
「えっと……ファメさん。おはようございます?」
「もう夕方なのに何言ってんの。キモ。」
対応が違い過ぎて悲しくなってくる。
「あー……、今バイト探してて……。」
「クソニートクソキモ兄貴がバイトね。どこもダメだったんでしょどーせ。」
「はい……。」
「はぁ……。サナに迷惑かけないように、終末思想教団にでも来る?今、運営側人手足りないし。」
「え?いいの?」
「うん、早く着いてきて。」
……僕はどう足掻いても、教団からは逃れられないようです。