※この作品はR-18です。

その艶本は後世にのこる   作:授乳スキー

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少年―八の物語
プロローグ


(小腹は空いてるけど、片付けがねぇ)

 

夜もそろそろ明ける、そんな刻限。

遊郭(ゆうかく)の二階の窓から、一人の妓女(ぎじょ)が顔を出す。

彼女の名前は堕姫(だき)。

上弦の鬼(じょうげんのおに)の一人である。

 

(ん?)

 

あばら家とあばら家の間に、浮浪児がいる。

遠目ではあるが、そこそこ整った顔立ちをしている。

どれ、もう少し近くで見てみるか。

窓の桟に足をかけ、トンッと軽快に飛び下りる。

堕姫にとって二階の高さなど、人間にとっての階段一段分にもならない。

 

(へぇ、可愛いじゃん)

「ひっ……な、なんですか? ぼ、ぼく男です」

 

じろじろ見ていると八歳ほどの少女顔の男の子は、顔を真っ青にして震え出した。

さすがに遊郭の近くで乞食をしているだけあって、舌なめずりしている大人に何をされるかは見知っているようだ。

なお、堕姫の場合は本当の意味で喰う(くら)のだが。

 

「もうダメだ……おしまいだ……」

 

男の子の目から光が消える。

壁に体を預け、腰の帯を解き始めた。

顔は土で汚れているが、水浴びはしているようで、体の方は綺麗だった。

匂いも良いし、余分な脂もない。

脂身の方はむしろ少なめだ。

食事としては極上。

だが、堕姫の目は男の子のおとこのこに釘付けになっていた。

袋も、棒も、一般的な男性並みはある。

全てを諦めて光の消えた瞳から、つー、と涙が一筋こぼれ落ちる。

 

「お前、名前は?」

「え?」

「いえ、何でもいいわ。私のことはお姉ちゃんと呼びなさい。心をこめて、嘘偽りなく。おばちゃんとか言ったらぶち殺すから」

「お、お姉ちゃんっ」

「そうそう、その調子よ。お姉ちゃんのこと、どう思う? 好きよねー?」

「うんっ。お姉ちゃんのこと大好き!」

「よしよし。素直な子は好きよ? うふふふふ」

 

ジャキン。

 

鋭利な爪を伸ばして見せてから、頭をよしよしする。

その目は猛禽類のようでいて、ぐるぐると、気狂いの様相を見せはじめていた。

 

「ハァハァ、お前、いくつだい? ここは立派だねぇ」

「ひっ、や、やっつですっ」

「うんうん。そうなのー」

 

さわさわ、もみもみ……。

 

堕姫は聞いてなかった。

男の子のおとこのこにセクハラするので忙しかった。

 

「これからすること、秘密だよ。お利こうにできたら、今度もっと良いことしてあげる」

 

半開きになった堕姫の唇。

赤い舌は月夜に濡れ光り、誘うように蠢(うごめ)いている。

男の子の先っぽが、ゆっくり口の中に吸い込まれていった。

 

じゅぽ、じゅぽ、じゅる、じゅるる。

 

「……」

 

***

 

「はっ、はっ、はっ、はっ」

 

走る、走る、走る。

男の子は無事(?)食われることなく、朝日の中を走っていた。

堕姫がやたらとねちっこく味わったので、朝日が昇って時間切れになったのだ。

 

(今度こそ食われる!)

 

堕姫の言う「今度もっと良いこと」は気になるが、自分を見る目が尋常ではなかった。

次に出会ったら、絶対に取って食われる自信がある。

 

ドン。

 

「きゃっ」

 

女性にぶつかった。

男の子の意識はそこで途絶えた。

 

***

 

「あーん、どうしよー」

「何してるんですか、恋柱(こいばしら)様」

 

黒ずくめの女性に呆れられているのは、桃色の髪をした隊士、甘露寺蜜璃(かんろじみつり)である。

 

「悪気はなかったの! つい、いつもの癖で!」

「はいはい……まぁ、問題はないでしょう。おそらくただの浮浪児です。怪我もないようですし、気を失っているだけでしょう。わざとぶつかって財布をする類の手癖の悪い餓鬼(がき)かもしれませんし、気にすることはありませんよ」

「……」

「どうしました?」

「えっ? う、ううん。なんでもないの! ちょ、ちょっと気になることが……そうだ! この子を連れて行きましょう!」

「え、お屋敷にですか?」

「い、いいでしょう?」

「……恋柱様がそうおっしゃるのでしたら」

 

年下で、ちょっと抜けた所があるのでつい忘れがちになるが、蜜璃(みつり)は柱と呼ばれる、鬼も真っ青な戦闘能力を持つに至った女傑(じょけつ)である。

そんな彼女が言うのだ。

あの短い刹那のような間に、隊士として光るものを見たのだろう。

少し視線の先がおかしい気がするが、黒ずくめの女性は男の子を連れ帰るべく、よいしょと背負って歩き出す。

 

(おちんちんって、ああななんだ!)

 

男の子の受難は、まだ終わっていないようだ。

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