その艶本は後世にのこる 作:授乳スキー
プロローグ
(小腹は空いてるけど、片付けがねぇ)
夜もそろそろ明ける、そんな刻限。
彼女の名前は
(ん?)
あばら家とあばら家の間に、浮浪児がいる。
遠目ではあるが、そこそこ整った顔立ちをしている。
どれ、もう少し近くで見てみるか。
窓の桟に足をかけ、トンッと軽快に飛び下りる。
堕姫にとって二階の高さなど、人間にとっての階段一段分にもならない。
(へぇ、可愛いじゃん)
「ひっ……な、なんですか? ぼ、ぼく男です」
じろじろ見ていると八歳ほどの少女顔の男の子は、顔を真っ青にして震え出した。
さすがに遊郭の近くで乞食をしているだけあって、舌なめずりしている大人に何をされるかは見知っているようだ。
なお、堕姫の場合は本当の意味で
「もうダメだ……おしまいだ……」
男の子の目から光が消える。
壁に体を預け、腰の帯を解き始めた。
顔は土で汚れているが、水浴びはしているようで、体の方は綺麗だった。
匂いも良いし、余分な脂もない。
脂身の方はむしろ少なめだ。
食事としては極上。
だが、堕姫の目は男の子のおとこのこに釘付けになっていた。
袋も、棒も、一般的な男性並みはある。
全てを諦めて光の消えた瞳から、つー、と涙が一筋こぼれ落ちる。
「お前、名前は?」
「え?」
「いえ、何でもいいわ。私のことはお姉ちゃんと呼びなさい。心をこめて、嘘偽りなく。おばちゃんとか言ったらぶち殺すから」
「お、お姉ちゃんっ」
「そうそう、その調子よ。お姉ちゃんのこと、どう思う? 好きよねー?」
「うんっ。お姉ちゃんのこと大好き!」
「よしよし。素直な子は好きよ? うふふふふ」
ジャキン。
鋭利な爪を伸ばして見せてから、頭をよしよしする。
その目は猛禽類のようでいて、ぐるぐると、気狂いの様相を見せはじめていた。
「ハァハァ、お前、いくつだい? ここは立派だねぇ」
「ひっ、や、やっつですっ」
「うんうん。そうなのー」
さわさわ、もみもみ……。
堕姫は聞いてなかった。
男の子のおとこのこにセクハラするので忙しかった。
「これからすること、秘密だよ。お利こうにできたら、今度もっと良いことしてあげる」
半開きになった堕姫の唇。
赤い舌は月夜に濡れ光り、誘うように
男の子の先っぽが、ゆっくり口の中に吸い込まれていった。
じゅぽ、じゅぽ、じゅる、じゅるる。
「……」
***
「はっ、はっ、はっ、はっ」
走る、走る、走る。
男の子は無事(?)食われることなく、朝日の中を走っていた。
堕姫がやたらとねちっこく味わったので、朝日が昇って時間切れになったのだ。
(今度こそ食われる!)
堕姫の言う「今度もっと良いこと」は気になるが、自分を見る目が尋常ではなかった。
次に出会ったら、絶対に取って食われる自信がある。
ドン。
「きゃっ」
女性にぶつかった。
男の子の意識はそこで途絶えた。
***
「あーん、どうしよー」
「何してるんですか、
黒ずくめの女性に呆れられているのは、桃色の髪をした隊士、
「悪気はなかったの! つい、いつもの癖で!」
「はいはい……まぁ、問題はないでしょう。おそらくただの浮浪児です。怪我もないようですし、気を失っているだけでしょう。わざとぶつかって財布をする類の手癖の悪い
「……」
「どうしました?」
「えっ? う、ううん。なんでもないの! ちょ、ちょっと気になることが……そうだ! この子を連れて行きましょう!」
「え、お屋敷にですか?」
「い、いいでしょう?」
「……恋柱様がそうおっしゃるのでしたら」
年下で、ちょっと抜けた所があるのでつい忘れがちになるが、
そんな彼女が言うのだ。
あの短い刹那のような間に、隊士として光るものを見たのだろう。
少し視線の先がおかしい気がするが、黒ずくめの女性は男の子を連れ帰るべく、よいしょと背負って歩き出す。
(おちんちんって、ああななんだ!)
男の子の受難は、まだ終わっていないようだ。