7-01 俺は藍より出でて藍よりも青し
全裸で崖の上に立ち夜風を肌に受ける。肌を玉のように駆ける汗が蒸発し、鍛え上げて熱を帯びた体を冷やす。このままでいたら風邪をひくだろうが、それでも心の内に燻ぶっている熱が収まらない。
「俺には……俺にはまだ足りない……むしろ……こうなったからこそより足りなくなっている……どうすればいいんだあああ!!!」
海に向かって大きな咆哮をぶちまける。広大で海に飲み込まれて静寂が嘲笑ってきた。
俺の名前は
「島への来訪者が年々減少しております」
文字通りの緑髪とエメラルドのような瞳を持ち、昔と何も変わらない姿のSHO会長、
「……って言ってもどうするの? 本島に行ってまんこ売りの少女でもするの?」
ふわっとした水色の髪に、歳を重ねてより殺人的なプロポーションになったストライクフォース隊長、
「もう皆少女って歳でもなくなったじゃないですか。会長は見た目だけならイケそうですけど、先輩は体がアダルトすぎますって」
「やぁん♡相変わらず精くんは嬉しいこと言ってくれるね♡まんこ一発いかがですかー♡」
「まんこ一発家事の素なので後でお願いしてもいいでしょうか?」
約束だよーとウィンクされたので閑話休題だ。一つ咳ばらいをしてから一つの手紙を提示する。
「あのSS……じゃなくなったんだよな、FS最大の汚点と言われる
奴はあまりの屑畜生っぷりから刑務所にぶち込まれた。しかし、何がどうなったのか分からないが優等受刑者になりかなりの好待遇を受けているらしい。見せつけるかのように書かれた文章と、囚われの身分では考えられない程ご機嫌に跳ねた筆跡がそれを物語っている。
「その辺りはどうでもいいんですが、その刑務所が特殊な事情を孕んでいるようで……」
その刑務所ではありとあらゆる性を連想させる言葉が禁じられているらしい。俺は捕まったことがないから分からないが、休み時間とかには下世話な会話で盛り上がる物ではないのだろうか。そこから俺はとある考えが思いついた。
「もしこの刑務所を経営している人間が青藍島を知ったら……何かしらの規制を仕掛けてくると思いませんか?」
俺らしくもないぶっ飛んだ理論だと思っている。流石にツッコミ所しかない発言に会長がクスリと笑う。
「いくら何でも早計が過ぎますね。日本の高齢化に伴う若年層の減少、本島の人間のニーズとの不一致、あるいは青藍島に来たいと思える魅力がない……思い浮かぶ原因は幾らでもありますよ?」
そんなの分かっている。その辺りが原因だとしたら青藍島で努力していけばいいだけだ。ただ、もしも俺の考えていることが当たっていたら、どれだけ青藍島で努力しても意味がない。規制の根本と話し合って、お互いが納得できるラインで青藍島を広告するべきだ。だから今すぐにでもその元凶を────力強く握った右拳に糸が巻き付いていた。
「……貴方が今の幸せを手に入れるために、そしてその幸せを守り続けるためにどれだけの努力をしてきたのか……私には想像できません。でも、今の貴方がその幸せのために
会長は粘膜接触も介さずに俺の心を言い当てた。そう、今の俺は焦っている。この幸せが脅かされつつあることに。そして────
「この件に関しては全SHO部門総力で考えています。すぐにとはいえませんが、必ず解決策は出ます。ですので貴方は家族との幸せを考えて────」
「それだけじゃダメなんです……幸せだけ求めてたら……
力なく机に突っ伏す。嫌に無機質な冷たさが俺の心に入り込んで来る。このままだと俺は────
具体的な解決策も出ず、郁子先輩とまんこ一発しても出せず、途方に暮れて帰路に着いた。家の扉の前に立って右の掌を見る。この手の中に俺の望んだ幸せがあり、その幸せを守れている。しかし、それ故にすり抜けていってしまいそうなものがあるのを自覚している。俺は一体どうすればいいのだろう。いや、どうしたいのかは分かっているが、それを言い出していいのか。あれこれ悩んでいるうちに玄関の扉がガラガラと開いた。
「どうしたんだ精? 鍵を忘れたのか?」
紺のシャツに薄いクリーム色のパンツ*1を履いたオフスタイルの最愛の妻、
「でも、玄関の鍵掛にはお父さんの鍵はかかってないよ?」
続いて俺のお下がりの金色のジャージを着こなした長男、セレンが顔をのぞかせた。金髪の髪に鳶色の釣り目をしているにもかかわらず、それに勝る人の好さがにじみ出ている。
「差し詰め浮気して帰りが遅くなったって所だろーよ。どこの女に腰振ってたんだ親父?」
最後に黒の透け透けレースの下着姿が非常に目に優しくない次女、レイラが2人の間を割って出てきた。太陽のような金色の瞳をきんきらと輝かせ、絹のように滑らかな緑髪がウキウキに揺れている。
「女部田さんだろ? 肩に水色のくせっ毛が引っ付いてるからな」
レイラはまだ10歳にもなっていないのに、俺に近い推理力と発言の圧を持つ。英才教育も過ぎるとアダルトチルドレンを生み出してしまうようだ。
「だったら別に浮気じゃないな。私が相手できない時は郁子に相手して貰えと常日頃から言っているからな」
礼曰く、お前の性欲は歳を重ねるごとに増しているから私ではとても追いつかないとのことだ。流石に俺もお年頃だから多少の落ち着きは覚えたが、射精の量・勢い・回数の三冠を10年連続で取り続けている。
「じゃあ、どうしてお父さんは家に入りたがらなかったの?」
セレンもまだ性人していないが物事の本質をしっかりと捉えてくる。しかも誰よりも優しく諭すような言い方だから俺も白状しざるを得ない。
「……お父さんな、最近悩んでいるんだ……」
俺の中では冗談のように笑ったつもりだが3人から見たら諦めの嘲笑にしか見えなかったらしく、顔色を変えて俺に駆け寄ってきた。
「どうしたんだ!? お前でも手に負えないような案件を押し付けられたのか!?」
「それともとんでもない病気が判明したの!?」
「相変わらず親父は隠し事が多いな! 上と下の口から全部垂れ流しやがれ!」
引っ張られて居間のテーブルに座らされ、レイラが何所からともなく電気スタンドとおにぎりを持ってきた。
「さ、洗いざらい喋ってもらおうか?」
「そんな事件の取り調べじゃないんだから……お父さんが話しにくくなるからおにぎりだけにしてあげなよ」
しょうがねぇなぁとレイラが電気スタンドを片付けて、代わりに冷えた緑茶を持ってきた。
「最近水出し緑茶にハマってるんだ。今回は上手く抽出できたと思うぞ」
勧められるがままにお茶を口に含む。茶葉本来の香りと甘味が優しく広がり、最後来るほのかな苦みがしっかりと後味を引き締めてくれる。どんな食事にも合いそうなお茶だ。俺が教えたのはココアと紅茶なのだが、何処で覚えたのだろう。
「この間文乃ばーちゃんに文佳ねーちゃんと一緒に教えてもらってな。そういや水羊羹も作ったんだ。情報くれたら食後の甘味として出してやるよ。イクアンド手イクってやつだ」
「レイラ、文乃は私よりも若い。おばあちゃん呼びしたら失礼だぞ」
文乃ちゃんもそれなりの年を取ったとはいえ、今も変わらずこの世のものとは思えない美しさでいる。この間淳之介君から聞いた話によると、文乃ちゃんと文佳ちゃんで散歩していたら可愛いお子さん2人ですねと言われたほどだ。渡会先輩だったら間違いなくアレを言うところだが、文乃ちゃんはまんざらでもなさそうな顔で微笑んでいたという。
「教えてくれることがどれもこれも古風すぎるんだよ……麻沙音の姉御みてえにプログラミングとかチートコードとか煽りを教えてほしいのによ……」
確かアサちゃんは淳之介君の1つ下のはずだから俺の1つ下のはずだ。レイラの教育に悪いからプログラミングだけ教えてくれと淳之介君に言っておくか。
「……いや、んな事はどうでもいいんだよ。親父の悩みを聞くのが先だ」
レイラによって脱線した話がレイラの手によって戻る。完全なマップチンポだが、一々これに突っ込んでいたら話が進まない。大人しく俺の悩みを打ち明けよう。
「観光客の減少の現実を突きつけられてな……」
一同があー……と口から納得の音を発した。俺は戦闘力はトップクラスだが、客寄せのセンスは基準値から大きく外れているらしい。魅力あるアトラクションやイベントを考えろと言われても、何かと金色を持ち出しては没にされる。俺としては格好よくて良いと思うのだが、予算や一般人受けだの何かと理由を着けて却下される。
「まあ……時間が解決してくれるんじゃないか?」
「……僕も学校で友達と一緒に色んなイベント考えてみるよ」
「本島の人間を拉致って快楽堕ちさせればいいじゃねえか?」
三者三様の意見を聞いても解決策はなさそうだった。分かり切っていた答えへの溜息をおにぎりとお茶で押し込む。おにぎりの中身は今の俺と同じく何も入っていなかった。そんな俺を見てか、礼が俺の服の袖を引っ張りながら耳打ちしてきた。
「……今夜空いているか?」
こんな時でも礼からのお誘いに胸が高鳴ってしまう。
「空いてなくても無理矢理開けます」
「あーし達に聞こえねえようにしてくれよ。あと、あーしは妹が欲しいから頑張ってくれよ親父にお袋」
「……それじゃあ、僕達先に寝るね。おやすみなさい、お父さんお母さん」
子供たちに気を使われて礼と2人きりになる。
特に何か言ったり合図を出したりした訳でもないのに目線がぶつかり、生まれたままの姿になって抱き合って唇を重ねる。優しい甘さを帯びた温かなモノが口の中に入って来る。俺はそれを目を閉じて受け入れる。こちらから求めることはせず、ただ礼の思うがままに身を委ねる。
「……お前から来てもいいんだぞ?」
いつもより物欲しそうな目をした礼に促されて礼の口に舌を入れる。2人の舌が絡み合い、神経を介さず脳に直接伝わるように粘液の音が響く。何度重ねても変わることのない幸せなキスだ────そう。間違いなく幸せなんだ。
「……もうこんなに大きくしているじゃないか。まあ……私が言えたことではないんだけどな」
礼の右手が俺の陰茎に触れ、左手が俺の右手を礼の秘部に誘う。陰茎ははち切れんばかりに怒張し、秘部はうだるような熱を帯びた愛液に塗れていた。
「たまにはお前のやりたいプレイをしようじゃないか。何がいい?」
その質問に俺は躊躇いを覚えた。陰茎から垂れる我慢汁のようにシックスナインがしたいと言えばそれで済むのに、心のどこかで礼が望んでいなかったらと思うと言葉に出来なかった。
「……礼のしたいプレイは────」
「そう言うと思ったぞ馬鹿野郎」
一瞬で視界が右を向いた。何が起きたのか分からなかったが、左頬に痛みと衝撃が走った気がする。顔を礼の方向に戻すと────礼が怒りと悲しみをごちゃまぜにして涙を流していた。
「お前の本当の悩みは……『
いつもそうだ。礼には俺の心に抱えている誰にも言いたくない問題が分かる。そしてその問題は悉く俺と礼の関係を試す重大なものだ。