あまりにも突拍子がない発言によって天使の群れが通り過ぎた。これがパチンコだったら確定演出だろう。しかし当たったところで何かを貰えるわけではないので、俺が天使の群れを乱獲する。
「詳しい話は明日の朝に皆でしましょう。今日は色々お疲れですから一緒に寝ましょう」
「……そうだな。どうせ明日セレンとレイラに言うのだったら今聞いても二度手間になるからな」
それ以上の会話を交わすことなく、ただし意味で2人で寝て朝を迎えた。俺は遅くても5:00に起きるが、礼は早くても6:30以降にしか起きない。なので居間に降りて朝食の準備をしようとしたが、流しで水出し緑茶を作っていたレイラが俺を見るや否やニッコニコで詰め寄ってきた。
「お袋のションベンの味はどうだった?」
何故バレた? ただお盛んすぎて水分補給でお茶を飲み干しただけの可能性もあるのに。いや、ブラフの可能性がある。ここは父親として毅然とした態度で接しよう。
「俺が礼にそんなことさせるように────」
「洗いにお袋のグラスとあーしのボトルしか出ていなかった。2人ともボトルに直に口をつけて飲むほど野蛮でも、水分補給も口移しする程お盛んでもねえだろ? つまりあの夜でお袋だけが茶を全部飲んだんだ。そんな状況、親父がお袋にションベンさせたくなきゃあり得ねえだろ? んで居間の床が掃除された跡があった。ただションベン浴びたかったら風呂場でやりゃいいのに、なんでわざわざ居間でやったか……親父が床をションベンで汚さない自信があったからだ。ションベンをさせておいて汚さない方法なんて飲むしかねえだろ? 実際はお袋が的を外して、あるいは親父が飲み切れず床を汚したから掃除したんだな」
これが淳之介君や文乃ちゃんが味わった、わずかな証拠から追い詰められる感覚だろう。背筋への悪寒と諦めるしかなくなって浮かぶ笑顔が止まらない。
「どうだ親父? ビシャーコック・ンホォムズも股を濡らす推理だろ?」
「……ンホォムズは男だったと思うけど?」
「男もエロかったら我慢汁で股を濡らすだろ?」
「……最初は無味無臭でしたけど、後半はアンモニア臭が出てきて大変でした」
完全敗北だった。これがサスペンスだったら俺はムショ行きになるだろう。夫婦の性活がバレるという微笑ましいものでよかった。
「僕はお父さんとお母さんが仲良くしているなら、特に何も言うつもりはないけど……」
いつの間にか後ろにいたセレンが気まずそうに会話に入ってきた。
「でも、お母さんが嫌がることを無理強いしたらダメだよ? お母さんはお父さんのためならとんでもないことしちゃう人だから」
そういえば礼はアンダーヘアサロン陰毛屋さんに行ってブロンドにしたことがあった。金色の陰毛が見れて嬉しかったが、髪と陰毛の色は同じがいいと言ったら思い切りシバかれた。
「今日は頑張って早起きしらから……早く家族会議をするぞ……ふあぁ……」
半分眠っている礼もやってきた。それではご機嫌な朝食を作って優雅な会議にしよう。
各々欲するだけの白米を茶碗に盛り付け、新品の卵のパックの封を開け、醤油・味付け海苔・胡麻・青ネギ・鰹節・ごま油などの調味料を出し、給食で出るような安っぽい青緑色の器でインスタントみそ汁を作り、それらを豪華絢爛に食卓に並べる。
「お待たせしました。『卵かけご飯御膳~尿酸値は気にしないものとする仕立て~』です」
「ただの卵かけご飯に大層な名前つけるなウロフィリア」
「なな、何を言うんだレイラ!? お父さんをそんな風に呼ぶ子に育てた覚えはないぞ!?」
「大丈夫だよお母さん。レイラは居間の様子だけでお母さんとお父さんが何をしていたのか分かっちゃったみたいだから」
楽しい家族の会話と共に朝食を進めていく。昔の俺は一人で黙々と食べていたものだが、今はこうやって騒ぎながら食べている。その温かさが嬉しく、それに甘えていた自分が情けない。そんな自分を変えるべく、俺は改めて皆に狂案を宣言する。
「俺は『金色の狂犬』を捨てる」
「親父、ごま油取ってくんねえか?」
「僕は味付けのりがほしいな」
我が子たちは卵かけご飯に夢中でよく聞こえてなかったようだ。咳払いを一つしてから再宣言する。
「……俺は『金色の狂犬』を捨てる」
「分かったからごま油取ってくれよ」
「しっかり聞こえているよ」
卵かけご飯に劣る決心だったようだ。隣にいる礼も顔を伏せながらプルプル震えている。昨夜あれだけのことをしておきながらこの様なのだから無理もない。とはいえ、皆に聞こえているようなのでその全貌を話す。
「俺は青藍島で『金色の狂犬』として長く居続けたせいで、自分が本当は何をしたいのかが分からなくなってきたんだ。だから、
レイラにごま油を渡しながらさらに話を進める。
「とある刑務所に行って看守をやってみようと思っているんだ。治安維持部隊の経験も生かせるだろうし、何より過酷な環境らしいからな。色々手続きとかが終わったらしばらく家を空ける。どれぐらいになるかは分からないけど、1年以内に帰ってこれるように頑張るよ」
セレンに味付け海苔を渡しながら話を終える。
「そっか。土産は手錠がいい。マジモンの手錠で拘束プレイしたいからな」
「勝手に備品を持ちだしたら窃盗とか横領とか業務上横領で看守から囚人になっちゃうよ……」
何も知らない人から見たら親の心子知らずと思うかもしれないが、俺は父親としてわかる。2人なりに俺の後ろ髪を引くようなことをせず、気持ちよく送り出そうとしているのだ。我が子達の素晴らしい配慮に思わず涙が滲む。
「……お前がそうしたいと思ったんだろ? 妻として私がやるべきことはただ一つだ────行ってこい」
礼が俺の左肩に手を置いて優しく微笑んだ。ついに涙が堪えきれなくなって頬に涙が伝う。一時的にとはいえ家庭を失うのは辛い。しかし、その家庭は俺を優しく送り出し、帰って来るのを待っている。ならば俺がやるべきことはただ一つだ。
「……まずは腹ごしらえだ。めっちゃ食って、めっちゃ動くぜ」
4人で5.5合の炊飯器を空にし、卵1パックと半分を使い、実にご機嫌な朝食となった。
俺はSHO本部に行って色々な書類を纏め、会長室でそれを法廷の弁護士の様につきつけていた。
「こういう事情でしばらく青藍島を離れたいんです。色々手続きしたいんで協力してください」
会長は流すように書類に目を通し、異議はないと言わんばかりににこりと笑った。
「お世辞にも風雅とはいえませんが、かなり狡猾な手段を取りますね」
「自分でいうのもアレだが賢しい人間なんでね。で、どれぐらいかかりそうだ?」
会長はわざとらしく口元に手を当てて、さらにわざとらしくふーんと鼻を鳴らして考えた。
「相手方の事情と土口さんの準備にもよりますが……2週間もあれば十分でしょう」
解決するか分からない青藍島の課題との並行処理を考慮した上で2週間だ。相変わらず会長は事務作業において右に出る物がいない。俺は素直に感心と敬意を表して頭を下げた。
「……俺の我儘に付き合ってくれてありがとうございます」
「貴方が今まで青藍島に与えた貢献を考えたらまだ足りないぐらいです。是非とも良い自己研鑽にしてくださいね」
会長からの激励を受け取り部屋を後にする。このままSHO本部で事情を伝えられる人間に伝えていくとしよう。ということで俺がやってきたのはストライクフォースの野外訓練場だ。SHOの中でもかなりの実力者が集うこの場所で、『金色の狂犬』直々の戦闘訓練を行っている。
「次! 予備動作を見せるな! 攻撃に迷いと躊躇いを持つな!」
「いってれぼ!」
「次! 足の構えが違う! 足が違ったらどれだけ上半身が正しくても意味ないぞ!」
「ぺがふ!」
「次! 武器を使うなら奪われるのを最大限に警戒しろ! 奪われるぐらいなら壊せ!」
「おろあ!」
かれこれ十数人を相手にしたが、準備運動にしかならなかった。平和になった青藍島ではストライクフォースの質も落ちてしまうようだ。
「いや、精くんが化け物みたいに強いだけだからね? 精くんを基準にしたらあたしとトーカちゃん以外全員実力無しになっちゃうよ」
「おやおや、郁子先輩ともあろう方が自惚れるとは……歳と色でボケちゃいましたか?」
改良を加えた逆刃刀、愛刀ティラミス・モダンの切っ先を郁子先輩に向ける。それを受けて郁子先輩が舌なめずりをして妖艶に笑った。
「実はね……イク、すっごい溜まってるの。ストライクフォースの皆じゃ全然発散できなくて、最近の精くんは萎えたおちんちんみたいだったし……でも、今の精くんだったら────イクを満たしてくれるかも」
突きつけた切っ先に郁子先輩の逆刃刀がキィンと触れ────その音と同時に背中を貫くような殺気を感じた。
「
「俺としてはあの郁子先輩を滅茶苦茶に犯したいですけどね。完全に分からせて屈服させたいです」
俺の発言に昂った郁子先輩の瞳孔が開いていく。
「それじゃあ……もう我慢できないから始めちゃおっか」
「せめて口上ぐらいは挟みましょうよ。かつての水乃月学園の最強最エロコンビなんですから」
お互いに切っ先を離し刀を構える。
「────お待ちになっても据え膳の花、けれどお預けもそろそろ終わり……♡鯉口切っていざ睦言交わしましょう?」
「────さァ、交わり乱れて狂いましょう?」
口上が終わり静寂が場を包む────一陣の風が肌を撫でると同時に凄まじい金属音が響く。お互いの全力が刀を介してぶつかったからだ。そのまま鍔迫り合いに持ち込む。
「俺に力勝負を挑むとは……相変わらず欲しがりさんですね……!」
「あはぁ……♡これだよ……♡一歩間違えたら負けちゃうかもしれない……♡イク、これが欲しかったの……♡」
郁子先輩は余裕そうに興奮している。押し切れるかどうか分からないのに踏み込むのは危険だ。かといって引いたらリードを渡してしまう。一度様子を見て────郁子先輩の刀の力が緩んだ。咄嗟に右足を郁子先輩の脇腹に叩き込むが、寸での所で避けられた。
「と思えば意識外からの足払い……これに対応できなきゃそもそも戦いにならないんですよね」
「そうだよぉ……♡最近はここでイッちゃう子ばかりなんだよぉ……♡」
彼女の足元にボタボタと愛液が垂れる。彼女は強者との戦いで興奮する生粋の変態だ。いくら青藍島でもこのタイプの変態はいない。故に唯一俺に戦闘面と性欲で追い付いてこれる女なのだ。そんな極上の女を前にして俺は────牙を向く様に笑っていた。
「俺も久々に思い出しましたよ……剥き出しの闘争本能を……! 雄としての征服欲を……! 今の俺をありったけぶつけますから全部受け止めてください!」
「いいよぉ! きてよ精くん! 礼ちゃんにぶつけられない、危ない精くんを見せてよぉ!」
本能が叫ぶままに目の前の雌に迫る。振るわれる刀を弾き、振るった刀が弾かれ、振るわれる脚をいなし、振るった脚をいなされ、思い通りにならないからこそ気分が高まる。この雌を蹂躙するまでの過程だと思えてしまうからだ。
「犯してやるよ女部田郁子ぉぉぉ!!!」
「犯してあげるよ精くぅぅん!!!」
二人の獣の闘争を止められる者はいなかった。間に入ったら有無を言わさず喰われる、まさに雌雄を決する激闘だからだ。故に小細工が通る瞬間がある。俺は柄にあるボタンを押した。
「
すると刀の反りから白いがガスが噴き出した。その噴出力によってティラミス・モダンが郁子先輩の太刀筋をすり抜け────
「前にもやったよねそれ!」
ることなく弾かれる────瞬間に手首を捻りもう一度ボタンを押す。再び噴出されたガスが郁子先輩の目に当たり一瞬怯ませる。その隙を突いて郁子先輩の刀を弾き飛ばし一瞬で組み伏せる。
「こっちの方は知らなかったでしょう?」
「くぅー……私の負けだよぉ……」
郁子先輩が悔しそうに敗北宣言をして戦いが終わった。拘束を解いてお互い立ち上がり────俺は服を脱いだ。
「こっちの方でも勝負しましょう?」
「もちろんいいよ♡」
郁子先輩も嬉しそうに服を脱いだ。
「精くんが勝ったから精くんの好きな方法でイクを滅茶苦茶にしていいよ♡」
「立ち鼎で」
「はいどーぞ♡」
郁子先輩が右手を後ろから右の腿に当てて持ち上げる。秘部がくぱあと開き愛液が流れ落ちていった。
「ストライクフォースの皆♡イクに勝ったらこんなことできちゃうからよく見ててね♡」
「勝利の報酬を見せておくのは士気を上げるのに効果的ですからね。お前ら! このまま『金色の狂犬』の性交講座だ! チンコおっ勃ててまんこ濡らしてよく見ておけ!」
そしてお互いに限界までセックスをし、俺達が動けないのを良いことにストライクフォースの皆が俺達を滅茶苦茶輪姦した。死を覚悟した俺、笑っていた郁子先輩、お互いに人前でするときはある程度抑えようと誓った。その後、旅立ちを伝えたら今の内に味わっておかないと、と体が動かなくなるまで絞られた。