遂に特別告解の日がやって来た。凛の案内で船に乗って神父服に着替える。到着まで10分程あるので、スマホを弄りながら世間話でもするとしよう。
「泳いで逃げる囚人っていないのか?」
「この辺りは潮の流れが複雑で、海に入ると必ずプリズンに押し返されるようになってるらしいですよ」
あの壁と合わせれば脱獄不可能という話も現実味を帯びてくる。並の囚人ではプリズンに近寄れる船の調達が難しいだろう。流石の俺でもNLNSやSHOの皆に協力を仰がないと可能性が見えてこない。お前は研修を修了するだけで出られますけどね、と興味なさそうに返されたので別の話題にしよう。
「最近は俺の信者が増えつつあるらしいが、お前の方はどうだ?」
「別に私は信者とかどうでもいいですよ。巻き上げる金もない奴らですから」
こいつがプリズンに来た理由はこのドスケベ性教で大規模な集金を行ったからだ。全く反省の色が見えていないが、俺が何度言ってもこの性根が変わらないので何も言わない。
『間もなく
思ったよりも揺れたのでスマホを落とし、そのまま凛の方まで滑らせた。
「悪い、取ってくれねえか?」
「何でですか? それぐらい自分で取ってくださいよ」
「いいから取れ」
「これで貸し一つですから────」
凛が俺のスマホの画面を見て固まった。俺は手早く取り上げて耳打ちをした。
「誰にも言うなよ」
「……言う訳ないじゃないですか。相変わらず趣味が悪いですね」
凛と一緒に囚人を連れて島を歩く。島には老人から子供がいて、特に何の変哲もないありがちな島だった。一つの教会に辿り着いて────厳格で重厚な扉の隙間から、その風格とは相反する信じられない匂いが漂ってきたので鼻を覆ってしまった。
「嘘だろ……!? この特別告解はプリズンの催し物だろ……!?」
「相変わらず鼻が利きますね。さあ、頑張って下さい神父様」
蝶番がギィと軋んで扉が開かれる。そして俺が知覚したのは────バチュンバチュンと生々しく肉体がぶつかり合う音と嬌声、ムワムワと漂う湿っぽい熱気、より一層強く感じる愛液の匂い。そう、セックスが行われていた。
呆然と立ちすくんでいる俺にシスタージュリアが気付いて歩み寄る。
「お待ちしていました神父様……では早速特別告解での教誨を────」
「まっ、待ってください……何が……何が起きているんですか……」
周囲の人間がセックスをしている。そんなことは分かり切っている。どうしてそれが起きているのかが全く分からない。すると彼女が俺に抱き着いてきた。
「町のボランティアの方々の協力の元、ポトウーピの準備をしていたんです」
これの何処がポトウーピなのだろうか。俺にはただヒワワイピにしたがってモポッポロの如くセックスをしているだけにしか見えない。教壇の背後で光る大きなモニターには意味不明な、いや理解したくないような何かが映っている。情報過多でパンクしそうな脳を無理やり動かして質問を絞り出す。
「ぷ、プリズンの遵守事項違反では……」
すると彼女は俺の神父服を一枚一枚脱がしながら微笑んだ。
「そうではないのです。視点を変えてみてください。まずセックスの定義とはなんでしょうかぁ? そう、気持ちがよくなること。利己的な快感をプリズンは禁じているのです────だからこそ言いましょう、この行為はセックスではありません。これは相手を気持ち良くするためのポトウーピ、つまりは利他行なのです。上品の善功徳は、性行為によってのみ修養されるのですから」
そうなのか。いや。そんなわけない。セックスはコミュニケーションの一種だ。快楽だけが目的では────彼女が透明な液体の入ったペットボトルを取り出し、中身を口に含んでから俺に口づけをした。彼女によって温められた生ぬるく妙なアンモニア臭のする液体が口から喉に滑り込む。
「……ならば、自由で安全なドスケベセックスを掲げている青藍島の人間は神父や巫女にふさわしいですよね?」
俺は彼女を誤解していた。彼女は俺や凛の肩書きや実績を見ていたのではない。青藍島生まれという嘘偽りが効かない本質を見ていたのだ。青藍島を積極的に受け入れてくれて嬉しい、なんて思えるわけがない。相容れぬ存在を目の当たりにした恐怖が体の内側からじわじわと侵食していく。
「さぁピピタミーミたちよ! 天の国の戸口は開かれました!」
遂に彼女が服を脱ぎ捨てて両手を大きく広げた。
「今こそ笑顔で"レイヴォール"をおこないましょう────!」
その声を切っ掛けに当たりのセックスの激しさが一気に増した。それは伝導などと生ぬるいものではなく、感染症のアウトブレイクにも似た人智を超えたものだった。青藍島で似たような光景を何度も見ている俺だが、目の前で起きている魔宴は明らかに違う。青藍島のそれはドスケベ条例ありきの光景であり、ここはどれだけ都合よく見積もっても彼女の私有地で特別な条例はない。ただ1人の人間によって────
「さあ、わたしたちも"レイヴォール"をしましょう、神父様?」
彼女のドロドロに熱された秘部が俺の陰茎を擦る。陰茎はすでに限界まで怒張し、早く解放しろと言わんばかりにビクビクと跳ねている。俺は全く彼女とセックスをしたいと思っていないのに。
「ご安心ください。これは不貞行為などではありません。わたしとて1人のピピタミーミに過ぎません。あなたは神父としてわたしを救うだけです」
「わっ、私は……はぁ……はぁ……!」
いや違う。セックスしたいが、したら彼女を理解してしまうのではないかと恐れていた。何とか遠のけないと。
「ひ、避妊具を……万が一にも責任は……負いたくないです……!」
「でしたらご安心ください。ピルを飲んでいますから遠慮なく中出しして大丈夫ですよ」
「あ……いや……性感染症はピルじゃ防げないですから……!」
「それはそうですねぇ。それじゃあ持って来てもらいましょうか」
彼女が凛に目線を送ると、凛がどこからともなく5連綴りの避妊具を持ってきた。
「折角だから私が着けてあげますねぇ……こんなに大きなおちんちんは初めてです……」
やけに手慣れた手つきが俺の陰茎に避妊具を施した。こうなったらもう後には退く必要はない。俺は彼女の唇を奪い返して宣言した。
「……ここからは俺の『やりたいようにやらせてもらう』。折角教壇があるんだ。あれを使いたい」
すると彼女は何ら問題ないと言わんばかりにニコリと笑った。
彼女が教壇に手をついて臀部を突き出す。白く、丸く、柔らかく、修道女とは思えない程に煽情的だった。もはや遠慮する必要はないと良心を振り切り、彼女の腰を指が沈みこむほど強く掴む。
「やぁん、意外と乱暴なのですね……」
「生憎これが俺の本性なんだ。幻滅したか?」
「そんなことありませんよ。むしろ九十九さんを知れて嬉しいです」
「それじゃあもっと知ってもらおうか。ちょっと失礼するぜ」
彼女のずぶ濡れになった秘部を開いて確認する。発言からそれなりの経験数はあるはずだが、その割には綺麗なピンク色をしていた。膣穴がやや下気味についているのを確認できたので後は挿入するだけだ。
「先に言っておくが痛いから止めるなんてことはしない。我慢してくれ」
「相手に痛みを与えては────」
彼女が言いきる前に陰茎の半分を侵入させる。
「んひぃ♡あっ♡とっ、とっても大きいですねぇ♡流石にびっくりしちゃいましたぁ♡」
顔からは分からないが膣内からはそれなりの余裕が見えた。なので一気に根元まで入れることにした。
「んほぉぉぉ♡♡♡」
膣内のビクビクとした震えから、半ストロークで絶頂ったらしい。
「わ、私、膣絶頂きしやすい体質なんですけど、こんなの初めてですぅ♡」
「痛くはなかったようだな。んじゃあ、遠慮なく打ち付けるぜ」
腰を引いたらまた彼女の膣が震えた。だとしたら多少は加減を────する道理がないので思いっきり突き上げる。今度は彼女が仰け反りながら嬌声を響かせた。
「まっ、まってぇ♡それ、絶対に絶頂っちゃいますぅ♡」
「気に入ってもらえたようで何よりだ。因みに俺の中では動いたの内に入っていないからな」
「じゃ、じゃあ……もしかして……」
「いきなり50%ぐらいから始めるか」
パンパンと半分ほどの力で腰を動かす。時に大きく時に小さく、動きは不規則で読めないようにすると快楽も不規則で面白い。
「まっ、へぇ♡こ、これが半部じゃ♡全力だと壊れちゃいますぅ♡」
「性の解放こそがドスケベ性教の至上なんだろ? 聖職者らしく教えに殉じろよ。俺と凛で全部継いでやるからよ」
「そ、それは嫌ですぅ♡まだイキ死にたくないですぅ♡」
口から出る言葉がどこまで本当かは分からないが、膣の震えが徐々に穏やかになりつつある。これほど早く適応するのは流石だと言わざるを得ない。だから本気を出す。
「それではお待ちかね100%でいこうか。明日明後日はまともに歩けないと思え」
「そ、それは困りま────」
言葉を遮るように全力で腰を前後する。この異常な性交の群れの中で一番の激しさを叩き出し、教徒たちの目線を一気に集める。それを確認して俺は大きな声を上げる。
「ピピタミーミたちよ! 主よ! これが私が与えられた最大のカヌルーにして捧げられる最大のポウトーピです! 教えを施したシスターに今度は私が教えを施すのです! これをもって私達は真のエンドオブフリフリになるのです! さあ皆さんも私達に続いて楽園に向かいましょう! ベッチェー!」
「「「ベッチェー!!!」」」
最早教会が揺れているのではないかと思うほどの勢いになる。対し彼女は顔を伏せながらなんとか立っている状態だった。
「さ、流石神父様です……♡こんなに激しいセックスをしながら教えを説けるなんて……♡」
「青藍島民ならセックスしながら日常会話ができないと話にならないんでな。見てみろよ我妻、これがお前の望んだピピタミーミたちだぜ」
彼女が顔を上げて性の坩堝を一望する。
「あははっ……あははは……! あははははは!」
そして気が触れたような笑い声をあげた。
「これですよ! これでこそ世界を幸せにできます! ありがとうございます土口さん! あなたのおかげで────」
「「『孕めオラ』」」
重なった男女の声、全力で付きあげる俺の陰茎、そして俺達の前で起きた謎の光。それと同時に彼女が魂を抜かれたようにかくりと動かなくなった。
何が起きたんだと教徒たちがざわめき出したので俺は大声で宣言した。
「彼女は絶頂を迎え天の国に受け入れられたのです! 皆さまも彼女に続きましょう! アーラメオラピーフ!」
「「「アーラメオラピーフ!」」」
再び熱狂の性交が始まったので誤魔化せたようだ。俺は彼女から萎え始めた陰茎を引き抜き、呆然としている彼女に命令した。
「俺の避妊具を外せ」
「……はい……」
すると彼女は機械の様に無機質な動きで、何も入っていない避妊具を外した。どうやら作戦は上手くいったようだ。俺は俺達の前に立って青藍島の催眠アプリの画面を向けているに凛に向けて笑った。
「いいハメ撮りが撮れたな」
「よくもまあこんな作戦を思いつきますね……やはりあなたは敵に回してはいけませんね」
俺と彼女の服を着直して教徒たちを誘導して船に戻る。彼女は命令しないと動かなかったので手を引きながら船に戻った。今なお彼女は何処を見ているのか分からない目をしている。
「しかしこんなうまくいくもんか……? ちっと味気なさすぎるというか、余韻が無さすぎるというか……」
「ピロートークがしたかったら戻ってもいいですよ」
「いや、あそこじゃムードもクソもないからここでさせてもらうぜ────『やりたいようにやらせてもらいました』」
沈みゆく夕日と共に船はプリズンに戻る。この件が終わったら神父の服は故郷でコスプレセックスでしか使わないのだろうな、と思うと少し悲しくなった。