※この作品はR-18です。

ゴールデンマッドドッグ イン プリズン   作:神剣狩刃

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9-05 非力十九倍、欲力四十五倍

 今、我が家は戦場と化している。家具をある程度避けたリビングで、俺はレイラと組手を行っているのだ。『金色の狂犬』といえど凶暴な愛娘の相手をしなければならない。しかも最近の彼女はやけに気合いが入っており、食欲も運動量も男性SHOガードマンのそれと変わらなくなっている。とはいえまだまだ子供で、俺の足下に及ぶかどうかぐらいだ。

 

「ほらほらどうしたレイラ! 俺の顔面に一撃でもくらわせられたらドスケベ遊園地に連れて行ってやるぞ!」

「リーチ的に届かねえんだよ! 無駄にデケエ身長とチンポしやがって!」

「実戦でそんな言い訳は通じないぞ! あと何か壊したらお小遣いから天引きするからな!」

「壁ぶっ壊したのは悪かったよ! でも天引きしたら数か月は小遣い無くなっちまうだろぉぁ!?」

 

 足払いで見事に床に伏せさせた。彼女は悔しがりつつも、トイレに行ったら再戦だと闘志を燃やしている。成長期なんだろうなと納得しつつ、俺だけでは指導しきれない所があるので、俺に次ぐ実力者にスマホで助けを求めた。

 

「郁子先輩? 今日ヒマですか? レイラの指導手伝ってほしいんですけど」

「精くんとドスケベセックスできるならいいよ~♪」

「それじゃあお願いします」

「んふふ、カリ首洗って待っててね~♪」

 

 電話を切ると同時にインターホンが鳴る。いくら何でも早すぎるだろとモニターを覗くと、金糸雀色の坊主頭・両耳にそれぞれ3個の輪っかのピアス・黒いマスク・黒の革ジャケット・胸と腹に白のサラシ・ダメージ過ぎるジーンズ・各所に見える波飛沫の刺青という、知らなければその筋の人間のような女性が立っていた。俺は良く知っている人物なので明るい声で応答した。

 

「青柳! ついに来たのか!」

「その声は狂犬先生だな? 流石にこの格好じゃ暑いから中に入れてくれねえか?」

 

 なら何でそんな恰好をしたんだよと思いつつ、玄関の鍵を開けて彼女と対面する。俺でも一瞬だけたじろぐ威圧感だが、それが間違いなく本物の御白子である何よりもの証拠だ。

 

「山城から心の整理がつくまで来ないって聞いたから、ちょっと不安だったんだぞ!」

「そいつは面目ねえな。それも込みで話すからお邪魔するぜ」

 

 ということで案内したのだが、レイラとの組手で家具を雑に片付けたままだった。

 

「……強盗でも入ったのか?」

「いや、娘と組手をしていてな……壊すとマズいから退けてて────」

「親父伏せろ!」

 

 レイラの声に反応して反射的に伏せてしまった。このままだと彼女に直撃────

 

「コイツは飛んだじゃじゃ馬娘だな」

 

 することなくぬるりと避け、逆に飛び掛かってきたレイラを組み伏せてしまった。

 

「おがぁ!? 離せよヤクザ女!」

「あたしのこの見た目から女だと判断できたのは褒めるが、ヤクザだからと言って襲い掛かっていい道理はねえな?」

「んぐぅ!? こ、この締め方……!? お前、女部田さんの関係者か!?」

「女部田……この島には女部田って奴がいるのか?」

 

 どうやら彼女と郁子先輩には何かしらの関係があるらしい。

 

「精くーん? 鍵空いてたから勝手に入っちゃった────わー!? なになになに!? 何が起きてるの!?」

 

 昔から変わっていない胸丸出しの服を着た郁子先輩も加わって我が家は混沌と化した。とりあえず事情を説明しなければならなくなり、指導やドスケベセックスどころではなくなったのは確かだ。

 

 

 何とか場を落ち着かせ、退けた家具もそのままに皆で床に座って話を始める。

 

「こいつは青柳御白子。プリズンで知り合った囚人の1人だ。見た目は威圧的だが普通の人間だ」

「普通の人間は囚人にならねえだろ……でも、いきなり襲ってごめんなさい」

 

 頭を下げて謝るレイラを見て、青柳はカラカラと笑ってその頭を撫でた。

 

「力に反して可愛いところもある娘さんじゃねえか。分かればいいんだ、分かれば」

 

 そんな微笑ましい和解を見ていると、横から郁子先輩に肩をちょんちょんと触られ、こしょこしょと耳元で囁かれた。

 

「ねえねえ精くん……青柳さんって柔術が上手だったけど、もしかして青柳流の使い手?」

「青柳流……郁子先輩も使うアレですか?」

 

 郁子先輩の扱う"女部田流剣術"は青柳流を取り入れて完成されると聞いたことがある。その青柳流は掴み技の"草柳"・関節技の"梅柳"・投げ技の"桜柳"を扱う。以前、青柳が柔術を習っていたと言っていたが、まさかここまでの物だとは全く想像していなかった。

 

「あのレイラちゃんを抑え込めるなんて……アレはちょっとやそっとじゃ身につかないよ、生まれながらに教え込まれたヤツだね」

 

 俺もそう思いますと2人でコクコクと頷くと、それに気付いた青柳が郁子先輩を見てふぅんと唸った。

 

「……その体はあたしでも劣情を掻き立てられちまうな。いい伴侶を持ったじゃねえか狂犬先生」

「それなんだが……こちらは女部田郁子さんで、この人とは結婚はしていない」

「体の関係は奥さん以上にあるけどね~♪」

「……ああ、そういう関係か……まあ、あたしはとやかく言える立場じゃねえからな。伴侶にはバレるなよ?」

「それなんだが……体の関係は妻公認で、この人とは滅茶苦茶セックスしている」

「……もう何も言わねえ」

 

 彼女が頭を抱えて盛大な溜息をついた。まだ青藍島に来たばかりでこちらの価値観になれていないのだろう。ありがちな青藍島酔いの症状なので、レイラに緑茶を持ってきてもらうように頼む。

 

「飲みな青柳さん。青藍島初心者にあの2人の関係は理解できないからあんま考えんな」

「どうも……はぁ……そうだよな……青藍島だからな……そういう関係もありだよな……」

 

 彼女が頬を両手で挟むようにパシンと叩き、フルフルと首を横に振って話を始めた。

 

「……本当にそちらは女部田さんで間違いないんだな?」

「……間違いないよ、青柳さん」

「……あの"女部田流剣術"の女部田さんか?」

「……その通りだよ。"青柳流"の青柳さん」

「……ここで会ったのも何かの縁だ、手合わせを願っても?」

「……いいかな、精くん?」

 

 こと寝技に関しては俺でも郁子先輩には敵わないが、レイラを止められる技術を持った青柳に俺が敵うかどうかは分からない。つまり、断った所で始められたら止めようがないということだ。しかし、断る心算があるかどうかというと。

 

「……レイラや俺へのいい勉強になります。可能な限り瞬きするなよレイラ」

「見るのも勉強って奴か。家具壊してもあーしの小遣いから出すから遠慮なくやってくれ」

 

 親子共々毛頭ない。武の達人2人による実戦など、札束を積み上げたとてそうそう見れるものではない。それに比べたら家財など大した損害にはならない。俺はスマホを構えて録画を開始した。

 

「……実はあたしは草柳しか修めてないんだ。だから本物の梅柳と桜柳を見せてほしいな」

「出所してからここに来るまで実家で武術を鍛え直していたんだ、歳と見た目で舐めてたら大怪我するぜ」

 

 宣戦布告した青柳は音もなくゆらりと歩いて郁子先輩との距離を詰めていく。対し、郁子先輩は青柳がどう動いてもいいように構えを取って迎える。そして2人の距離が半歩分まで近づき、一瞬即発の緊迫が張り詰められた。

 

「────」

「────」

 

 お互いにお互いの利き手を目がけて腕を伸ばした。それは奇しくも握手の形で止まり、またも呼気すらも許さぬ緊迫が訪れた。

 

「────っは」

 

 先に郁子先輩が動き青柳の右足に自身の両脚を絡めて体勢を崩しに行った。

 

「────っふ」

 

 しかし青柳はそれを見越していたかのように郁子先輩に倒れ込んでいた。そして右手くるりと捻り郁子先輩の右手を引き寄せて脇で固め、左手で郁子先輩の左手を掴んだ。

 

「これが梅柳だ」

 

 そして空いた右腕で郁子先輩の首を押さえつけた。まるで風に揺れる柳の葉のように優しく、しかし確実に絡みついたそれは、郁子先輩の力でも解くことはできなかった。

 

「やっぱり本家は違うね……全然敵わないや……でも……今ので火が点いちゃった……もっとやりたいな……!」

「……任せな……次は桜柳を見せてやる……!」

 

 2人は立ち上がり構えから仕切り直し、今度は郁子先輩から近づいて機を作りにいった。そしてまたお互いの領域に入────る前に青柳が一歩後ろに下がり距離をとった。追うように郁子先輩が踏み込み、それと同時に青柳も踏み込み2人の体の距離が零になる。

 

「青柳流の基本は"零距離"にある」

 

 青柳の左手が郁子先輩の右肩を引き、右手が左大腿部を押し込み、そのまま青柳が後ろに倒れる。巴投げのように郁子先輩の豊体が回転しながら地面にたたきつけられ、床がギシリと軋んだ。しかし青柳の勢いは止まらず、流れるように郁子先輩に覆いかぶさった。

 

「相手や地面との距離を零にすれば、相手は抗う事すらできなくなる」

「身をもって分かったよ……あたしはまだまだだってことが……!」

 

 郁子先輩が歯を砕いてしまうのではないかと思うほど悔しそうな顔をしている。俺と戦ってもあんな顔をしなかったから驚きだ。

 

「……これを自分の物にできたら……あたしはもっと強くなれるってことだよね……!」

「その通りだ……そしてあたしはアンタが強くなるのを間近で見たくなっちまった」

 

 どうやら青柳はこの島での自分のやりたいことを見つけたようだ。

 

「でも、それだけじゃあ物足りないんでな。ありがとう狂犬先生、答えが見つかった」

 

 そう言って青柳は立ち上がって服を正し、野暮用があると玄関を出て行った。どこに行くか何となく想像がついた俺はあえて追いかけず、彼女が帰ってくるのを待つことにした。

 

 

 1時間ほど経ち、目元を赤く腫らした彼女が戻ってきた。

 

「……いい顔してるじゃねえか」

「……狂犬先生が言うならそうなんだろうな」

「いやいや、全然いい顔じゃないよ!? 何があったの青柳さん!?」

「明らかに良くない泣き方しただろ。お礼参りしてやるから相手を────」

「止めるんだ2人とも」

 

 俺の制止によって2人がピタリと止まった。

 

「……山の方に『かりそめのひまく』ってアダルトショップがある。お前の技術ならすぐ採用されるだろうから案内してやるよ」

「……食い扶持は自分で稼がないといけないからな。お願いするぜ」

「……ということで戻ってくるまでは組手でもやっていてくれ」

 

 俺達の踏み入ってはならない気配を察知したのか、2人は黙って頷いて組手を始めた。俺達が戻ってくるまで家が持っていればいいが、その時はその時なので俺は彼女連れて山道を進んでいく。道を進む最中、彼女が軽く笑いながら話を始めた。

 

「ラーレに行って波多江さんと話をしてきた。波多江組を抜けて、ただのラーレの一社員になったって言ってた」

「それじゃあ、向こうもお前と真っ当な恋ができるようになったんじゃねえか?」

 

 俺の言葉に彼女がどうやって返ってくるかはなんとなく分かっていて、想像通りバカ言うんじゃねえと彼女に笑われながら脇腹を小突かれた。

 

「あたしは波多江さんの紛い物を一生愛し続けるって決めたんだ。そのつもりで青藍島に来た。ただ……」

 

 彼女は俺と似たようなギラリとした笑顔を浮かべて言葉を続けた。

 

「それを理由に本物の波多江さんを愛しちゃいけないとはならねえ。だから付き合うことにした」

 

 何でも、伴侶がいながら堂々と他の女と体の関係を持つ俺を見て思いついた考えだという。

 

「これで両手に愛する女を抱くことができる。何だったら波多江さんが波多江さんを攻める、なんて画も見れるかもしれねえな」

 

 かっかっかとご機嫌に笑う彼女を見て、俺は苦笑いを浮かべた。先生としてよくない形で答えを与えてしまったかもしれないからだ。でも、話の感じからして両者の合意の上のような気がするので、俺が口出しするのは失礼だろう。何時か来るであろうプロポーズは是非とも見たいと思っていると、ついに目的の『かりそめのひまく』に辿り着いた。軽くノックしてはいると、青い髪に赤い眼鏡をかけた女店主が笑顔で出迎えてくれた。

 

「あ、精さん! いらっしゃい! 頑丈で気持ちいい新作オナホあるよ!」

 

 ハメドリくんの中の人を引退し、持ち前のオナホ制作技術でこの店を継いだ水引ちゃんだ。歳を重ねてやや凛々しくなったが、それでも十分な愛嬌を持っている。そんな水引ちゃんに笑顔で青柳を紹介する。

 

「こちら本島でラブドールを作っていた青柳御白子さんだ。柔術も嗜んでいて、見た目も威圧感十分だし、即戦力としてどうかな?」

 

 我ながら突然すぎると思ったが、水引ちゃんは何も臆することなく彼女の手を取りブンブン振った。

 

「精さんの紹介してくれた人なら安心して採用できるよ! これからよろしくね青柳さん!」

「お、おお……よ、よろしくお願いします……」

「所でどんなタイプのラブドールを作っていたの!? アニメ寄り!? それともリアル寄り!?」

「リアル寄り、というか抱いた女を再現して作っていました……コレ、昔作った作品の写真です……」

「わっ、凄い! 顔立ちとかボディラインの感じが人間そのものだよ! 何より関節の境がすっごい自然だよ!」

「じゅ、柔術やってたから人間の体の構造は頭に入っていますので……」

「ワタシはオナホール専門だから、身体を作れる人が欲しかったんだよ! 早速今日から作ろうよ!」

「え、あ、は、はい……」

 

 彼女は見た目に反して奥手で、対し水引ちゃんは意外とグイグイ行くタイプで、意外と相性が良いかもしれない。近い内にSHOもうかうかしていられないようなラブドールが販売されることだろう。もし受注生産を受け付けてくれるなら、BIG3モデルのものを作ってもらうとしよう。あとは2人で話し合うだけなので店を出た。

 

「おっ、九十九さん……じゃなくて、土口さんって呼ぶべきか?」

 

 すると寒色系のシャツに白いズボンを着た波多江さんとばったり出くわした。俺はわざとらしく足を開いき、両ひざに手を当て、頭を下げて滑舌悪く挨拶した。

 

「おつあぇあぁえす!」

「もう組は抜けたんだ、普通に挨拶してくれ」

「シコんにちはぁ!」

「……青藍島の挨拶ってそうだったか……すまない、標準語でのあいさつにしてくれ」

 

 標準語でのあいさつを済ませてここに来た理由を探ってみる。

 

「青柳だったらこのアダルトショップに来ると踏みましたか?」

「アイツはラブドール作りで有名だからな。土口さんも同じか?」

「俺は青柳をここの店長に紹介したんです。即採用で今夜から新作作りだそうです」

「アイツらしいな。いきなりあたしを作ってくれたりしそうで楽しみだ」

「初夜を偽物に取られる気分はどうです?」

「……ちっと妬いちまうな。まずは本物の良さを教えてやるかね」

 

 この調子だったら青柳と波多江さんの仲を心配する必要はなさそうだ。

 

「性教育が必要ならいつでも駆け付けますよ」

「一応房中術は習ったが、女相手の場合は習ってないな……必要になったらご教授お願いするか。四色夫妻にも頼む」

 

 恋人の就職祝いに行くと店に入っていった波多江さんを見送り、帰り道を歩いていく。やっとお天道様の下を歩めるようになった2人も、こうやって幸せに歩いていくのだろう。

 

 

 ただ俺の幸せは長く続かなかった。家の扉を開けたら色んな体液が混じった、青藍島を煮詰めたような匂いが鼻を殴ってきたからだ。恐る恐るリビングを見てみる。

 

「はあはあ♡女部田さん♡女部田さん♡女部田さん♡」

「いいよレイラちゃん♡全部イクにぶつけちゃって♡」

 

 レイラと郁子先輩が貝合わせをしていた。レイラはバイセクシャルだし、郁子先輩も平行世界の妹とレズプレイを楽しんでいた。どちらも十分素質があり、滾ると手が付けられないから割って入るのは危険だろう。俺は大人しく掃除道具を準備して、2人が収まるのを玄関で待つことにした。

 

「どうしたんだ精? 庭の掃除してる最中に締め出されたか?」

 

 帰ってきた礼に心配されたので、諦めて事情を吐いた。

 

「……リビングでレイラと郁子先輩が楽しんでる」

「またやっているのか……家具や体を壊さなければいいが、2人とも本気になると私では止められないからなあ……」

「……今日は寝技の訓練っぽいぞ」

「よりにもよって寝技か……なおさら止めに入るのはやめたほうが良いな……」

「……一緒に掃除手伝ってくれる?」

「寝技で掃除……? ……ああ、そういうことか……まあ、私も手伝うが……あの2人にもさせろよ?」

 

 こうして礼と一緒に30分ほど待ち、やっと落ち着いた所を4人で掃除した。レイラは色んな意味で女部田さんにはまだ勝てないと言い、郁子先輩はレイラちゃんがあたしに追い付く日が楽しみと言い、礼は少しは反省しろと言い、俺は家が無傷で済んで良かったなとあまり考えないようにした。




「ロリ(レイラ)に手を出した郁子先輩なんだが、セクササイズの範疇として処理させてもらう。お互い望んでいたし、俺としても身内で厄介事を起こしたくないからな」
「レイラはヒナミと違って色んな意味で違法ロリだからな……」
「渡会さんが合法ロリみてえな言い方だな」
「合法ロリじゃないですけど!合法成年ですけど!」
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