それから数日たったある日。主人公はまだ宮野たち一派にいびられていた。逃げようともしなかった。過去に一度逃げ出したことがあったのだが、足の遅い公はすぐに捕まり、それは
ひどい暴力行為に遭ったのだった。以来、逃げる前に足がすくんでしまうようになった。
蘭と和葉に助けられたあの日以後、宮野たちのいじめは収まるどころか、よりエス
カレートしていった。憂さ晴らしが途中で中断され、挙げ句、叱られたことに逆恨みしたらしい。これがあるから、いじめられっ子は助けを求めることが難しいのである。しかし公は、あの日、ふたりの年上の少女に助けられたことを悔いても恨んでもいなかった。
綺麗なお姉さんたちに助けてもらい、気に掛けてもらっただけで、天にも昇るような至福
感を味わったのである。
しかし、それといじめは別であり、あの時に和葉も言っていたように、常に和葉たちに護ってもらうわけにもいかなかった。宮野たちも、いじめる相手は公だけではなかったから、公に手を出すのは数日に一度程度だったのだが、蘭と和葉の一件があって以来、いじめの矛先は公ひとりに集中していた。
「おら、いつまでも泣いてんじゃねえよ!」
宮野がそう言って、公の足を蹴飛ばした。小倉も一緒になって尻を蹴っている。それも靴底で、である。ズボンの生地に、きっくりと足跡が残るほどだ。
「そうそういつもあの女どもが助けてくれると思ったら大間違いだ!」
「そうだそうだ、いい気になりやがって!」
湊伸は憎々しげに圭太を睨んだ。
「さっさと宮野さんが聞いたことに答えろっての!」
「そ、そんなこと・・・・言えないよ。」
「言えってんだよ、命令だ!」
小突かれ、蹴り倒された公の顔を冷たい視線で眺めていた宮野がぼそっと言った。
「・・・・俺が聞いたこと、もう忘れたのか?」
「じゃあもう一度聞いてやる。おまえ、あの毛利蘭と遠山和葉って女たちに気があるんだろ?」
「・・・・・。」
「言え!」
「い、痛・・・・・!」
宮野が聞くと同時に、小倉が公の二の腕を思い切り抓り上げた。いくら子供の力とはいえ、あそこまで強く抓ったら青あざになるだろう。
「す・・・・・好き、ですっ・・・・・」
公が悲鳴を上げるように申告すると、宮野はおどけて手下どもに言った。
「おい聞いたかよ。この野郎、女子高生に惚れたとさ!」
「身分知らずもいいとこだな。おめえみたいなクズ野郎が、美人女子高生たちが好きだと?いい加減にしろ!」
「あぐっ!」
小倉はそう言って公の頭を平手で思い切り叩いた。
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