クラスから追放されたけどこちらは元気に温泉ハーレムやってます 作:姫ノ木あく
※R-18描写多めです。苦手な方はブラウザバック推奨
※ノクターンノベルズに同時投稿しています
大砲の一撃のような轟音。
テラリアのグレートアックスとドワンガンの二振りのグレートソードが一合まみえただけで、そんな音がした。
ドワンガンがニヤリと笑いもう一撃放たんと、その丸太のような腕を振り上げる。
だが、その前にすでにテラリアのグレートアックスの先端が突きだされており、ドワンガンはそれを間一髪回避した。
「ハハハ! さすがテラリア! おまえこそ我が最強のライバルだ!」
「そういうのは面倒くさいからいらないよ! それよりもっとこっち来な。アタシゃもう少し時間稼ぎしなきゃならねぇんだ」
「時間稼ぎなんて野暮なことを言うな! せっかくの機会なんだ。一対一の決着をつけようぜ!」
「やなこった!」
怒号と旋風が巻きあがる今日観客たちが一番観たかっただろう闘いがはじまった。
ドワンガンがデカすぎるのか、テラリアが小さすぎるのか、二本の大剣の間にグレートアックスがボールのように浮かんでいる。
だがテラリアのアーケン〈ヘヴィー・ストレングス〉が作用して、ドワンガンと激突する度に、凄まじい金属音が二重に響いている。
ドワンガンの二つの剣がテラリアのグレート・アックスをおもちゃにして遊んでいるようにも見えるが、ダメージを加えてるのは果たしてどちらの方か。
「ちょっとは喰らってるが安心しとけ! 仕事はちゃんとこなすさ!」
やっぱりテラリアも厳しいダメージを喰らっていたらしい。
その隙に〈シンシルヴァ〉の傭兵マデリカ・ミケラが透明化の魔法を使って姿を消したのが見えた。
マデリカはこのチーム一番のトリック・スターだが、〈アース1〉に落とされてるのが不満だ。
これだけ手札になる魔法を持っていて、簡単に落とされるあたり戦略的な頭脳は足りないとみえる。
正直、こいつに戦略を教え込んで強くしたいと思うくらいだ。
だが、そんなわけにも行かないので、プライムに視線だけで指示をして始末させる。
プライムはその獣の臭覚であっという間にマデリカを見つけ、そのズタボロになった正体を現させた。
もう一人の〈シンシルヴァ〉の傭兵アンドリュー・ファングはフルプレートにロングソードという正統派の戦士だった。
勝率も能力値も決して悪くなかったが、今はシャリアスの細かい攻撃に手こずっている。
シャリアスのショートソードが少しずつ、でも確実に、アンドリューの鎧の隙間をぬってダメージを刻み込んでいるのだ。
最近テラリアはシャリアスに特にこういったスタンダードな戦士との闘いに慣れさせることを優先させているらしい。
つまりアンドリューは今、シャリアスの対戦士戦の練習をさせられていた。
「ファータ、調子はどうだ?」
「絶好調です」
クーフの〈ウインドマスター〉とティークの〈ウインド・ストーム〉で風が舞い起こる中、ファータの放つ矢がすべてクーフ、タラル、ティークの足元に直撃しており、一歩も動けなくしてるのだ。
風の気まぐれで矢が着弾しているように見えるがそうではない。
外れるはずのファータのアローがすべて、3人の動きを止めるように着弾しているのだ。
ティークのショートソードなど、すでに2本とも足元に突き刺さっている。
さらにタラルのロングボウの矢ですら、すべてファータのショートボウの矢に撃ち落とされてしまっていた。
「〈プレコグニション〉強化の結果です。〈プレコグニション・アロー〉。矢を的に当てるのではなく、矢が刺さった場所に元々的があるイメージです」
「バカな! これが今のファータの力か!」
「わたしだけの力ではありません! チーム〈シルヴァ〉の力です! クーフ! あなたがいたチーム〈シルヴァ〉の!」
そのファータの言葉はクーフを確実に貫いていた。
やるなら今だ。
「フォーフォリア、おまえならいける! クーフを仕留めろ!」
「心得た!」
〈プレコグニション・アロー〉に見舞われながらのフォーフォリアの攻撃なら、クーフはもう引き下がるしかないだろう。
だがその時、俺の目になにか黒い球が煙を上げながら、テラリアが戦ってる方に転がっていくのが見えた。
しまった!
マデリカの手持ちの爆弾だ!
ファータの〈プレコグニション〉は今、全力で弓矢に注がれている。
シャリアス、プライムへの指示は出したところで爆発に巻き込まれるだけだ。
テラリアの位置! 爆弾の爆発力! 爆発の効果範囲!
その情報が入って来た瞬間、俺自身がその爆弾に向かって走っていた。
「雪夜!?」
作戦ではフォーフォリアがクーフから一本取るまで、テラリアがドワンガンを引き受けている予定だった。
だが、俺の向かってる先のものが爆弾であると、テラリアにも理解できたようだ。
テラリアが同時に対処できるほど、ドワンガンの攻撃は甘くない!
「信じたぞ、雪夜!」
その瞬間、俺は爆弾を拾って放り投げた。
そこから何mも離れていないだろう。
だが、それで充分! テラリアはグレート・アックスをシールド代わりにして身を隠す。
その瞬間爆弾はそこで大爆発を引き起こした。
戦闘のすべてがその大爆発で一瞬止まる。
前回の失態もあっての覚悟だろう、マデリカは今回の仕合で自爆まで考えていたのだ。
「雪夜様!」
シャリアスが背を向けアンドリューの一撃を背中に受ける。
「甘いぞ小娘! 死の栄誉をやろう!」
だが次の攻撃は巨大な猫の爪に止められた。
「こっちはあーしが相手するっす!」
場が動く。
ファータが再び〈プレコグニション・アロー〉の連打を再びはじめた。
「テラリア! またおまえの仲間を殺してしまったか!」
ドワンガンの二本のグレートソードがテラリアに迫る!
「誰も死んじゃいねえよ!」
一本のグレートソードをテラリアのグレートアックスが、もう一本のグレートソードを俺のクロスした手甲が防いでいた。
※ ※ ※
「ファータさん、雪夜さん、お客様がいらしております」
「お客様?」
「なにぶん大勢ですので玄関の方へ」
カナに呼ばれてホスピタムの玄関に向かうと、そこには左右にずらりと並んだ鎧騎士がいた。
その鎧には見覚えがある。
先ほど戦ったばかりのアウエリアのものだ。
左右に並んだ騎士たちの間から、美しい法衣を纏った少女が真っ直ぐ進んできた。
そして2人の前で、深々とお辞儀をする。
「本日は恥ずべき仕合をお見せいたしました。申し訳ありません」
「いえ、なんかその、すみません、こちらこそ」
「いいえ、あなた方の強さは本物でした。我々はアウエリアの鎧騎士に誇りを持っておりますが、ここまで何の反撃もできず敗北したのは初めてのことでした」
アウエリアの教皇が首を向けると、周りの鎧騎士たちがその場に立具を立て鎧を組み上げる。
「こちらは本来仕合で勝利に貢献したアウエリアの騎士が纏うものですが、三薗雪夜様、今回の仕合あなた様にいただいてもらうのが筋との意見が多くありました。是非いただいてはいただけないでしょうか?」
教皇が鎧を一なですると、美しい光がキラリと光る。
「アウエリアの騎士は頑健さを最も重視します。それもこのアウエリアの鎧があってこそ。今日あなた様方にいただいてしまったように冷却への弱点はありますが、身に付けている者の体力、耐久力があればあるほど、神秘の力が増すよう祈りが込められているのです」
「体力、耐久力……」
「もちろん、こうして飾っていただいても一級の美しさだと自負しております。今日の英雄に是非いただいてほしいのです。どうかこのお願い聞いてはいただけないでしょうか」
俺がファータを見るとファータも俺を見て、2人で深く頷いた。
「ありがとうございます。ありがたく使わせていただきます」
「……! よかった! これでアウエリアのメンツも立つというモノです。これからの仕合もがんばってくださいませ。でも、次に出会ったときにはこうは行きませんよ」
「もちろんです。お互いがんばりましょう」
俺は教皇の手を取って握手したが、無礼に当たる行動だったのか、周りの騎士が少しざわついていた。