クラスから追放されたけどこちらは元気に温泉ハーレムやってます 作:姫ノ木あく
※R-18描写多めです。苦手な方はブラウザバック推奨
※ノクターンノベルズに同時投稿しています
◇ ◇ ◇
「〈ウィル・オ・ウィスプス〉!」
チーム〈いのちをだいじに〉の代表者、細江みのりの手のひらに光球が浮かんでいた。
その光球が1つから2つへ2つから3つへと増えていく。
「細江さん、最近ずいぶんがんばってるね」
「三木くん……。ええ、ちょっと戦うことに決めたので」
「戦う? 戦わないのが細江さんの信条だと思ってたんだけど」
「実際に仕合があって、脱走計画も合ったりして、いろいろと考えたのよ。わたしが代表者じゃなかったら、まだ戦いたくないって頑なに言ってたと思う」
そう言いながら3つの光球をそれぞれ無関係な方向に飛ばせて、再び自分の周りで滞空させる。
「おお」
「光る球が浮かぶだけ? 嘘だったわ、そんなの。わたしの戦いたくないって気持ちがそうさせてただけ。……見てて」
3つの光球は3mほど上空まで上がると接触しあいバチィッと音を立てて大きく放電した。
「めちゃくちゃ攻撃的なアーケンになってる……」
「アーケンの名前が複数だったからね、複数いけるんだろうなと思ってやってみたらこんな感じよ。〈ウィル・オ・ウィスプス〉の数はまだまだ増やせるはずだと思ってる。もう仲間を捕まえられたり怪我させられるのはゴメンだわ」
「そっか、細江さんは決意したんだね。じゃあ、余計なお世話かも知れないけど僕から一枚」
三木蒼はそっと右手をかざす。
「〈ウィザーズ・カード〉」
そこには一枚のタロットカードが現れた。
「『マジシャンの正位置』……見事に今の細江さんだね。創造性、自信、才能……自らの能力を開拓していくカードだ。これを君に捧げよう」
「ありがとう三木くん。悪い目が出なくてよかったわ」
「それはないってわかってたよ。多少の付加効果があってもこれはアーケンだからね。普通のタロットより全然僕に味方してくれる」
「そうなんだ」
「みんなには内緒にしといてね」
「ふふふふ」
「ははは」
◇ ◇ ◇
回復役の朝は早い。
と言ってもここは常昼のアガルタ。
常に上空に『セントラル・サン』が浮かんでいるため、夜はない。
それでも時間はあり、時計もあるのだから、明るかろうがしっかり寝て、しっかり眠れなかろうが朝は起きるものなのだ。
少なくとも回復のアーケン〈エンジェリック・ヒール〉を持つ宮本ゆかりはそう思っていた。
朝から、各チームの部屋を回り、体力回復や傷病回復を誰に頼まれずともやっていく。
こんな役回りをできるのも、親友で精神回復のアーケン〈マインド・フラワリング〉を持つ俵かすみが一緒にいてくれるからだ。
おかげで各チームとも、この2人が回ってくる朝の時間を、『エンジェリック・タイム』と言ってありがたがっていた。
仕合の激しさもあって、ゆかりの方が出番が多いように思われるが、やはりここは知らぬ間に放りこまれた異世界。
かすみの〈マインド・フラワリング〉に救いを求めるクラスメイトも数多い。
一度は崩壊しかけたクラスメイトたちが、再び再集結できたのは、天藤のリーダーシップより、この『エンジェリック・タイム』があるからこそと考えている者も多い。
それと、チーム〈にはん〉。
まい先生が代表者を務めるこのチームには、歌を聴いた者に治癒効果をもたらすアーケン〈アフェクション・スリープ〉を持つ小早川蘭蘭がいて、このチームだけはエンジェリック・タイムが必要ないくらいのことになっている。
〈アフェクション・スリープ〉には睡眠効果もあるらしく、常昼のアガルタ特有の不眠症の改善にも役立っているという有能さだ。
ただし本人も歌ってる間に寝てしまうことが多々あるので、注意が必要である。
「蘭蘭ちゃん、おはよう」
『エンジェリック・タイム』の最後にチーム〈にはん〉を起こしに来るゆかり、とかすみ。
「ふぇ……? あ、おはよう。もう朝の時間?」
言ってしまえばすべて昼の時間なのだが、『地軸時計』とよばれる時計が各所に設置されていて、同じ時間を寸分違わず表示しているので、それに伴って朝の時間、昼の時間、夜の時間という呼び方をみんななんとなくしていた。
「それにしても〈にはん〉は相変わらず……」
男女の場所は別れているものの、蘭蘭の歌で眠りに就きたいという子が多く、他チームからも何人もこちらの部屋に寝に来ている。
「先生も朝ですよ。起きてください」
「うぅ~ん、もう少し……」
「ダメですよ。まずは先生がしっかりしてくれなきゃ」
チーム〈にはん〉の代表者という特権で、まい先生は蘭蘭の隣をがっちりキープして眠っていた。
アガルタに来る前は、授業中でも休み時間でも延々と歌っている蘭蘭に手を焼かされていたが、今ではすっかり蘭蘭の方がまい先生のお母さん状態だった。
「みんな、おはよう! 調子の悪い人はいない? まあここで寝てる人はみんな元気か」
「蘭蘭ちゃんもアーケンの使い過ぎとかない?」
「んー、眠くなったらわたしも寝ちゃうから大丈夫だと思う~」
くいくいと首や肩を伸ばしながら言う蘭蘭。
「ああ、ただ」
「?」
「最近、わたしが歌いはじめるとすぐに寝ちゃう子が多くなった気がするの」
「ふむ、アーケンが強くなってきてるんかもね。わたしも怪我の回復がはやくなってきた気がするし」
「私は全然わかんないや。心がどこまで回復したかなんて見てわかるもんじゃないしね」
「そうね。でもわたしたち回復組のアーケンが強くなれば、必ずみんなの助けになれるはずだから、がんばっていこうね」
「うーん、でも」
かすみが言った。
「好きな人がここにいないっていう心のケアだけは、中々難しいからね」
「な、なに言ってるのよ。わたしは別に好きな人なんかいないし」
「ゆかりのこととは言ってないけどねー」
「もう! かすみ!」
そうして2人のエンジェルがチーム〈にはん〉の部屋を追いかけっこしながら飛び出していく。
そんな光景を見ながら、まい先生も起きあがり洗面所に向かった。
顔を洗うのは当たり前としても、スキンケアなどがちょっと困る。
クラスのみんなと違って自分はもう24なのだから。
「……天藤くんに聞いてみたらなんか出してくれるかしら」
まい先生はそう思いながら、天藤がいつもいる生徒会室に向かった。
小さめにノックをしたが何の返事もない。
こっそりドアを開けると、ドアのすぐそばにサッカー部の新納が寝ていた。
ずっとここで門番をしていたのだろうか。
よく見れば、一番奥の机では誰かが突っ伏して寝ているではないか。
ノートにびっしりと書かれた色々な書き込み。
右手に握りしめたままのペン。
天藤が疲れ果てて寝て、新納もそれから寝たのだろうとの予想がつく。
このままでは明るいだろうと思って、自分の上着を窓に掛けて、少し影を作ってやると、天藤は身じろぎして上半身を起こしてしまった。
「あれ……」
「ああ、ごめんなさい。眩しいだろうと思って影を作ってあげたら逆に起こしちゃったみたい。おはよう、天藤くん。昨日も遅くまでがんばってくれていたのね。ありがとう。いつも感謝しているわ」
「え、あ、ああ、おはようございます……あれ……」
「どうしたの?」
まい先生が天藤の顔を覗きこもうとしたら、そっぽを向かれてしまった。
「いえ、すみません。ちょっと目やにがヘンな風に入ってしまったようで、涙が止まらなくて」
天藤のそんな返事に、まい先生は後ろからその頭を抱きしめる。
ふわりとした大人の女性の香り。
温かく柔らかな乳房の感触。
「や、やめてくださいよ、先生」
「ごめんなさい。天藤くんずいぶん疲れてるんだろうなって思って。先生が情けないから、いつもみんなをまとめる大変な役をやらせてしまってごめんなさいね」
「それは、別に……俺が好きでやってることなんで」
「そうであってもよ。とにかく、今日はもうしばらく眠っていなさい。その間くらいは先生、しっかりみんなのまとめ役を務めるから」
「先生……」
「返事は?」
「はい、まい先生。ありがとうございます。数時間ほど眠りに就かせてもらいます」
「起きるまで寝ていていいわよ。その分、先生がんばっちゃうから」
「はい、よろしくお願いいたします」
「さて、そっちで寝ている新納くんはどうしようかしら」
「そろそろ島津が来るはずですね。島津が来たら交代してもらいましょう」
「じゃあ、先生はそれまでここで待っているわ。天藤くんはとっとと寝てきてしまいなさい」
「はい。ご迷惑をおかけします」
「ふふ、迷惑をかけているのはこちらの方よ。改めて、いつもありがとうね、天藤くん」
「いえ、とんでもないです。それでは失礼いたします」
そうして天藤は生徒会室を出ていった。
「起きるまで、か。ずっと真昼っていうのも困っちゃうわね。できれば一晩ぐっすりおやすみなさいって言いたかったんだけど……」
まい先生はそこでふと気がつく」
「あ、スキンケア道具の相談するの忘れてた……。ま、いっか今度で」