クラスから追放されたけどこちらは元気に温泉ハーレムやってます 作:姫ノ木あく
※R-18描写多めです。苦手な方はブラウザバック推奨
※ノクターンノベルズに同時投稿しています
◇ ◇ ◇
「天藤のバカが考えそうなことだ……」
一応、他にも候補を挙げていたが、俺を追い出そうという目的が丸見えだった。
自分自身のアーケンによっぽど有用性を見出していたのだろう。
実際、なんでも取り出せるとしたらすごい力だ。
一方、俺の〈ウォリアーズ・カタログ〉は情報部分だけ。
といっても、ゲームは情報がすべてだと考えているタイプだから、俺にとっては充分に使える能力だ。
この能力の使い方も、今後もっと使えるようになっていくだろう。
まあ、俺を追い出したい天藤にとってはそんな理屈は関係ない。
議論をしたところでまい先生やゆかりが戻ってきたら、俺が離脱する流れにはならなかった可能性が高った。
つまりだ、俺は離脱したくて離脱したんだ。
特に天藤が仕切りはじめたのをきっかけに、そうするのが一番だと考える様になった。
クラスには他にサッカー部主将を務める島津陽斗なんかもいたが、島津が場を仕切っていたら俺も残ったかもしれない。
そんなことを考えながら、俺は先ほど案内されたコロッセオの方に向かっていた。
このアガルタという世界は面白い形をしていた。
上空の頂点には『セントラル・サン』と呼ばれる太陽がある。
太陽が上空にあるのは当然なのだが、この太陽は何時間経っても上空の中心にあった。
無数のコロッセオとそれを繋ぐアーケードで形作られた街も、ずいぶんと奥まで見えていて、そのあまりの遠さに地平線の孤が反対側に向いていることにやっと気がついた。
つまり、球体の中心に太陽があり、その内壁に陸地があるのだ。
地下世界アガルタ。
なにかのゲームか漫画の設定ではそういうのがあった気がするが、実際に内側に曲がった地平線を見ると少し頭がふらついてくる。
これらの情報も面白かったが、俺がこれから必要とする情報はチームだ。
なんらかの情報が得られるとしたら、やはり先ほど仕合を見たコロッセオの方だろう。
「それでコロッセオに行ってみたらドンって音がしてさ、ちょうど俺の腕の中にファータが降ってきたって訳だ」
「運命に拾っていただいたのです! その節はありがとうございました」
「31人いて1人余るから出ていけとか、バッカじゃねぇの!? 予備がいた方がいいだろ、そんなの」
「だろ? 俺もバカだなーと思ったから、俺の方から出てきてやった」
「アッハッハッハッハ! やるな雪夜! 気に入ったぜ! アタシはテラリアだ。好きなように呼びな」
「あ、あのっ、一応代表者ですけど、ファータって呼び捨てで大丈夫です!!」
「ああ、ファータ、テラリア、よろしくな」
そして俺たちは3人の手を合わせる。
高校生の俺と それより歳下のエルフ、成人だけどさらにちっちゃくしか見えないドワーフの少女。こんな奇妙な新しいチーム〈シルヴァ〉が完成した。
「とはいえ、俺はまったくの戦闘の素人なんだけどどうしようか」
「アタシもそれは思った。アタシ1人でファータを護るツーマンセル的な闘いの方が余計なお荷物を抱えなくていいんじゃないか?」とテラリア。
言いたいところは隠さずにきっぱり言ってくれるのが、むしろ心地いい。
「テラリアの強さなら確かにツーマンセルで突破口を開くのはありそうだな。それでもさすがに2人だけは厳しすぎるか」
「それでも……」
と真剣な表情で俺の手を握ってくるファータ。
「間違いありません。ほんの少し先ですが雪夜さんと一緒にいる未来が見えるんです」
「そういやファータのアーケンは未来予知だったっけ」
「!?」
驚くファータ。
「雪夜、なんでそれを知ってる?」
「え?」
「チーム〈シルヴァ〉は確かに完璧な予想で戦ってきたのが売りだが、それはフィーナの〈プレコグニション〉が有名だったはずだ! どうしてファータのアーケンも〈プレコグニション〉だと知っている!?」
なるほど。
雑誌に書いてあることばかりがわかるってわけでもないのか。
自分の能力の再確認も必要だな。
「俺もまだ自分のアーケンがどういったものか理解し切れてないんだ。ともかく、確かに君たちの能力や素性は俺のアーケンで知った。もっと研究してみるつもりだけど、俺の方からも頼む、君たちのチーム、チーム〈シルヴァ〉に入れてくれ」
「喜んで!」
「フン、死んでも復活代は出さないぞ」
「テラリアさん!」
「冗談! 冗談だって!」
「復活代か……。もしかしてそれまでに金を貯められればフィーナさんも?」
「そうです。でもそれにはタイムリミットがあって……死者であろうと闘技場に出ない期間が一ヶ月過ぎれば消失することになります」
「つまり、今の目的はフィーナさん復活のために金を集めるってことでいいな?」
「それでいいが、ただの金じゃダメだ。闘技の結果でしかもらえない『ヴァロ』っていう金が必要になる」
「とにかく戦うしかないってことか……」
「はい!!」
「うわ、びっくりした!?」
そこにまた妖精が飛び出してきた。
外見年齢は中2くらい。
身長は30センチくらいだろうか。薄い黒紫の羽根が美しい。
「あ、自己紹介していませんでしたねスミマセン。チーム〈シルヴァ〉の案内役をしておりますカナリミ・フレンチといいます。お気軽にカナとお呼びください!」
カタログが反応しなかったのは闘技者じゃなかったからか。
びっくりした。
「えーとまず、チーム〈シルヴァ〉からクーフ様、タラル様、ティーク様が脱退され、三薗雪夜様が正式に加入されました」
「まずってことはまだあんの?」
「今から24時間後にチーム〈シルヴァ〉とチーム〈グレナディア〉の仕合がマッチされました!」
「ちょ、ちょっと!? さっき仕合したばかりなんですけど!?」
「ウチはまだ雪夜を入れても3人しかいないんだぞ!?」
「もちろん、試合放棄代を支払えば、仕合をキャンセルすることもできますが……」
「今金がないから稼ごうって話をしてるんだよ!」
「ですよね~」
「仕合が始まる前ならチームへの加入は可能なんだよな?」
「はい」
「とにかく人を集めよう。ファータ、クーフたちはなんとか呼び戻せないか? 他の2人の方でもいい」
「テラリアにはアテはないか?
「その夜がないんだよ、
「ありがとう」
「なんで新入りのおまえが感謝するんだっつーの」
「よし、俺も歩きまわって一時的にでも加入してもらえないか当たってみるよ。このアーケン、一般人の中から闘技者を見つけるには便利だからさ」
「期待してるよ」
俺たちはカナをコロッセオの部屋に残して、それぞれ人捜しに出た。
誰も大きな鳥がバサリと羽根を広げたことに気がつかなかった。
正直に言って、ファータが一番厳しいだろう。
あれだけきっぱりと出ていったんだ。人数が足りない分だけ人を貸してやるとはどうやってもならない。
なるとしたら、俺の首を切って元のチーム〈シルヴァ〉体勢に戻ることだけだ。
だがそれも、ファータが絶対に許さない。
予知や予言がどういった感覚のものなのかはわからないが、ありがたいことにファータはこちらがびっくりする以上に俺のことを信じてくれている。
ファータの信じるチーム〈シルヴァ〉の勝利には『三薗雪夜』が必ず一緒にいるんだ。
そこまで信じられた以上、俺にもその信頼に応える義務がある。
きっとテラリアがフィーナを信じてファータを護るのも同じ気分なんだろうな。
そして、そのテラリアなら今回人を連れてきてくれる可能性が一番高い。
テラリア自身が戦士としてすでに名と実績があるし、〈カタログ〉によれば〈シルヴァ〉以外のチームでの勝利も重ねている。
すでにテラリアに恩を受けたことのあるチームからならば、1人や2人一時的な出稼ぎに入ってくれるんじゃないだろうか。
などと考えながら〈カタログ〉の反応を探し回っていると、背筋に悪寒が走った。
人々を押しのけるように邪悪な集団がアーケードの中央をゆっくりと行軍してくる。
中央のカーゴに乗っているオークが『グレンブル・ウルク・オルグ男爵』。
棍棒を持った屈強なゴブリンが『ブラウン・ブラウン』。
両の手に片手斧を持っているのが『カルンガン』。オーガだ。
行軍の中心で動いている朽木の大木が木の精の『バラン・バラオウン』。
バランの枝に止まって毛づくろいをしてるハーピーが『パーピュレイ』だそうだ。
まるでハロウィンだな、などと思っていると、ふとカーゴの上のグレンブル男爵と目が合った。
俺はチーム〈シルヴァ〉に入ったばかり。
グレンブル男爵が俺のことを知ってるとは思えないが……。
いや待て。それより6人には1人足りない!?
ゾクリとした殺気と共に背後から〈カタログ〉の反応があった!
俺はコケた振りをして咄嗟に前方の人混みに紛れ込む。
すると一瞬前まで俺がいた場所に、黒髪セミロングの短剣を持った一人の少女が立っていた。
まだ小さな人間の少女『シャリアス』。
ずっとグレナディアの奴隷として連れ回されている暗殺者らしい。
「わぁっ!?」
「なんだ!?」
それに気がついた近辺にいた人たちが声をあげる。
そんな中、シャリアスは焦る様子もなく短剣を懐に隠すと人混み紛れていった。
そこに高さ2mくらいの金属の柱のようなものが現れる。
案内役の説明によれば、あれがアガルタの警備を任されている『ゴレム』と呼ばれる人造兵らしい。
周囲の人が一体のゴレムに説明してる間に何体ものゴレムも集まってくる。
この混乱では、人混みの中で再度狙われる可能性もある。
俺は早々にコロッセオにあるチーム〈シルヴァ〉の控え室に戻ることにした。