クラスから追放されたけどこちらは元気に温泉ハーレムやってます 作:姫ノ木あく
※R-18描写多めです。苦手な方はブラウザバック推奨
※ノクターンノベルズに同時投稿しています
「暗殺者に狙われた!?」
ファータとテラリアが同時に声をあげる。
「間違いない。これの〈カタログ〉にも反応していたグレナディア所属の少女シャリアスって子だ」
「なんで入ったばかりの雪夜のこと知ってンだよ」
「チームの入れ替わりは案内役に聞けばわかるからな。特に俺たちはずっとこのコロッセオの控え室にいた。つまり俺はチームに入った瞬間からマークされてたんだ。チーム〈グレナディア〉の対戦相手が仕合前に襲撃されてることは今回が初めてじゃないみたいだし……」
「……雪夜さんのアーケン、便利ですね」
「どうやら、暗殺を仕掛けて相手を傷つけるか減らして、それがバレた場合にはまだいる他の奴隷をチームメンバーにするという作戦をしているらしい」
「こっちは元々3人だってのにそこまでやんのかよ! きったネェヤツらだぜ!」
「いい悪いで言えば悪いことだが、それだけ本気で勝ちに来てるってことだろ。ちょっと甘く見てたな。もう少し本気で気合いを入れなおさないとな」
ピューとテラリアが口笛を吹いた。
「結局メンバーは見つかってねえ。なのに相手はルール無用のガチできてる。それだけわかってて気合いを入れなおそうなんて、初心者の闘技者の言葉じゃねえな。アタシゃ雪夜のことが本当に気に入ったね」
「気に入ってもらえてありがとう。こうなってくると、今からチームに入れてくださいってのがいてもそっちの方が怪しいな」
「本当ですね。雪夜さん、頭もいいです!」
「雪夜の〈カタログ〉ってのはどれくらいの情報までわかるんだ?」
「そうだ。それも詳しく調べたくてさ。二人の情報ももっと詳しく見ていいか?」
「え……ちょ、ちょっとなんか恥ずかしい感じもしますけど……。はい……どうぞ」
「アタシは全然構わないぜ。ドンと来な」
2人の厚意に甘えて、徹底的に調べさせてもらうことにする。
そうすると詳しく調べようとすればするほど、知らなかったデータが入ってくることがわかった。
通常では正確なところはわからないはずの数値や、相性、まるでこの世で俺だけが、攻略本のデータを持っているかのようだ。
「雑誌どころじゃなかったってわけだ」
「なにかわかりましたか?」
「ああ、雑誌に絶対載ってない情報までわかるみたいだ」
「へぇ、そんなの雪夜に区別つくのかい? 試しにどんな情報か言ってみ?」
「悪気はないが信じてもらうのにはそれが一番速いか……」
「な、なんです……?」
「うん、じゃあ言っちゃうと……2人ともまだ処女だ」
「「!?」」
「ばばばばバカヤロウ! 突然なに言い出すんだ!」
「雪夜さんのえっち! 雪夜さんのえっち!」
俺は2人のポカポカ攻撃を受けながら反論した。
「今重要なのは、それが本当かどうかだ。情報が正しいかどうかにだけ価値がある」
「うっ」
「そ、それはまぁ……そうですけど……わたしまだ子供ですし……」
「年齢だけじゃわからないだろ。エルフの中じゃ初潮の祝いにセックスする部族もあるって聞いたことあるぜ」
「うちの部族はそんなことありません! ……わたしより5歳くらい下でしちゃう子なんかもいるみたいですけど」
「ほらぁ。で、ファータ自身はどうなんだよ」
「しょ、処女です! そもそもお師匠様に育てられてたころから、周りに男の子なんていなくて……もしかしたら雪夜さんが一番話したことのある男の子かもしれません」
「まあそんなところだよな」
「…………」
「…………」
俺とファータが黙ってテラリアに目を向けたが、テラリアはふいと視線を逸らす。
「テラリアさんはどうなんですか! ドワーフで成人なら充分しちゃってておかしくないはずです! 自分だけ答えから逃げるなんて代表者として許しませんよ! お師匠様にだって顔向けできません!」
「フィーナの名前まで出すのかよ!?」
「大事な話ですから!」
「むむむ」
「むむむむむ」
「ぷはっ……負けた負けた。処女だよ、処女。正真正銘、男とそんな関係になんてなったことはねぇ。酔っ払いのスケベオヤジ共から余計な話はいっぱい聞かされてきてるけどな」
「じゃあやっぱり、雪夜さんの〈カタログ〉はかなり信頼が置けそうですね」
「待て。雪夜のことを聞いてねえ」
「俺のこと?」
「童貞かどうかって聞いてんだよ!?」
「それは〈カタログ〉の能力と関係ないだろ!」
「アタシたちにこんな恥ずかしい話させといて自分は知らんぷりはないだろ!」
「……まあ、それはそうか。童貞だよ。ちなみに女の子と付き合ったこともない。これでいいか?」
「もう少し恥ずかしがれよ!」
「それはさすがにどうでもいいだろ!」
「そっか……雪夜さん、まだ誰とも……」
俺の得意分野は元々データベースだ。
興味があるソシャゲが公開されれば、その情報に貼りついて、どういうデータでできてるのか、どういうデータがもっとも重要かを調べあげ、自分のホームページに掲載していた。
当たったゲームもあれば外れたゲームもある。だがめげずに、データの収集を続けた結果、今ではデータの収集を手伝ってくれる有志も増えたそこそこ大きなサイトになっていた。
このアーケンはその延長だ。
そうか、そうするとだぞ、相性対応表みたいのまでは作れてもおかしくないな。
ならばやらなければいけないのは今度は向こうのデータか。今日一目見たがそれだけで、どれだけのデータが探れるんだ? それともそれこそアーケードで売ってる本なんかでも収拾できるのか?
「雪夜、雪夜」
「大丈夫ですか?」
「ああ、ごめん。急にこのアーケンの使い方がわかった気がしたんだ。このアーケンで得た情報の正確さ次第では、俺たち3人のままでも〈グレナディア〉に勝てるかもしれない」
「さすがにそれは調子に乗りすぎじゃないか? 仕合ってのは要は殺し合いだ。そんなに甘いもんじゃない」
「もちろんだ。だから、これから俺が言うことが現実的かどうか、感想を聞かせてほしいんだ」
◇ ◇ ◇
数時間後、『セントラル・サン』が燃え盛るステージの元、2つのチームが相対していた。
チーム〈シルヴァ〉が代表者ファータ、テラリア、三薗雪夜の3人に対して、チーム〈グレナディア〉は6人。
どうやらチーム〈シルヴァ〉のオッズは約3.5倍だそうだ。
前戦まで1.2倍前後だった連勝チームが落ちたものである。
チーム〈グレナディア〉の代表者はオークのグレンブル・ウルク・オルグ男爵。
元のグレナディアの世界でも同じように奴隷を使役して、格闘大会を主催していたらしい。
格闘大会自体を観戦するのが趣味ではあるが、それ以上に自分の種族であるオーク以外の種族を死ぬまで戦わせるのが彼の性癖だ。
アーケンもその性癖が拡張したような〈アブソリュート・スレイブ〉。
奴隷に絶対の命令を与えるもので、その命令に従っている間奴隷の方も命令に関する能力があがるというものだった。
ただ、その他の身体能力は普通のオークより低いくらいだ。
ゴブリンのブラウン・ブラウンはそこそこの力を持った戦士だ。
太い棍棒がその主武器となるが、さらにその棍棒から〈アース・ブレイド〉という衝撃波を発するアーケンが使えるところが厄介だ。
カルンガンは両手に片手斧を構えたオーガだ。
オーガにしては筋力より器用さに秀でたタイプで、その両手での攻撃が危険なのはもちろん、〈グレート・シールド〉という前面を護るアーケンを持っている攻防に優れた戦士だ。
グレンブルのカーゴが設えてある巨木が木の精であるバラン・バラオウン。
グレンブルを護るだけでなく、その自在に伸縮する枝葉で広範囲を攻撃してくる。
さらにその葉は〈リーフ・カッター〉というアーケンによって操られ、刃となって攻撃してくる。
バランの枝に止まっているのがハーピーのパーピュレイ。
攻撃力がそれほどあるわけではないが、全体を上空から監視してグレンブルに伝えたり、上空から攻撃を仕掛けて場を混乱させる役割を担っている。
アーケンは〈コンフュージョン・ソング〉というのを持っているが聞いた全員に混乱をもたらすため、仕合で使用された経歴はないようだ。
そして最後がシャリアス。
人間の少女だが、グレナディアで生まれたときにはすでに孤児だったようだ。
奴隷としての生き方しかしておらず、暗殺者としても油断した相手を刺し殺す程度の技術しか持っていない。
また仕合の際には、今のようにグレンブルのそばにいてグレンブルが危険に陥った時には身体を張って食いとめるのがその役目だ。
それと……こんな情報まで知りたくなかったが、グレンブル以外の奴隷たちのストレス発散対策として、サンドバッグ代わりにも使われているらしい。
それを可能にしているのが、彼女のアーケン、〈リジェネレーション〉で、細かい傷はおろか四肢切断のような大怪我でも回復できるという代物だった。
チーム〈シルヴァ〉は先日のチーム〈バザンギア〉との仕合まで無敗だったが、その戦いで代表者のフィーナを喪い、チームの半分が離脱したという有様だ。
一方、チーム〈グレナディア〉には仕合前に相手チームに工作を仕掛けているのではないかという黒い噂は絶えなかったが、証拠はない。
正々堂々とこの100m四方程度のステージに降りたってきている。
当たり前だ。
前戦まで連勝していたチーム〈シルヴァ〉が相手とは言え、あまりにも戦力差が見えている。
離脱したシルヴァの3人は実力者だったし、代わりに加わった三薗雪夜とかいう人間はこれが初仕合となる剣を初めて持ったような青年だった。
シルヴァの代表者を継いだのもエルフの少女ファータ。
戦力になるのは、幾多の傭兵で名を揚げているドワーフのテラリアだけときてる。
もっともそのテラリアすら、人間基準で見れば中一程度の少女にしか見えないのだから、こんなバカらしい見た目の仕合はありえない。
正直に言って、観客たちはチーム〈シルヴァ〉の虐殺劇見に来ていた。
――と、観客全員が思ってるんだろうな。
と俺は思いつつ、テラリアと視線を合わせ頷き合う。