盈虚の華燭〜嫁巫女は双子のような義兄に溺愛される 作:朱河なつめ
格子の向こうの暗がりに、男が二人。
一人は白いYシャツとアイボリーのチノパン姿で、腰を抜かしたように座り込んだ二十代前半の青年だ。長身だがひょろりとした体つきに加え、色白なせいで軟弱そうな印象を受ける。
やや癖のある髪を撫でつけ、フレームの細い銀縁の眼鏡を掛けている。切れ長な目元や顔の造作は凌と兄弟のように似ているのに、彼のような精悍さや覇気は見当たらない。
青年は唖然とそよぐに見入っていた。頭から足元まで視線を往復させ、豊かに盛り上がった胸乳を凝視して生唾を飲み込む。
忽ちチノパンの股間にテントを張り、そよぐは心底青年――要人を軽蔑した。
「いやはや……これはこれは」
もう一人、驚嘆した様子で声を弾ませる男と相対する。
顔の輪郭を覆うように垂らされた墨色の髪。象牙色の顔は明るい満月のように白々しく、奇妙なほどつるりとしている。
三十代半ばから後半。切れ長な双眸は息子達や孫よりも目尻が垂れ下がり、下弦の三日月のように笑っている。
すらりとした長身に銀鼠色の羽織と二藍の着物を纏った姿は、呉服や骨董品などを扱う大きな商店の若旦那とでも言うべきか。これでとっくに九十歳を超えているのだから、最早化け物である。
「素晴らしい巫女姿だ。見間違えましたよ、植村そよぐさん」
かつて石ころのようにそよぐを見ていた眼差しは、小動物を丸呑みにしようと舌舐めずりする毒蛇の如く、肉欲を隠しもせず女體を搦め捕ろうとしていた。
女を屈伏させ、支配する事を極上の快楽と考える男の目だ。
浅ましく、汚らしい、許されざる罪人の目だ。
――恐れる価値もないと、仄暗い水の向こうで澄んだ女の声が囁く。
そうだね、とそよぐは胸中で頷いた。
どれほど視姦されようと、最後にこの男共は
「私を憶えていますか? まだ幼い貴女と一度だけお会いした事があります」
「……そうですね。十三年前、確かにお会いしました」
「祁月家の当主、祁月八尋と申します。貴方の桂男役である凌の――」
「血縁関係なら聞いています。でも、お……凌さんは貴方を一度も家族だとは言いませんでした。だから、あたしにとっても
八尋の笑みがパキンと凍りつく。
要人は信じられないものを見たように目と口をあんぐりと丸め、凌は若干頬を引き攣らせていた。もしかしたら、そよぐの足元から立ち上る霧のような冷気に気付いていたのかもしれない。
濡れたように光りながら流れ落ちる栗色の髪。
白く透き通った柔肌、清流のせせらぎを閉じ込めたような薄緑の大きな瞳。異国の血を感じさせる顔立ちは、愛らしくもどこか妖艶だ。
長襦袢に隠された蠱惑的な肢体は先程まで愛する男との情事に溺れていた残り香を色濃く漂わせ、それでいて何人も触れ難い高潔なヴェールに包まれているかのよう。
罪人を断罪する女神のように。
死を予言する古の巫女のように。
小柄な体から発せられる威圧感に、八尋の口元から笑みが消えた。
「全く……女は化け物だな。まるで別人だ」
「化け物? 貴方と一緒にしないで下さい」
仄暗い水面がさざめき、女の声がくすくすと笑う。
喧嘩を売ってどうすると窘められ、そよぐは眉を顰めた。
「あたしの姿を見てご納得頂けたのなら、どうぞお引き取り下さい」
八尋は爬虫類のように瞬くと、にたりと嗤った。
「まだ
「糞ジジイ、手前!」
言外に脱いで裸になれと迫ってきた八尋へ怒号を上げ、立ち上がった凌はそよぐを背に庇った。
「祭の間、巫女の素肌を見るのも触るのも許されるのは桂男役だけっていう決まりだろうが!」
「何、紋の盈ち虧けを確かめるだけだ。掟の範疇さ」
「巫山戯た事ばっかり抜かしやがって……ッ」
今にも八尋に殴りかかりそうな凌の腕を引き、そよぐは小さく頭を振った。
「大丈夫だよ、お兄ちゃん」
「だけど……っ」
「すぐ終わるから、我慢してね」
凌の背後から進み出ると、長襦袢の帯をしゅるりと緩める。
八尋が目を細め、要人が鼻息荒く身を乗り出した。
そよぐは片手で胸元の合わせ目を押さえ、裾がはだけないように注意しながら緩んだ帯の隙間から満月の紋をちらりと覗かせた。
「見えましたか? 見えましたね? はい、じゃあ確認が取れたならさっさと消えて下さい」
五秒数える隙も与えず、素早く帯を締めて前身頃を整えた。
祁月家の男達は硬直していたが、やがて要人が顔を真っ赤にして立ち上がった。
「お――おちょくりやがって! 何で全部脱がないんだよ!」
子供のように地団駄を踏む年上の青年を冷ややかに一瞥し、そよぐはピッと八尋を指差した。
「貴方の父親が
「は……はぁ!?」
「あたしの桂男役は凌さんです。凌さん以外の前で肌を晒す行為は、掟の範疇外になりますよね?」
要人は愕然と八尋を見つめた。
指差された八尋は沈黙したまま、ジッとそよぐを注視している。
そよぐは嫣然と微笑み――長襦袢の袂で口元を隠すと、首を傾げてみせた。
「祁月家のご当主とご嫡男が他の桂男役の巫女に掟を破るよう迫ったなんて里中に知れ渡ったら、どうなるのかしら?」
「なッ……」
要人は蒼白になってパクパクと口を動かしている。まるで溺れかけた金魚のようだ。
八尋は片眉を持ち上げた。
「私を脅しているつもりか?」
「いいえ。ただ、掟を盾に偉ぶって余所様を巻き込んだりする癖に、都合の良い解釈で掟を捩じ曲げるなんて……随分易いプライドだなって呆れているだけです」
男と女の間で火花が散る。
苛烈な睨み合いは、そよぐの前に立ち塞がった凌の背中に断ち切られた。
「そよぐの言う通りだ。当主なら当主らしく掟に従え」
「……ふ。随分虚仮にされたものだ」
八尋は噴き出すと、やがて岩屋に反響するほど大きな笑い声を上げた。
「お、お父さん?」
冷や汗を垂らしている要人の呼びかけに、片手で口元を押さえた八尋は機嫌良さげに喉を鳴らした。
「ああ――女にこれほど虚仮にされたのは凍鶴以来かな。いや、喜世か?」
凌の背中がギュッと緊張する。
そよぐは胸の痛みに目を伏せ、大きな背中に頬を寄せた。
「我が息子ながら伊織は誰に似たのか……透悟もお前も、あの愚息の血筋は悉く私に反抗的な女に骨抜きにされる。全く、嘆かわしい」
「……手前に似なくて心底清々してるよ」
曾孫の言葉に、曾祖父は穏やかに笑った。
「私は嫌いではないがね、伊織の目も、透悟の目も、お前の目も。小賢しい女共の目は実に腹立たしいが、同じ桂男でありながら私とは在り様の異なるお前達の、炭と化すまで憤怒と憎しみに燃え上がる目が――堪らなく愛おしい」
なんと歪み、捩じ曲がった愛情だろうか。
そよぐの胸に激しい嫌悪感が湧き起こった。
巫山戯るな、と仄暗い水面が嵐のように波立つ。
澄んだ女の声に、別の女の声が幾重にも重なって木霊する。
――この子は、この男は。
――わたし達のもの。
喉の奥まで込み上げる渇愛の叫びを噛み殺し、そよぐはするりと凌の腹に腕を回した。
「この人を愛するのは貴方ではありません。用が済んだのなら、お引き取りを」
「そうするとしよう。ああ、そよぐさん――君の友人の、我々の巫女に何か言伝はあるかな?」
二人の女友達の顔が思い浮かび、悲鳴を上げそうになった。
凌の掌が両手を押し包む。
涙を堪えながら首を横に振ると、凌が口を開いた。
「最初から更々伝えるつもりもない癖に、聞いてどうする」
「いや、何、私の巫女はすっかり従順になったが、要人の巫女は未だに友人の名を呼んでは助けを求めているらしくてね。いじらしい事じゃないか」
クツクツと喉を鳴らし、八尋が「なぁ」と要人に声を掛ける。
要人は大仰に溜め息を吐き、ブツブツと文句を垂らした。
「いじらしい? 耳障りでしかありませんよ。昨夜は髪の毛を引っ掴んで後ろから犯しながら尻を引っ叩いてやったら、『そよぐ、そよぐ』って泣いてこの女を――」
そよぐの腕を振り解いた凌は、拳を格子に叩きつけた。
「今すぐ、失せろ」
要人は情けない悲鳴を漏らすと、「お父さん、行きましょうッ」とそそくさと立ち去った。
「では二人共。祭明けの披露目の席で、また会おう」
八尋は笑いを含んだ台詞を残し、ゆったりとした足音を響かせて暗闇に消えた。
火明かりがふるりと揺らぐ。
曽祖父と従兄の気配が完全に遠ざかるまで闇を睥睨していた凌は、牢の中を振り返った。
「そよぐ」
名前を呼ばれたそよぐは、大粒の涙を零しながら膝から崩れ落ちた。
畳に倒れかけた体を抱き止められる。凌は必死に訴えた。
「お前のせいじゃない。そよぐ、お前も被害者なんだ」
「お――にい、ちゃ……」
「祭が終わるまで下手は打てない。余計な事は考えるな」
「でも……でも、でも……」
目を塞いで耳を塞いで、無意識に考える事を避けていた。
残された友人達が今どうなっているのか。自分が兄の愛に溺れている間、彼女達がどんなに絶望し、慟哭しているのか。
裏葉柳の瞳が涙の淵に沈む。消えかけた光を繋ぎ止めようとするかの如く、凌はそよぐに覆い被さって唇に噛みついた。
「ふぅ、ン――んっ!」
舌を絡めて唾液を泡立てるようなキスの乱暴さに、目を白黒させて凌の胸を叩く。
凌はそよぐの訴えを無視して長襦袢の帯を解いた。
八尋にも要人にも決して晒されなかった娘の素肌があっさり暴かれる。そよぐの非難をキスで塞ぎ、両手で双乳を強く握り潰す。
ぶしゅるッと母乳が飛沫き、そよぐは両目を見開いて体を震わせた。
「や、ああッ、やだ、お兄ちゃんっ!」
悲鳴を上げて凌の首に抱きつくと、青年は黒曜石のナイフじみた双眸を眇めた。
ぎゅうぎゅうと膨らみを揉みしだき、膨れ上がった乳首に指弾される。面白いくらい跳ねるそよぐの嬌声と肢体に唇を歪め、仰け反った白い喉に噛みついた。
「前にも言っただろ、そよぐ」
「な……ぁ、え?」
「お前は俺だけ見てればいい。俺の事だけ考えてればいい。お前の心を占めるのは、俺だけで十分だって」
呆然と震えるそよぐを畳に押し倒し、なよやかな太腿を外側へ広げる。
ぐずぐずに潤んだ陰裂を左手で割り開くと、見せつけるように舌を垂らして身を屈めた。
そよぐが「ひっ」と短く喉を鳴らす。
「いやぁッ、やだ、やめてお兄ちゃ……っ、ふあァァァァァァ――!」
凌はそよぐの膣に舌を突き入れ、じゅるじゅると愛液を啜った。
敏感な粘膜をねっとりと舐め回され、恥骨裏のザラザラした部分をつつくように刺激される。そよぐは髪を振り乱して泣き叫んだ。
「おに、ちゃん、おにぃ、ちゃっ、イヤ、ゅるして、ゆるしてぇ……!」
弓形にしなった女體の上で豊熟した乳房が淫らに揺れる。深い乙女色の乳首の先から吸汁がピュッと飛んだ。
凌の左手の指が陰裂の上で勃起した陰核を摘み、扱くように磨り潰す。
そよぐの腰が激しくわななき、幾度になるか分からない潮を噴いた。
「あ――ッ、お兄ちゃんっ、漏れる、漏れちゃう、い……やあぁ――!」
そよぐが無我夢中で叫ぶと、凌は陰部から顔を上げた。
しょわぁ……と、生温い小水が浮き上がった尻たぶを伝い落ちる。
凌の眼前で粗相をしたショックのあまり咽び泣いていると、濡れた陰裂にぴとりと亀頭部が押し当てられた。
信じられない気持ちで瞠目すると、凌が仄かに笑んで剛直を胎内まで突き刺した。
「……ッ、は、ひゅ!」
カクカクと震える体を抱き寄せられる。
凌はそよぐの足を腿で押し開き、より深く腰を密着させた。
「ハ……そよぐの中、熱……」
「な、なんでっ……三回も、出したの、に」
「ごめんな。多分、そよぐのおっぱい飲んだからだと思う」
ぐりゅんと円を描くように胎内を揺すられ、そよぐは掠れた嬌声を漏らした。
凌は緩慢に子宮の奥底を小突きながら説明する。
「そよぐのおっぱいは変若水だから、即席の滋養強壮効果が出たって言うか……でも流石に、四回が限界だな」
「そんなぁ……ッ」
切なさが募るようなピストンに大きく喘ぐ。凌が低く屈むように身を乗り出し、そよぐの唇を塞いだ。
「んッ、あ……お兄ちゃんっ」
助けを請うように凌の首に腕を回すと、彼は瞳を細めて尋ねた。
「俺の事、嫌いになった?」
「え」
「俺に抱かれたら俺の事しか考えられないだろ。だから止めてって泣いて嫌がるお前を犯してる」
ずんッと子宮を押し上げられて息が詰まる。
そよぐの唇を舐め、凌は仄暗い眼差しを向けた。
「酷いだろ? でも、俺はこういう男だよ。そよぐの全部独り占めして、心の一欠片すら俺以外の誰にも渡したくない」
言葉を失うそよぐを見つめ、凌は表情をぐしゃぐしゃと歪めた。
「そよぐ」
漆黒の双眸から汗に混じって涙が零れ落ちた。
「好きだ」
「ごめん――良い兄ちゃんになれなくて」
「お前が好きなんだ」
ぽた、と唇に凌の涙が一滴落ちた。舌先に滲む微かな塩辛さに、ドッと心臓が跳ね上がる。
「好きだよ、……そよぐ」
眉根を寄せて涙を堪えようとする凌の頬を両手で撫でる。
凌の瞼が持ち上がり、潤んだ瞳にそよぐが映り込む。
その事実が嬉しくて、凌に愛されて喜ぶ自分が浅ましくて、そよぐは泣き笑うように眉尻を下げた。
「嫌いになんかなれない、よ」
顔を引き寄せて軽く口づけると、凌の屹立がグッと硬度を上げた。
両足を筋肉質な腰に絡め、屹立を奥深くまで招き入れる。
凌はそよぐの顔の横に両肘を突き、苦しげに吐息を震わせた。
「そよ……ぐ」
「好き」
ちゅ、ちゅ、と拙いキスを重ね、熟れた乳房を押しつけるように身を寄せる。
「大好き」
凌が切羽詰まった様子で舌を押し込んできた。思わず漏れた甘い声を拾い上げ、嬉しげに目を眇める。
「ンッ、ふ……お兄、ちゃ……あッ!」
口腔を撫で回され、舌を搦め捕られてぬろぬろと舐られる。
舌の裏の筋を舐め上げられると、気持ち良さのあまり膣が陰茎を締めつけた。
凌が苦味走った表情を浮かべた。
子宮を柔らかく捏ねるようにぷちゅぷちゅと亀頭部でつつく。
「ふ――、ぁ、んぅっ」
そよぐは切れ切れに啼きながら、凌の動きに合わせて快感を追い求めるように腰をくねらせる。
我を忘れて夢中で男の体を味わう妹の痴態に、凌はとろりと微笑んだ。
「可愛いな、そよぐ」
「ひあっ、あッ、お兄ちゃんっ」
耳元で囁かれて、舌先で耳殻の凹凸を舐め回される。
生々しい水音が鼓膜を刺激し、腰に響くような声で睦言を吹き込まれて下腹部がきゅんきゅん疼く。
「凄ぇ可愛い。好きだよ、そよぐ」
「んッ、ああ、そよぐもっ、そよぐも好き……お兄ちゃんが好きぃ!」
離しはしないとばかりに腕と足を巻きつけると、凌はそよぐの背中を抱き締めてガツンッと腰を打ちつけた。
骨に響くほど強く子宮を衝かれ、そよぐは甲高い悲鳴を上げた。
「あぁぁぁっ! おにい、ちゃ、ンッ、おぁ、ああァ――ッ」
凌は荒い息を吐きながら何度もそよぐの胎内を抉る。
快楽の波間で兄を呼ぶそよぐの唇に噛みつき、全て食い尽くそうとするかのように力任せのキスをした。
そよぐは目を閉じて、凌の猛々しい愛を甘受した。
ごづッ! と屹立が胎内の深奥に突き立てられる。
凌の腕の筋肉が隆起し、身震いした刹那、煮え滾るような精液がぶち撒けられた。
青年の腕の中で娘の裸身が弱々しく痙攣する。そよぐの四肢がぱたりと畳に落ちると、凌は汗の滴る面を上げた。
そよぐは恍惚と潤んだ瞳を宙に投げかけていた。凌がゆっくりと陰茎を引き抜くと褐色の睫毛がはためき、甘く掠れた啼き声が零れた。
凌の形に押し開かれた陰裂から白濁色の粘液がごぷりと溢れ出る。
そよぐの乳房が絶頂の余韻にうねると、後から後から流れ落ちていく。
凌は浅く浮き沈みする青白い腹を撫で、満月の紋に唇を落とした。
「はぁ、お兄ちゃん、ぁあッ」
ちろちろと舌先で紋をなぞられ、精液をたっぷりと孕んだ子宮が戦慄した。
凌の舌が臍の窪みに溜まった汗を掬い取る。そよくが上擦った声を漏らすと、高く突き出されたHカップの双乳がふるんっと揺れた。
凌は仄白い乳房の麓に口づけ、V字の谷底をつう……っと舐め上げた。
「ンぅ――、あ、ひッ、ふあァァァ……」
両の乳首からバストラインに沿って垂れ落ちる乳汁を子犬のようにぴちゃぴちゃと舐め取る。
時折悪戯な舌先が乳輪の縁を掠め、そよぐは嬌声を振り絞った。
丸々と実った乳房を涎まみれにした凌は細い首筋を上と辿り、一つ笑って清艶な唇にむしゃぶりついた。遠慮なく舌をそよぐの口腔に押し入れ、愛しい女の唾液を啜る。
「んぐッ……むぁ、お、にぃちゃ……ふぅ」
じゅぷじゅぷと掻き混ぜられた唾液が口の端から溢れて頤を濡らす。
長引く息苦しさに眉根を寄せると、凌は漸く唇を離してそよぐの顔を覗き込んだ。
凌の口元がうっすら笑う。
「そよぐ、酔っ払ったみたいに顔、真っ赤だぞ」
指の背で頬をそうっと撫でられる。
くすぐったい感覚すら快楽の呼び水になりそうで目を伏せると、凌の掌が下腹部にひたりと置かれた。
「俺はしつこい男だから、これから何度だって体で教えてやるよ」
「え……」
「お前の好きな男が、どれくらいそよぐって言う女に執着しているのか――お前が俺以外の事を考えられなくなるまで、何度でも」
獲物を追い詰める猟犬じみた獰猛な眼差しが微笑んでいる。
そよぐの
「何があっても離さないって、言っただろ」
脅迫めいた懇願に、そよぐは涙ぐんで頷いた。
しなやかな女の腕が男の肩や背中に絡みつく。
きっと自分は死ぬまで凌とのキスしか知らずに生きていく。その多幸感と罪深さに溺れながら、そよぐは心から囁いた。
「愛してるの――誰よりも、貴方だけを」