盈虚の華燭〜嫁巫女は双子のような義兄に溺愛される 作:朱河なつめ
蜩が鳴いている。
夏という命が溶け出して、夕暮れの日差しになって頬に滴り落ちる。
そよぐは薄目を開いた。
蜩の声に重なって、風鈴の音が侘しく響く。
晩夏の夕風は生温く、寝汗でべとつく前髪をそよそよと撫でていく。
何時の間にか濡れ縁で転寝をしていたらしい。
頭の下に筋肉質な太腿が枕代わりに挟み込まれていた。横向きの状態から仰向けに寝返ると、喉仏がくっきりと浮いた男らしい首が見えた。
「目が覚めたのか?」
そよぐが起きた事に気付いた凌は、妻の顔を覗き込むと黒曜石のナイフのような双眸を細めた。
右頬にうっすら浮かぶ銃創が西日に仄白く光っている。そよぐはぼんやりと右手を伸ばし、指先で傷痕をなぞった。
「そよぐ?」
「……おかえりなさい。何時帰って来たの?」
「ただいま。三十分ぐらい前かな。爺ちゃんは住職と飲んでくるって事になって、俺だけ先に帰って来たんだ」
凌はくすぐったそうに笑うと、そよぐの指先を捕らえると唇を寄せた。
掌に柔らかくキスをされ、思わず首を竦める。凌は楽しそうに喉を鳴らした。
そよぐはキュッと眉根を寄せた。
「起こして良かったのに」
「あんまり気持ち良さそうに寝てるからさ。この一週間、引っ越しやら何やらでバタバタして疲れてるだろ」
もう片方の手で額を撫でられる。そよぐはむうと唇を尖らせ、凌の膝から起き上がった。
黄昏に染まる濡れ縁に腰掛けた凌は、袖捲りした白のYシャツにネイビーのチノパンという珍しい服装だった。沓脱石に投げ出した素足は下駄を突っ掛けていて、何だかちぐはぐだ。
新しく世話になる菩提寺へ伊織と共に挨拶へ伺い、真っ直ぐ帰宅したらしい。二十歳前の夫は酒の付き合いはまだ出来ないので、早々に御役御免になったのだろう。
そよぐは寝乱れて緩んだリボン代わりのスカーフを解いた。髪を結び直そうと思ったが、面倒臭くなって手櫛で寝癖を整えるに留めた。
腰を通り過ぎるほど長い栗色の髪が夕日に艶めきながら流れ落ちる。
水縹の地に白い白粉花が大きく描かれた柄の浴衣は喜世の見立てで、文庫結びに締めた帯は明るい梔子色だ。哭女の眷属として晴れて現世への残留が許された義祖母は、専ら孫の嫁を着せ替え人形にして楽しんでいる。
透悟は男の子で可愛い格好をさせられなかったから、というのが喜世の言い分である。孫夫婦にタブレットのレクチャーを受けて使い方をマスターするや否や、喜世はネットショッピングにどっぷりハマった。
当初は家電や家具、日用品を買う程度だったが、衣料品も購入出来る事に気付いてからは何故かそよぐに衣服を貢ぐようになった。伊織は(死霊なのに)生き生きとしている妻をにこやかに見守り、凌は凌で祖母に便乗してそよぐに着せたい衣服をポチる始末だ。
普通は家計に影響が及ぶのではないかと心配になる所だが、今の伊織と凌は祁月家の資産を引き継いだ大地主なので経済的にかなり裕福だ。祁月家が所有していた土地や不動産の半分近くを高く売り払えたので、お釣りが来るほどらしい。
――観測史上稀に見る超大規模な土石流が発生し、直撃を受けた沢鳴集落が一夜にして消滅してから約一ヶ月。
周囲の地形を激変させるほどの土石流の被害は甚大で、集落の住民・外部からの来訪者を合わせて死者数は百名を超えた。
生存者は僅か五名。うち三名は集落の住民で、残る二名は民俗学のフィールドワークにやって来ていた女子大生だった。
二名の女子大生の他にも引率の大学講師一名、男女の学生が一名ずついたが、捜索活動は難航していると報道メディアは伝えている。大半の住民同様、生存は絶望的とも。
植村そよぐというかつての自分の名前をニュース番組やネット記事で見かける事に、今ではすっかり慣れてしまった。顔写真が流出する事も覚悟していたが、不思議と一枚も晒されていない。
今のそよぐの名前は『
嫋は祁月家の遠縁の娘で幼くして孤児となり、親類である伊織に引き取られて彼の孫の凌と共に育った。集落の壊滅後、当主を継いだ伊織は一族を襲った不幸から姓を缺月と改めた。
元々恋人同士だった凌と嫋は九死に一生を得た事をきっかけに、祖父の強い後押しも得て正式に入籍する運びとなった――と言うのが、伊織と凌が用意した缺月嫋の
祁月家は古くから国の中枢と繋がりを持ち、存在しない人間の戸籍を新たに作る事など朝飯前らしい。新しい名前と現在の顔写真が入ったマイナンバーカードを凌から手渡された時には、思わず顔が引き攣ってしまった。
漢字表記に変えたとは言え読みがそのままでは警察に疑われるのではないかと思ったが、現在まで捜査の手は及んでいない。あるいは
いずれにせよ、そよぐの第二の人生は恙なく始まった。
暫くホテル暮らしが続いていたが、祁月家が所有していた物件の一つへ一週間前に入居した。隣県の山麓部に建つ二階建ての古民家で、何処となく下家を彷彿とさせるモダンな木造の邸宅だ。
伊織によれば先々代の当主だった恰が作った別邸なのだが、これまで殆ど見向きもされていなかったという。管理はしっかり行われていたらしく、十年程前に水回りの新調やエアコンの設置等を済ませていたお陰でスムーズに生活を始める事が出来た。
荷解きや諸々の手続き、近所への挨拶回りが粗方終わり、伊織の希望で缺月家の墓を新たに作る事になった。集落にあった祁月家の墓も哭女ヶ淵も土砂に埋もれ、跡形もなく消えてしまったからだ。
喜世によれば、哭女ヶ淵に沈んだ死者の亡骸は哭女の眷属となった時点で泡沫と化して水に溶けてしまうらしい。「この世の何処にも骨の欠片一つ残っていないけれど、伊織さんが亡くなった後も一緒に眠れる場所が出来るなんて幸せだわ。凌も、透悟と凍鶴さんのお墓をきちんと作ってあげたいって思っていたでしょうし」と、義祖母は嬉しそうに笑っていた。
そういえば、喜世の気配を家の中に感じない。伊織を心配して夫の許へ向かったのだろうか。
邸宅を取り囲むこんもりとした庭木の葉叢が夕風に揺れる。
風鈴の音色が緑陰に鳴り響き、風に流れた栗色の髪を凌の左手が掬い取った。
「……髪の毛、また伸びてないか?」
「うん、封印が解けた後に。哭女様の髪が長いから、それに引っ張られたみたい」
「へえ」
凌の声に面白くなさげな色を帯びる。
そよぐは苦笑すると、凌の膝の上に乗って向かい合う形で横座りをした。
「お兄ちゃんは、この髪型嫌い?」
「そんな事ないよ。綺麗だし、そよぐに良く似合ってる」
凌の指から髪の毛の一房がするりと滑り落ちた。
「長い髪でいると……植村のご両親を思い出して辛くないかと思ったんだ」
漆黒の双眸に映り込んだ自分の姿に、そよぐは睫毛を下向けた。
――凌の前には女がいた。植村家で暮らしていた頃とは別人のような、少女の殻を脱ぎ去った女が。
Yシャツの胸元にぴたりと頬を寄せると、自然な動作で抱き寄せられた。
夏の翳りが濃くなるほどに少年期の名残は削ぎ落とされ、そよぐを抱く人は見知らぬ男の顔をするようになっていった。
「そよぐ?」
「辛くはないよ、お兄ちゃんが側にいてくれるから。だた――少し寂しいだけ」
逞しい腕に凭れるようにして上目がちに見つめると、凌ははたりと瞬いた。
「大人になるって寂しい事でもあるんだなって」
「ああ……そうかもしれないな」
そよぐの言葉に頷き、凌は左手を妻の頬に添えた。
「俺も寂しいけど、そよぐがいるから平気な顔してられるんだよ」
「『お兄ちゃん』だから?」
「そう。そよぐの兄貴だからって気合いで踏ん張ってきたんだ、昔から」
凌は柔らかく喉を鳴らし、こつんと額を触れ合わせた。
「冗談抜きでそよぐがいないと駄目な人間なんだよ、俺は」
「……凍鶴さんの言った通りだ」
「お袋が?」
「あたしが先に死んだら、必ず凌ちゃんも後を追いかけるって」
凌の眼差しが仄暗く烟る。
「そうだよ」
笑いながら囁く声の熱に背筋が震えた。
そよぐはぱちぱちと睫毛を上下させた後、神妙に口を引き結んだ。
凌よりも長生きしてねと義母から託された責任は予想以上に重大だった。凌の左手の甲に右手を重ねて力強く断言する。
「安心して。一秒でも長く生きて、しっかりお兄ちゃんを看取って死ぬから!」
凌は軽く噴き出した。
「努力じゃなくて約束なんだ?」
「だってお兄ちゃん、本気じゃん……」
そよぐは嘆息すると、左手で凌の右頬に刻まれた傷痕をなぞった。
「紫葡ちゃんと海咲ちゃんの体を復元する時も、自分の寿命を代償にしろって絶対譲らなかったじゃない」
そよぐの脳裏に苦い記憶が甦る。
二人の友人は哭女の加護によって傷一つなく土石流を逃れたものの、暴力と快楽によって身も心も深く傷つき、淫蕩で意志薄弱な巫女に変わり果ててしまった。
そこで哭女は、変若水によって彼女達を沢鳴集落を訪れる以前の状態に戻そうと提案した。
そもそも変若とは、古語で『元に戻る』という意味を持つ。変若水による若返りは、対象者の肉体や精神をある一定の状態まで
――獣の如き男共に汚された事実そのものが消えると考えるが良い。子種の滓の一滴も残さず清め、破瓜の傷も元通りに癒える。無垢な
――同時に、辛酸の記憶も洗い流してしまえば宜しい。時が経てば忘れてしまうような、恐ろしい夢を見たという程度にな。
但し、と哭女は冷淡に付け加えた。
――単なる水ではなく、変若の力を振るうには代償が必要だ。我が
そよぐは勿論自分の命を削って代償を払うつもりだった。
だが、凌は頑としてそれを許さなかった。
「桂男の末代である自分の命で贖うべきだって言い張って……これから先も変若水が必要な事態になったら自分の寿命から持っていけって、ちゃっかり哭女様に約束させちゃうし」
「哭女様だって納得してただろ。俺の方が断然寿命は長いし、憑坐であるそよぐへの負担が軽い方が効率が良いって」
両目を眇めた凌は首を傾げた。
そよぐは顰めっ面で夫を睨んだ。
「お兄ちゃん、あたしと同じタイミングで死ぬ為に緩慢的な自殺を試みてるでしょ」
「平均寿命までは生きるつもりだから前向きだろ?」
にっこり微笑む凌に、そよぐは鼻の頭に皺を寄せた。
「六十年かけて心中を計画しないでよ……」
「初めて恋した女に狂うのが桂男の性なんだってさ」
凌は楽しそうに答えながら妻の唇に噛みついた。
そよぐの右手の中から抜け出した左手が浴衣の胸元に滑り込む。ブラジャーのフロントロックを器用に外した。
一瞬の解放感の後、乳房がふるんっと弾む。
「ふッ……ンぅ!」
舌先で軟口蓋をくちゅくちゅと舐られて喘いでいると、右の膨らみを大きな掌で押し包まれた。もっちりとした重量感を堪能するように揉みしだかれ、そよぐは目を瞠った。
ゴツゴツと節榑立った指がやんわりと乳肉を握り潰す。
ぷるりと膨らんだ乳輪を指と指で絞られ、母乳を放り出すように指で挟み込んだ乳首を扱かれる。
「ん、ひッ……!」
嬌声を漏らす唇を割って舌が喉の奥まで押し入ってきた。
身動いだ拍子に凌の太腿を跨ぐ姿勢になり、水縹の裾が盛大に捲れ上がる。
健康的に程良く肉づいた娘の両腿が露わになった。凌は右手を裾の内側に潜り込ませると、ブラジャーと揃いのショーツに包まれた桃尻を撫で回した。
薄いレース素材の布地を横にずらし、尻の割れ目を伝って長い指が陰裂の奥へと侵入する。あっと言う間に二本の指を咥え込む羽目になり、そよぐは小刻みに跳ねた。
「ンぅ――っ、は、ふぅぅ……ッ」
二本の指で泥濘の浅瀬をずぷずぷと掻き回され、そよぐは短く潮を噴いた。
恥骨の裏側もポルチオも触られていないに、陰核に火が点いたように熱い。下腹部で燻る快感が愛液になって溶け出してくる。
右の乳房ばかり愛撫され、左の乳首が火傷したように腫れぼったい。そよぐが切なく腰をくねらせると、凌はすかさず舌を搦め捕ってぢゅるッと吸い上げた。
「――ッ、ひぅあぁ!?」
電流に似た快感が背筋を走り抜けた。
潮が迸ると同時に小水が滴り落ち、カクンと膝から力が抜ける。
ずるずると凌の胸に凭れ掛かる。Yシャツを握り締めて震えていると、カチャカチャという音が聞こえた後に腰を左右から鷲掴まれた。
「そよぐ、掴まって」
「は……ぇ?」
促されるまま両手を凌の首に回す。尻が浮き上がり、ショーツを横にずらした状態で怒張した陰茎に刺し貫かれた。
「ああぁぁぁッ!」
亀頭部がぬぷんッと子宮口を穿つ。胎内の深奥を突き上げられ、そよぐは海老反りになった。
裸足の爪先が突っ張ったまま痙攣した。Yシャツの肩にしがみついて唇をはくはくとわななかせていると、浴衣の胸元を左右に割り開かれた。
はちきれそうにたわわな乳房が汗と母乳を散らしてまろび出る。
祠が壊れてから更にIカップへサイズアップした双乳はまろやかな椀形を維持しながら、初々しくぷるぷると弾んでいる。乳房の大きさに対して控えめな乳輪と乳首は乙女椿の花弁のようなピンク色に潤み、呼吸に合わせて悩ましく揺らめいていた。
汗の玉が伝い落ちる双球を凌の両手が掬い上げ、もったりと捏ね回す。
ツンと尖った乳嘴を強く指弾されたそよぐは、声も出せずに絶頂した。
屹立を根元まで咥え込んだ陰部から小水が垂れ落ちる。ぷくっと膨らんだ乳輪を指の腹で撫でさすられて乳首を転がされると、膣がきつく陰茎を食い締めた。
「ふあっ、ひ、ぁ、う……んゥ――ッ!」
両足を凌の腰に巻きつけ、Yシャツの襟元を皺が寄るほど握り締めて身悶える。乳房を揉まれては乳頭部をやんわりと愛撫され、頭が焼き切れそうな焦燥感に視界がチカチカと明滅する。
連続絶頂によがるそよぐを熱っぼく見つめながら、凌は両の乳首をギュッと捻り潰した。
「やああああああああああああぁッ!!」
乳汁と潮をシャワーの如く噴き上げ、そよぐは甲高く啼いた。
雪を欺くなよやかな四肢が激しく凌に絡みつき、一拍置いて弛緩した。
ぐったりと凌の胸板に突っ伏す。挿入されたままの陰茎がますます子宮を突き上げ、余韻というには強烈な絶頂が細波のように押し寄せてきた。
「んぅ、ああ……ひッ、おにい、ちゃ……っ」
栗色の髪を振り乱して啜り泣いていると、凌が顎に手を添えて顔を上向かせた。
貪るような深い口づけに見開いた瞳から涙の粒が転がり落ちる。舌先で粘膜の隅々まで舐め回され、下腹部が戦慄した。
凌の左手がぐしょ濡れのショーツを掻き分け、ビンビンに勃ち上がった陰核を探り当てた。
「ぁ、ンッ、ふぅ――っ!?」
乙女椿の花芽のような陰核を指の腹で転がされ、ぷにぷにと優しく押し潰される。そよぐは身を捩って責め苦から逃れようとしたが、もう片手で左の乳首を摘み上げられて柳腰を激しくくねらせた。
Iカップの淫乳がパンッパンッと音を立てて飛び跳ね、女體が波打つほど剛直で子宮をつつき回される。陰核と左の乳首をねちっこく愛撫されながら口腔を犯され、そよぐは断続的な絶頂に短い気絶を繰り返した。
「は、ぁ……ん、ふ……」
痙攣しっ放しの手足が暫くして脱力する。凌は妻の体を抱え直すと、ごりゅんッと子宮を揺すり上げた。
「あひッ!?」
意識を取り戻したそよぐは目を白黒させた。
ずちゅずちゅと亀頭部で胎内を突かれ、内腿が激しく痙攣して潮が迸る。でっぷりと熟んだIカップの双乳が重たく波打ち、母乳を飛沫かせた。
「やぁぁぁぁぁぁッ! おにぃちゃん、やだっ、おなかずんずんしちゃだめぇ……ッ!」
そよくは泣きじゃくって頭を振るが、凌の腰の動きは止まるどころかより深く胎を抉るようなものへと変わっていった。
そよぐの唇から甲高い嬌声が上がる。凌は両目を眇め、妻の耳元で優しく囁いた。
「気を付けないと、外まで聞こえるぞ」
意地の悪い指摘に唾を飲んだ。
二人がいる濡れ縁は一階の奥の和室に接し、玄関からは遠い位置にある。邸宅は木立に囲われ、更にその外縁に芝生の庭が広がっているので、近隣の民家とはそれなりに離れている。
しかし、日も沈み切らないうちに軒先で夫に抱かれている痴態を誰かに気付かれる可能性はゼロではない。例えば宅配の配送業者がまさに今、玄関にいたとしたら――。
キュウッと膣が陰茎を締め上げ、凌が籠もった息を吐いた。
前後に揺さぶるように腰を動かされ、狭い子宮を押し広げるように圧迫される。
「ふ、あぁぁ……ッ」
必死に声を堪えようとするが、前後の律動によって鋭敏な陰核を押し潰されて甘ったるい苦鳴を響かせてしまう。
凌の硬い陰毛とこすれ、炙られるような快感が沸き上がった。激しく揺れ動く乳房が張り詰め、痛いほど凝った乳首が苦しげに母乳を吹き零す。
「ん――、ひっ、あぁ……はう、あッ」
そよぐは両手で口元を押さえ、ぽろぽろと落涙した。凌に左右からがっちりと腰を掴まれている為に逃げ場はなく、とことん追い詰められて女悦に喘ぐ姿を視姦される。
「はッ……そよぐ――」
「ひ、アッ!?」
右の首筋に熱い呼気が吹きかかったかと思うと、がぶりと噛みつかれた。
背骨が軋む勢いで抱き締められる。
子宮の最奥に切っ先がめり込むほど幾度も屹立を打ちつけられる。
「ふあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
啼きながら絶頂を駆け上ったそよぐを追いかけ、凌は喉の奥で呻くと身を震わせた。
びゅるびゅると大量の精液が胎内に放たれる。隙間もない抱擁を受けながらグリグリと陰茎を押し込まれ、そよぐは陶然と全身を震わせた。
打ち上げられた魚のように跳ねていた両足がくたりと弛緩すると、溢れ出した小水が太腿を伝い落ちていった。
噛まれた首筋が熱を帯びて疼く。ねろりと舌で歯型を舐られたそよぐは、掠れた喘ぎ声を漏らした。
ぢゅ、ぢゅ、と喉元を強く唇で吸われた。背中を反らして両腕を凌の首に回すと、大口を開けた夫に口唇を食まれた。
「ンぅ、は……おにい、ちゃん……あッ」
むしゃぶりつくような接吻に溺れ、陰茎がしつこく胎内を掻き混ぜる感覚にオーガズムが終わらない。膣が引きつけを起こしたように小刻みに収縮し、締め上げられた剛直が精液の残滓を名残り惜しげに吐き出す。
射精が漸く終わると、凌は溜め息を零して唇を離した。
すっかり茹で上がってぐにゃぐにゃになった妻の体を右腕で支えると、左手でシュッと梔子色の帯を解いた。
水縹の浴衣が滑り落ちて、中途半端に上下の下着を引っ掛けた女體が晒される。冷えた夕風が火照った素肌を舐め、そよぐは微かに喘いだ。
子宮を占拠している剛直が瞬く間に硬度を取り戻す。ゆるゆると突き上げられ、そよぐは涙が積もった睫毛を大きく持ち上げた。
凌が眼差しにどろりとした熱情を滾らせて微笑む。
「まだ足りないだろ?」
そよぐは眦を赤く染め、言葉よりも雄弁に夫の肉棒を媚肉で巻き締めた。
凌の左手が浴衣を取り払うと、ばさりと後ろへ放り投げた。