盈虚の華燭〜嫁巫女は双子のような義兄に溺愛される 作:朱河なつめ
そよぐが太陽の下から連れ去られて四週間近く経つ。
常に暗闇と湿気に閉ざされた地下牢で正気を保っていられるのは、巫女となった事で何らかの力が働いているからなのだろうか。
――いや、自分は既に狂気の域へ足を踏み入れているのもしれない。
「は、あぁ、んッ……ひ、ぁあ、アッ」
古びた畳の上で四つん這いになったそよぐは、背後から挿入された凌の陰茎に激しく体を揺さぶられていた。
凌の腰が尻に打ちつけられる音、犬のように荒い息遣い。
大きな両手ががっちり腰を掴み、怒張した剛直でより深く胎内を穿たれる。
白い長襦袢は上も下もはだけて腰回りに纏わりつき、豊かな栗色の髪だけが頼りなく裸身を覆い隠していた。
監禁された当初に比べて肉感が増した体つきは、同時に健康的なしなやかさも感じさせた。ほっそりとした腰のくびれと、驚くほど対照的な二つの乳房。
重力に引っ張られて下向いてなお美しい球形を描く膨らみは、揺れに合わせて重量感たっぷりに飛び跳ねていた。ツンと勃起した乳首と小ぶりな乳輪は濃い乙女色に染まり、火明かりにぷるりと艶めいている。
監禁されて半月程度で他の部位の変化は止まったのに、胸はどんどん成長し続けて今やHカップである。「もう巨乳じゃなくて爆乳だな」と乳房を揉まれながらニヤつく凌に言われた時には、思わず無言で頭を引っ叩いてしまった。
凌によると、巫女は桂男役とまぐわえばまぐわうほど総じて胸が豊かになるらしい。巫女の原型である哭女のバストを思えば「成程」と納得出来た。
四週間足らずでAカップからHカップになるなんて、現実に考えれば疾患を疑うだろう。急激な変貌を当然のように受け入れてしまっているあたり、正常な思考や感覚はとっくに失っているのだ。
――何しろ、この身には荒ぶる水の女神がこの身に宿っているのだから。
「んひぃ!?」
がちゅんッと一際重く子宮を衝かれ、そよぐは泣き濡れた瞳を瞠った。
「こーら。今、俺以外の事考えてただろ?」
諸肌を脱いだ凌が意地悪く笑って背中にのしかかってきた。
右手一本で自重を支え、左手で右の乳房を鷲掴む。
掌で膨らみを掬い上げるように揉みしだかれ、指先で敏感な乳頭部を扱くように押し潰される。散々蕩かされた女體は忽ち絶頂へ駆け上り、接合部から潮が迸った。
わななく太腿を小水が伝い落ちていく。
「すっかり漏らし癖が付いちゃったなあ、そよぐ」
「お、にいちゃんの、せいで、しょ……ッ」
「はは、そうだな」
凌は低く喉を鳴らし、むっちりと膨らんだ乳肉を揉み潰した。
「こんなにおっぱいデッカくなれば、そろそろ出るかもな」
「何が……」
「何って、母乳」
「へ」
何を言い出すのかと振り返ると、凌はいやらしく目を眇めた。
「巫女の身に溜まった変若水は、体液として排出されるって説明したよな?」
「聞いた、けど」
「主に涙、汗、唾液……血液は命の危険が伴うし、愛液や小便は衛生的な理由で避けがちだ。で、一番効率良く摂取出来るのは……母乳なんだよ」
「ふあっ、やァ――ッ!」
右の乳首をぐりぐりと捻り上げられ、そよぐは甲高く啼いた。
きゅうきゅうと膣が陰茎を締めつける。凌は熱の籠もった息を娘の項に吹きかけ、細い肩に口づけた。
「月の紋が盈ちると、巫女は妊娠していなくても常時母乳が出る体質になる。母乳は巫女の身に変若水が満ちた証なんだとさ」
「お、おっぱい出ちゃうなんて聞いてない!」
「あー……ごめん。言うタイミング逃して、そのまんまだったかも」
凌の左手が脇腹へ移動した。
彼の屹立を咥え込んでいる子宮を真上から撫でさする。こそばゆい愛撫に、そよぐの腰がビクビクと跳ねた。
「お前の紋、もうほぼ満月の形だろ?」
「ンッ、ふぅ……そ、だけど……っ」
「おっぱい沢山出るようになったら、俺が毎日責任持って飲んでやるから」
「ば――ばか! お兄ちゃんの、馬鹿!」
涙目で詰るそよぐの口を笑って塞ぎ、凌は容赦なく肉棒を妹の胎に叩きつけた。
「アァ、ひっ、あ――あッ、ンぁ、あああぁぁ……!!」
嵐のような抽送に翻弄されていると、不意に両手を掴まれて後方へ引っ張られた。
「やらァァァァ!? おにぃちゃ、あ、ンッ、ふあァァァァァァァァァッ!」
自然と背中が反り返り、胎内を突き上げられる角度が変化する。
亀頭部がポルチオを通過する度に膀胱を圧され、そよぐの喉から泣き濡れた嬌声が迸った。
「だめっ、だめぇ、ゃだ、あ、ぁ、おッ、ぉしっこもれちゃ、あ、ぁぁぁぁぁぁぁ……ッ!!」
大量のカメラのフラッシュを浴びせられたように目の前が真っ白になる。
凄まじい勢いで小水が溢れ、間欠泉のような潮が何度も噴き上がった。
Hカップの双乳がぶるんぶるんと揺れている。はちきれそうな乳袋は重く張り詰め、振り回される乳首は益々固く凝った。
――お兄ちゃんに思いっきり揉んで、嬲って、捻り潰して、吸ってほしい。
下腹部が痛いほど収縮する。凌が喉の奥で呻き、亀頭部を子宮の最奥にめり込ませた。
「そよぐ……っ!」
「は――ひゃ、あぁ、アッ、うぁああ……」
今日はこれで二回目の射精だと言うのに、怒濤のような勢いで精液が胎内に溢れ返る。
ごぷッと水音が漏れ、白濁色の筋が幾つも太腿の上に延びていく。
凌に抱きかかえられたそよぐは、分厚い胸板に凭れ掛かって陶然と視線を彷徨わせていた。仄かな桃色を帯びた乳房が呼吸に合わせてぷるぷると震えている。
たっぷりと子種を吐き出した屹立が膣から引き抜かれた。
凌はその場に座り込むと、弛緩したそよぐの体を横抱きにして膝の上に乗せた。
「……平気か?」
労るように左手で右頬を撫でられる。凌の右肩に頭を寄せたそよぐは、白濁色まみれの内腿をこすり合わせた。
火照りが冷めるどころか快感が燻り続ける双乳を両腕で抱え込む。
深く寄せられた谷間に、凌が双眸を眇めた。
「そよぐ?」
返事を促されるように親指の腹で下唇をふにふにとつつかれる。
それすら快感に繋がって吐息混じりに喘ぐと、やんわりとキスをされた。
「ん――ふ、あ、お兄ちゃん……ッ」
兄の左手を両手で縋りつくように握り締める。
凌は烟るような眼差しで妹の唇を味わいながら、娘の繊手からあぶれた指先を無防備な胸元へ伸ばした。
「ひァん!?」
右の乳輪をスリスリとなぞられ、そよぐは声を引っ繰り返した。
肉厚な乙女椿の花弁のようにぷっくりと盛り上がった乳輪を優しく撫で回される。ジンジンと疼く乳首は一向に触ってくれない。
手が止まったかと思えば左の乳輪も同様に愛撫され、乳首は切なくいきり立つばかり。
「お……にいちゃ、あぁん……」
啜り泣くそよぐの唇を貪りながら、凌は交互に左右の乳輪を撫で続けた。
いつの間にか凌の右手が両足の間に潜り込み、体液にぬるつく陰部へ指を這わせる。
「ふみゃあぁぁぁぁぁぁッ!?」
陰裂の肉襞を掻き分けると、凌は尿道口の周辺をゆるゆると撫でさすった。
同時に真っ赤に腫れた陰核を転がされて、そよぐは子猫のような啼き声を響かせた。
「いやァァァァァ! お兄ちゃんっ、やッ、やだぁぁぁぁぁぁあああ!!」
そよぐは泣きじゃくって悶絶するが、凌の呵責は止まらない。悲鳴すら貪られ、決定打を与えられない快楽が延々と続く。
弱々しい潮を幾度となく飛沫かせ、そよぐは顔を真っ赤にして女體を痙攣させた。
両の乳房が今にも弾け飛びそうなほど熱く張っている。乳首を触ってほしいのに触ってもらえない事が悲しくて、そよぐは嗚咽混じりに懇願した。
「ぉ、にいちゃ、お兄ちゃん、お兄ちゃ……おっぱぃ、苦しいの……」
「うん?」
「ま、わりだけ、じゃなく、て……ちくび……さきっぽも、さわってぇ……ッ」
凌はうっとりするほど優しく笑んだ。
「おっぱい出そう?」
「わっ、かんない、よっ……んッ」
「触るだけでいいの?」
そよぐはふるふると首を横に振った。
「おくち……お兄ちゃんの口で、しゃぶって……」
「ん、いーよ」
肩を抱き寄せられると、そのまま二人で畳にごろりと寝転がった。
側臥位で向かい合い、凌がそよぐの胸元までずり下がる。汗ばんだ谷間を舐められ、堪らず凌の頭を抱え込んだ。
凌は大ぶりな双乳をくっつけるように一掴みにすると、大口を開けて左右の乳首を同事に咥えた。
「――……ッ、ン、あっ!?!?」
焦らされ続けた乳首を纏めて甘噛みされ、音を立てて吸われ、舌先でねっとりと舐られる。
強烈な快感に脳髄を焼き尽くされ、そよぐは声も出せず気絶した。
右手でふにふにと膨らみを揉まれ、意識を揺すり起こされる。
しかし乳首への責め苦にまた飛んで、逃げ場のない反復に何も考えられない。
「あ――ヒッ、やぁぁ……!」
凌の左手が陰裂の泥濘を暴いた。親指以外の四本で、恥骨の裏側や奥の方のポルチオまでずぶずぶと犯し尽くされる。
「いやァァァァァァァァァァッ!!」
泣き叫ぶそよぐに構わず、凌は濁った水音を立てて腟内を蹂躙する。両の乳首にカリッと歯を立てられ、痛いほど吸い上げられた。
子宮が燃えているように熱い。
全身の血流が沸騰し、瞳孔が丸く開く。
胸の奥から先端目がけてツ――ンッと何かが走り抜けるような感覚の直後、凄絶な開放感と共に乳首からドッと母乳が溢れ出た。
凌は目を丸くしたが、そのまま口の中に流れ込んできた乳汁を余さず嚥下した。
ちゅうちゅうと吸われている間、そよぐの足の間から漏れ出した小水が凌の左手を生温かく濡らした。
一頻り初乳を飲み干すと、凌は乳首から口を離した。陰裂から左手が引き抜かれる。
そよぐはぐったりと脱力して浅い呼吸を繰り返していた。
蕩け切ったHカップの乳房は身を寄せ合って楕円形にひしゃげ、弱々しくわなないている。鮮やかな色合いに熟れた乳首は上を向いて、涙のような乳白色の雫を滴らせていた。
「そよぐ?」
上体を起こした凌に顔を覗き込まれ、そよぐはぼんやりと瞬いた。
凌は薄く笑ってそよぐの唇を啄むと、柳腰に巻きつく長襦袢を取り去った。
白く滑らかなくびれのラインを撫で上げ、震える乳房を下から掌で包み込む。甘やかな手つきで揉みしだかれると、そよぐは掠れた悲鳴と母乳を零した。
「おっぱい出たね、そよぐちゃん」
「……ぉ」
「お?」
「お兄ちゃんの馬鹿……助平、変態、人でなし……」
「全部否定出来ないなぁ」
クツクツと喉を鳴らした凌は、そよぐの肩を押して仰向けに転がした。
畳の上に栗色の髪が広がる。
凌は妹の体を跨いで乗り上げると、白魚のような腹に浮かんだ真円の痣――完全に盈ちた赤い満月を撫でて薄く笑った。
「ちゃんと俺の嫁巫女になれたな、そよぐ」
歓喜と劣情に揺らめく男の眼差しに堪らなくなって、そよぐは眦を染めて睫毛を伏せた。
「そよぐのおっぱい、凄ぇ甘くて美味かったよ」
「か……感想言わないで」
「おっぱい吸われて漏らしちゃうそよぐは滅茶苦茶可愛かった」
「ちょっと黙って!」
恥ずかしさに耐え切れず両手で顔を隠すと、右足を持ち上げられた。
広がった股間を冷気が舐めた刹那、鋭利で硬い屹立に子宮口まで貫かれた。
「ふ――ア、ぇ、んあァ!?」
海老反りになった女體の上で椀形の爆乳が激しく波打つ。
「やッ、なんで、さっき、あんな一杯出したのに……っ」
「そよぐがやらしくて可愛いから、また勃った」
子宮を揺するように小突かれ、そよぐの爪先が畳を引っ掻く。
宙を彷徨っていた両手を捕らわれ、指を絡め合うようにギュッと握り込まれた。
ぐ、と体重をかけて胎内を突かれると、チカチカと視界が明滅する。
「おにいちゃん、おにいちゃんっ、も……もう、むりぃ、アッ、ぁあ、はァ……」
「後一回だけ、付き合って」
繋いだ両手を畳に縫い止められ、逞しい長身が覆い被さってくる。
子宮深くを抉られ、喉の奥まで舌で犯されるようにキスされて息も出来ない。
「そよぐ――可愛い、好きだよ」
息継ぎの合間に睦言を囁かれ、そよぐは背筋を震わせた。
両足を凌の腰に巻きつけると、凛々しい眉がグッと歪む。
「俺、お前に殺されそう」
どっちがと言ってやりたかったが、涙目で睨んでも更に「可愛い」を耳の穴に詰め込まれるだけだった。
腫れ上がった乳房が押し潰されて頭がおかしくなりそうだ。子宮が下がり、陰茎を突き立てられる度に悦びに戦慄する。
一心不乱にそよぐを求めて腰を振る青年がひどく愛おしく、そよぐは微笑んだ。
「凌ちゃんも、可愛い、ね」
凌の瞳が震え、両手の指が痛いほど手の甲に食い込む。
内臓を突き破らんばかりに陰茎が胎内へ押し込まれ、びゅるびゅると精液を叩きつけられた。
そよぐは軽く潮を噴くと、凌の下で四肢を弛緩させた。
凌は両腕と腹筋でそよぐを潰さないように体を支えながら、奥歯を噛んで射精の快感と戦っているようだった。滴り落ちてくる汗に目を瞬かせ、そよぐはシャープな線の頬に口づけた。
「……嬉しいんだけど、後出しが漏れそうになるから今はちょっと待って」
「お兄ちゃん、絶倫なの?」
「ぜっ」
凌は何とも言い難い顔で眉根を寄せた。
「彼氏のいる友達が、一回のエッチで二回以上出す男の人は絶倫だって言ってたよ」
「……変若水の効果なのか分からねぇけど、祁月家の男は精力盛んだって言うのは聞いた事がある」
「絶倫の家系なんだ」
しみじみ呟くと、凌は気まずそうに視線を逸らした。
くふりと笑って足で凌の腰を引き寄せる。
凌は息を呑み、短く唸った。
「そよぐ……っ」
「ザーメン、一杯出てるねぇ。そよぐのおまんこ、そんなに気持ち良い?」
子供の頃のような口調でわざとしく淫語を並べると、凌は耳まで赤くして睨んできた。
「お前、なぁ!」
「だって凌ちゃんが可愛いんだもん」
「こういう時だけ名前で呼ぶの、マジで勘弁してくれ」
そよぐは乙女椿の花より艶めかしい唇で莞爾と笑むと、下腹部に力を入れた。
キュウッと陰茎を抱き締められた凌は大きく喘ぎ、精液の名残を絞り出した。
両手を振り解かれたと思うと、背骨が軋むほどそよぐの体を掻き抱く。
「――ょ、ぐ、ッ」
押し殺した声に、ああ絶頂に達したんだなと察する。筋骨隆々とした背中をそっと撫でてやると、首筋に噛みつかれた。
成犬したての大型犬に押し倒されているみたいだと思ったのは秘密だ。
動物に喩えると、凌は耳がピンと立った猟犬ではないだろうか。艶々とした黒い毛並のジャーマン・シェパードが思い浮かんだ。
――そよぐって小動物系っていうより、小型の肉食動物って感じよね。
かつて友人から貰った評価を思い出し、そよぐは小首を傾げた。
恋愛経験値ほぼゼロの自分は間違いなく草食系だと思うのだが、当の友人は「あんたは間違いなく肉食系。油断させておいて本命を逃さず仕留めるタイプ。ある意味、一番怖い女よね」と断言していた。
今はもうすっかり遠ざかった日常を懐かしんでいると、凌がのそのそと起き上がった。
膣から陰茎が引き抜かれる感覚に悩ましい溜め息が零れる。ぼんやり凌の顔を見つめていると、背中を持ち上げるように抱き起こされた。
素肌に長襦袢を羽織らされ、格子に背を向けて座った凌の懐深く抱え込まれた。
そろそろ下男が検分の為にやって来る頃合いだ。
凌は自分以外の男にそよぐのあられもない姿を見せるのは許し難いらしく、必ずそよぐを隠すようにして下男を待ち構える。そよぐは長襦袢の衿を引っ張ると、身を縮めるようにぴったりと凌に寄り添った。
火明かりが揺らめき、暗闇の奥から草履で岩場を擦る足音が聞こえてくる。
……いつも牢を訪れる年老いた下男の、足を引きずるような音ではない。
やけにゆったりとした足音と、大股で歩く神経質そうな足音。
凌の全身が緊張し、ナイフのような殺気を纏う。
「――おや」
薄い笑みを含んだ、ぬるりとした男の声に総毛立った。
「折角足を運んでみたのに休憩中だったかな。残念だ」
凌がギリッと奥歯を軋ませた。
「ご当主様と若様が、わざわざこんな所まで何の用だよ」
「検分だよ。担当の下男からそろそろお前の妹が月盈ちるようだと聞いて、どんな具合かとね」
間違いない。
この声は、十三年前に
腹の底で仄暗い水がゆらりとうねる。
思考が冷めて、墨をぶち撒けたような真っ黒な怒りと憎悪に染まる。
白皙の面から表情が抜け落ちる。そよぐは無言で長襦袢に袖を通し、帯をしっかり締め直した。
「ハ、随分暇なんだな。
「私の巫女は既に月盈ちて、後は気紛れに可愛がってやれば良いだけだからね。しかし、要人の巫女は中々強情らしく――」
「お父さん」
苛立っているような若い男の声が八尋の台詞を遮った。
「余計な事は言わないで下さい」
「お前の方が気にしていたじゃないか。凌に先を越されるんじゃないかと」
「お父さん!」
若い男が声を荒げても、八尋は気にする様子もなくカラカラと笑っている。
会話から察するに、もう一人の男が凌を虐げてきた
「僕はただ、下男の報告の真偽を確かめに来ただけです。あんな、子供みたいに薄っぺらくてみすぼらしい体つきの女が嫁巫女になりそうだなんて、信じ難い」
「ア?」
凌がドスの利いた声を発した。
あまりの凄みに、そよぐは思わず口を噤んだ。
殺気の切っ先を向けられた要人も気圧されたのか、ざりっと後退る気配がした。
「な、何だ。貧相でみすぼらしいのは事実だろう。お前、よくあんな女に欲情出来たな? 流石は廃嫡された、下賤な血筋の生ま――」
ドンッ! と、凌の拳が畳にめり込んだ。
重く鋭い音に、要人がヒッと喉を鳴らす。山仕事で鍛え抜かれた凌の拳に殴り殺される想像でもしたのだろうか。
「……べらべら、べらべら五月蠅ぇんだよ」
「なっ、な……生意気だぞ、格下の癖に!」
「手前や手前の父親より、人間として落ちぶれたつもりはねぇよ」
獰猛な猟犬が唸りを上げて威嚇するように、凌は地を這うほど低い声で告げた。
「俺の事はまだしも、そよぐや爺ちゃん達を馬鹿にするな。そんな資格、手前にはこれっぽっちもねぇんだよ」
「このっ、この、下郎め!」
みっともなく喚き散らす要人に対し、凌は眉間の皺を増やしただけだった。
パン、と軽く手を叩く音がした。
「要人、もうお前は黙っていなさい。全く情けない」
「お、お父さん」
要人は諦め悪く反論しようとしたが、八尋がス――ッ……と冷えた気配を漂わせると途端に大人しくなった。
「私の言う事が聞けないのかい」
「ごっごご、ごめんなさい! ゆぅひ、許して下さい……ッ!」
ドスンと尻餅をついたような音が聞こえた。
そよぐが呆気に取られていると、悪寒がするような気配がこちらへ向けられる。
凌の肩が強張った。
「お前も身の程を弁えなさい、凌。自分が、当主と嫡男直々の検分を拒めるような立場の人間だと思っているのか?」
そよぐを抱く腕が怒りと悔しさに震えている。十三年前と同じように、そよぐを全身全霊で守ろうとしている。
畳を打ち据えたままの拳に、そっと手を重ねた。
凌が動揺したように振り返る。
そよぐはにこりと兄に笑いかけると、楚々とその場で立ち上がった。
もう、逃げも隠れもしない。