姉と世界に2人だけ取り残されたので、姉をお嫁さんにした弟が、神様を目指すために神のダンジョンに挑む物語 作:XX(旧山川海のすけ)
チェシャキャットは俺たちの戦意を確認すると。
そのままバックし、壁の中に隠れたんだ。
そしてそこから、壁から生えては空気弾を撃ち込んでくる攻撃を繰り出してきた。
ただ、それだけの攻撃なんだけど、それが厄介で。
「引っ込んだ瞬間なら、まだそこにいるわけだし、剣の攻撃通じるよな!?」
「どうでしょうか? 物質透過の状態ですし!?」
修司さんの意見に俺はそう答える。
多分さ、外に出ている部分は武器の攻撃が通じると思うんよ。
だけど、壁の中に引っ込んでいる部分は……
物理攻撃通じないんじゃ無いのかな?
俺はそう思うんだ。
「じゃあどうすればいい!?」
それは……
俺がその修司さんの問いに応えようとしたとき。
おそらく、瞬間移動を併用したのか。
全然別の壁からチェシャキャットがバァし。
俺たちに空気弾を撃ち込んでくる。
掌をこちらに掲げて
「発射!」
そう、饅頭が潰れたような声で言うんだ。
狙われていたのは由宇。
当たれば深刻なダメージを負う。
だから
「由宇! 狙われているぞ! 避けろおぉぉぉ!!」
叫ぶ。
精一杯の警告。
だけど、由宇はまずキョロついた。
致命的な行動。
俺の肝が冷える。
血の気が引いたよ。
そういうときは、確認より前に動くんだよ!
お前だって知ってるはずだよな!?
すぐに由宇はチェシャキャットの位置に気づくけど
ホンの少し、遅かったよ。
もう、回避行動が間に合わない。
そのまま喰らう……
……と思ったときだった。
由宇が跳躍したんだ。
その場で、高く、高く。
その背中に、輝く光の翼を出現させた状態で。
跳躍し、羽ばたき、加速。
瞬く間に天井付近にまで舞い上がって、俺たちを見下ろす位置に収まった。
これは一体……?
と、思ったけれども。
流石に……このことを思い出して、気づいた。
……ヴァルキリーの最終能力「戦乙女」は。
背中に輝く翼を得ることにより、飛翔能力を得る能力。
そしてさらに、30秒毎に1本だけ槍を召喚できる力も得る。
これが……説明書にもあった「覚醒」なのか……!?
突然最終能力が覚醒したのに、由宇は冷静だった。
槍を速やかに召喚して、チェシャキャットに向けて投げ放ったんだ。
空中から光が集まる感じで、由宇の掲げた右手の中に出現してくる1本の槍。
それを手にして、思い切り投げ放つ。
「ゲイボルグ!」
……そう、必殺技名を口にして。
チェシャキャットは一瞬硬直していたけど、ギリギリで間に合わせて来た。
壁の中に引っ込む。
同時にそこに食い込む槍の雨。
惜しい!
俺はそのタイミング悪さで、舌打ちしそうになってしまう。
こういう態度、改めて欲しいって紗耶香に前に言われたんだよな。
感じ悪いし、子供っぽいからって。
だけど、必殺のゲイボルグを避けられてしまったので。
覚醒したばかりの由宇は、俺以上に悔しそうだ。
「判断が早いなもう!」
空中で地団太を踏みかねない調子で、愚痴る。
気持ちは分かる。
だけど……
心強い。
そして……
どうしようか?