姉と世界に2人だけ取り残されたので、姉をお嫁さんにした弟が、神様を目指すために神のダンジョンに挑む物語 作:XX(旧山川海のすけ)
「川上妹氏!」
「何!? 山本旦那氏!」
最終能力でこの部屋の天井付近を飛んでいる由宇に、俺は大声で呼びかけた。
「この部屋、そこからなら見えるだろ!? どんな感じだ!?」
ここからだと壁ばかりある部屋なんだけど。
具体的に言うと、三次元迷路といった感じだと思う。
こっちからは全体像が見えないんだけど……
多分、由宇の方からなら全体像が確認できるはずだ。
だから訊いたんだが……
「この部屋、かーなーり、広いわ!」
……あまり参考にならない言葉が返って来た。
「他に何か分かったことは無いのか!?」
だからさらに突っ込んで呼びかける。
すると
「敵はチェシャキャット1体のみみたい!」
そんな言葉が。
……そうか。
助かる……。
少なくとも、こんな妖怪のような危ない猫と複数同時にガチでやり合う。
そんな、危険すぎる運命を回避できたのは素直に嬉しかった。
そんなとき
「なぁ、拓斗くん」
修司さんが俺に向かって。
俺は視線を索敵に向けたまま、返した。
「なんでしょうか!?」
「キミはチェシャキャットに斬撃が通じると思うか?」
……物質透過能力があるのに、斬撃が通じるのか?
無論、外に出てるときだろう。
それは……
「通じると思います!」
即答した。
根拠はある。
「チェシャキャットのやつ、由宇のゲイボルグが来ると分かった瞬間、壁の中に引っ込んだんです! これは攻撃が通じると見た方が良いでしょう!」
そんな俺の挙げた根拠に、修司さんは納得してくれたようで。
頷くと
「聞け! チェシャキャット!」
……いきなり、この部屋の番人に呼び掛け始めたんだ。
こういう内容を
「由宇のゲイボルグに使う槍は、30秒で復活する! 1回で終わりの単発奥義じゃないんだ! 降伏するなら今だぞ!」
……え、と思った。
明らかに、今言わなくても良い内容だったから。
そんなことを言ったら、逆に
だったら1回使えば30秒はゲイボルグが来ない。
こういう思考が出来るじゃないか。
まずいだろ、それ
焦る俺。
だけど由宇は……
それから何かを察したのか。
何事もなく普通に、チャージタイムを終えて復活した槍召喚能力を使用して、召喚槍を呼び出す。
今、由宇は両手で2つの長物武器を装備している。
片方は愛用の武器のドラゴングレイブ。
そしてもう片方は召喚槍。
飾り気の無い、敵を突き殺せれば万々歳の面白みのない槍だ。
まぁ、30秒で何回でも呼べる槍だしな。
そんなもんだろう。
……で。
ここで流石に気づいた。
そっか……さては修司さんは……
1回、ゲイボルグを避けさせて、30秒のチャンスタイムを狙って、のこのこ壁から出て来たチェシャキャットをもう1回のゲイボルグで仕留める……これを狙ってるんだな?
1回使えば槍の回収が必須だけどさ。
由宇には1回きりだけど、長物武器が2つあるから。
1回だけ、連続でゲイボルグを放てるのか……
そんなことを、川上さん夫婦は打ち合わせなしで意思疎通して、実行に移すなんて……
……すげえな。この夫婦。
俺は素直に感心する。
俺も紗耶香とこうなりたいよ……。