姉と世界に2人だけ取り残されたので、姉をお嫁さんにした弟が、神様を目指すために神のダンジョンに挑む物語 作:XX(旧山川海のすけ)
由宇は右手に持った召喚した槍を投擲姿勢で構え、油断なく眼下に視線をはしらせる。
どこの壁からチェシャキャットが出現しても良いように。
……頼む。
俺としてはできることは……
俺はゴールドカードをホルスターから抜いた。
二丁拳銃。
この攻撃は多分通じないが……
そのとき。
壁のひとつからチェシャキャットが出現する。
来た……!
俺は狩人の熟練者位階の能力「早撃ち」で、即座に発砲した。
チェシャキャットを数発の銃弾が襲う。
だけど
俺の撃った銃弾は、1発もチェシャキャットに命中しなかった。
両手を掲げて来たんだ。こっちに。
……多分これが空間歪曲能力。
銃弾の軌道を捻じ曲げて、身を護る。
ゲイボルグにこれをしないのは、多分限度があるんだろうな。
でもまあ、俺の銃撃がこれで防御できるお陰で……
由宇がその隙に、召喚槍を投擲する。
……この通り、ゲイボルグを放つ手助けが出来る!
由宇が投げた槍が空中で分裂し、たった1本の槍が無数の槍に。
槍の雨に変じて、降り注ぐ。
チェシャキャットは……
……壁から飛び出した!
そして槍の雨を回避する。
頭のプロペラ羽根を激しく回転させながら。
「当たらなければどうということは無いよぉ」
……速い!
饅頭が潰れたような声の癖に、俊敏だ。
複雑な空中飛行を見せ、そして
由宇に向けて手を掲げる。
……空気弾を放つ気だ。
だがそれに合わせて、由宇も残ったドラゴングレイブを投擲する。
空気弾に合わせた、2撃目のゲイボルグ……!
おそらく、今の由宇の虎の子。
だが……
「アハハハ! そんなの当たるわけ無いじゃないかぁ! 見えてるのにぃ」
空気弾発射姿勢はフェイクだった。
2発目のゲイボルグを誘うためのポーズだったんだ。
高速飛行を止めず、由宇の2発目の効果範囲から瞬く間に逃れる。
そして
「空振りだねぇ。もう後がないよぉ?」
その声に、チェシャキャットの勝利の確信を感じた。
自分のゲイボルグ回避成功を確信し、今度は無防備になった由宇に突き進む。
由宇を仕留めるため。
その意図を示したとき。
チェシャキャットは、正中線で縦に割れ、2つになった。
そして塵になり、ゴッド貨幣に変わって落下し、降り注ぐ。
そこで俺は驚愕した。
驚愕したけど……
納得し、興奮した。
俺の傍には、刀を抜いて天を突く姿勢で停止している修司さんがいたからだ。
居合加速+鉄斬
そして……「波動斬」
修司さんの上級職・ミフネの最終能力だ。
それは斬撃の有効範囲を拡大する能力……。
おそらくは……
その3つの能力を全て合わせた居合斬りで、逆袈裟に近い軌道で、斬り上げたんだ。
……チェシャキャットを。
ここでようやく、俺は修司さんの真の狙いに気づいた。
最初から修司さんは、これで仕留めるつもりだったんだ。
由宇の強力な攻撃2つを処理させて、その油断から出来た隙に自分の一撃を加えるために。
多分、由宇が覚醒すると同時に修司さんも覚醒したんだと思う。
そこから即座に、この作戦を立てたのか。
すごいな……流石だ。
俺はそのとき。
震えるような感激を感じていた。