姉と世界に2人だけ取り残されたので、姉をお嫁さんにした弟が、神様を目指すために神のダンジョンに挑む物語 作:XX(旧山川海のすけ)
ケーキ屋さんに行ってみたら。
バースデーケーキというのが置いてあった。
オーダー制だと思っていたから、正直驚いた。
これにしよう。
そう思ったんだけど……
……このケーキ、どうやって出すんだ?
そこでまず、詰まったんだ。
当然だけどさ、ショーケースの中だから。
……鍵が掛かっていたらどうしよう?
不安だったけど、ショーケースの内側に回ってみたら、別に鍵は掛かってなかった。
まあ、営業中なら普通かも。
しかし、その次の疑問点。
ケーキを入れる箱ってどこにあるの?
あれがないと、ケーキを持ち帰れない。
使用の便利さを考慮すると、ショーケース近辺にあるのが自然……
そう思い、その辺を重点的に探したら……あった。
ケーキを持ち帰る、紙の箱。
それで、俺はケーキの箱を組み立てて。
ケーキを箱に移した。
そこにあった専用の道具を使って移したら、奇跡的に上手くいった。
ひょっとしたら、息子の初めての誕生日を祝いたい父親の気持ちに、神様が助力してくれたのかもしれない。
ルンルン気分だった。
あの子はまだ、誕生日ケーキの意味は分からないかもしれないけど。
自分が祝われているのは理解できるだろうし。
甘いものだって喜ぶはずだ。
まだおっぱいを吸いたがるけど、固形物も食べてるしな。
で。
可愛い息子と愛妻の待つ自宅に、両手でケーキの箱を持って帰っていたら。
……その道中で、とんでもないものを見つけてしまったんだ。
そこは確か、地下道の入り口だったんだ。
そこは駅で。
この街のこの駅、出入り口が片方にしか無くてさ。
なので、出入り口が無い側……つまり裏側に、地下道があって。
それを使って表側に回る。
そういう構造になっていたんだ。
その地下道は、20メートルくらいの距離しかない、ごく短いもので。
なんてことない通路。
そのはずだったのに……
「あれって……ゴブリンじゃ無いのか?」
ゴブリン。
俺はあんまりゲームはしないんだけど、アニメはたまに見てて。
ファンタジー系の作品で、わりと頻繁に登場するモンスター。
俺が好きだった作品だと……
見た目は緑色の肌と、牙の生えた口を持ち。
頭は剥げていて。腹が膨れている。
体格は小学校高学年男子程度で、知力も体力も大差ない。
けれど……
残虐性だけは凄まじく、集団で襲い掛かって確実に殺しに来る。
そして……
雄しかいないので、繁殖するために他種族の雌を攫う。
確か、こんな感じだった。
……それが現実に、俺の目の前にいる。
まだこっちに気づいていないみたいだけど。
地下道の入り口から出てきて
ギャッ
グアッ
……耳障りな鳴き声をあげて、周囲を観察している。
……どうしよう……?
逃げないといけない。
いくら小学生って言っても。
現実の小学生は、躊躇なく他人を殺そうと襲ってはこない。
だけどゴブリンはやるんだよ。
数は……10匹はいるな。
そんなのに集団で来られたら……
背筋が寒くなる。
……今のうちに逃げよう。
そして、逃げたら即引っ越し準備だ。
こんなものがいる街で、子育てはできないし。
愛しい妻を生活させておくわけにはいかないじゃないか。
そう思い、俺は足早にその場を立ち去ろうとしたんだ。
……だけど
ギイイイイイイ!!
大声が轟いた。
意味は分からない。
分からないけど……
想像はできる。
……俺、あいつらに見つかったんだ……!