姉と世界に2人だけ取り残されたので、姉をお嫁さんにした弟が、神様を目指すために神のダンジョンに挑む物語 作:XX(旧山川海のすけ)
「あなた、アイツが私の左手を斬って自分の左手も斬り落としたんです」
左手の指を失った紗耶香がそう言った。
そして左手を手首から失った紗耶香は
「あなたが自分の指を切断して私の手を斬ったんでしょうが! あなた! 信じないで!」
……焦った様子でそう俺に訴えかけてくる。
唯一の目印である指輪が無くなった……
これはまずいな。
どうすれば良いんだ……?
そんな風に一瞬考えて、俺の動きが止まった。
そこに俺もどきからの銃弾の雨。
弾かれたように再起動し、大きく身体を動かして回避する。
危なかったので。
……回避しながら、ハッと思うところがあった。
ドッペルゲンガー同士は互いの認識ができたりするんだろうか……?
具体的に言えば、もどきはもどきを識別できるのか?
……俺は「できない」と思ったけど。
不味いよな。万一出来るとしたら……
この状況、俺自体はもどきの判別が出来ないから、どっちの紗耶香が本物か分からない。
ということは、俺は紗耶香への攻撃を防ぐことが出来ないってことなんだ。
もし出来たら、詰んでしまう。
思わず青ざめる。
けれど……
(紗耶香への攻撃が無いってことは、多分ドッペルゲンガーでも見分けることが出来ないんだ)
その可能性が高い。
もし俺の想像が可能なのであれば、断念する理由が無いから。
しないワケがない。
そのとき
「リフレッシュ!」
2人の紗耶香が同時に、ダメージ回復魔法の最高位で、人体欠損まで完璧に治す治癒士達人位階の魔法「リフレッシュ」を使ったんだ。
そして2人とも、失った左手を瞬く間に取り戻した。
……両方とも、指輪を嵌めて無かったけど。
……どうすれば良いんだ?
俺は俺もどきの攻撃をやり過ごしながら考える。
ドッペルゲンガーは
狙った相手の姿形、記憶、癖、能力、技能をコピーする。その精度は完璧。コピーミスは無い。
……見た目で判別、記憶で判別、癖で判別はできないか。
ならば……
ここで俺は、紗耶香の言葉を思い出した。
『……一応、見分ける方法はそれ以外にもありますよ。おそらく』
……そうだ。
それしかないよな。
もしドッペルゲンガーが何から何までオリジナルと一緒なら、魔物として立ち塞がってこないんだよ。
そこを攻めるんだ。
なので俺は
「なぁ紗耶香」
俺は俺もどきの攻撃を受け流しつつ、呼びかける。
「なんですかあなた!?」
返事2つ。
妻の様子は見ていないけど。
多分、アセイミーナイフを拾って、斬り結んでいるんじゃないかな?
俺はそこで2人に視線を向ける。
案の定、ナイフで斬り合いをしている。
動きは悪く無いけど、素人の域は出ていない。
紗耶香はこの4人の中で、唯一武術系スポーツ経験者じゃないからな。
無駄な動きがかなり多い。
でも、頑張ってる。
「エネルギージャベリン!」
ナイフを持っていない左手の中に光の槍を発生させ、それをもうひとりの自分に投げつける紗耶香。
しかし外れる。
だけど……
当たりはしないが牽制にはなってるかな。それは。
……こんな感じで魔法を交えたりもしてるんだよな。
精一杯やってるよ。両方とも。
だから区別はつかないが……
俺は覚悟を決めたんだ。