※この作品はR-18です。

姉と世界に2人だけ取り残されたので、姉をお嫁さんにした弟が、神様を目指すために神のダンジョンに挑む物語   作:XX(旧山川海のすけ)

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第147話 本物の紗耶香は……

 言葉を発するとき。

 

 迷いがあった。

 

 あったけど……

 

 これしか無いと思ったから。

 

 だから意を決して

 

「この前、異界のテレビ番組に出演した明くる日の朝……俺、寝てるお前のおっぱいを吸ったけど!」

 

 言ったんだ。

 

「お前、気持ち良かったか!?」

 

 ……言い切った!

 

 

 言われた紗耶香の動きが止まる。

 

 2人とも、動揺しているのか。

 

 口々にこう言った。

 

「あ、あなた」

 

「こんなときに何ですか?」

 

 夫婦2人きりでもないのに。

 何を訊いてくるんだ?

 

 そんなところか。

 

 2人とも動揺していた。

 だけど、片方は演技だ。

 そうに決まってる。

 

 ここで全く動揺しなければ、それ即ち偽物であるサインだし。

 

 ……上手い演技。

 全然見抜けねーや。

 

 でも俺は構わず

 

「答えてくれ!」

 

 強く頼んだ。

 勢いで押し切る感じで。

 

 すると……

 

「そりゃあ、愛する人におっぱい吸われたら気持ちいいに決まってるでしょ……」

 

 恥ずかしそうに片方の紗耶香は快楽を認めた。

 紗耶香は俺におっぱいを吸われるの好きだしな。

 

 そしてもう1人は

 

「あなた、そんなつもりで私のお乳を吸ったんですか!?」

 

 ……ショックを受けた風で、質問に質問で返してきた。

 

 そっか……

 多分、こっちだな。

 

 俺は右手のゴールドカードの引き金を引き。

 

 銃弾の軌道を曲げて、偽物と判断した方の紗耶香の額を撃ち抜いた。

 

 

 

 あのとき。

 

 紗耶香はこう言った。

 ドッペルゲンガーを見分ける方法について話題が向いたとき。

 

「……完璧に何から何まで私たちと同じなら、私たちの夫婦の愛、仲間意識も分かるはず」

 

 きちんと、本当の意味で。

 

 紗耶香はそう言ったんだ。

 だから……

 

「もしそこまで理解できていたなら、そんな相手を躊躇いなく殺せますか? 普通の神経じゃないですよ」

 

 そう……

 

 だから

 

「ドッペルゲンガーは、私たちの夫婦の愛や仲間意識を知識としてだけでしか知らないんだと思います。真に理解はしていない」

 

 そこに突破口がある。

 紗耶香は言ったんだ。

 

 サイコパスの話について。

 

 サイコパスの人間は共感性が無いので、他人の気持ちが理解できない。

 どうすれば喜ぶのか、苦しむのかは理解できるけど。

 知識はあるから。

 

 でも、そこまでだから……

 

 ヒトの心の機微は分からないんだ。

 

 なので……

 

 俺は、俺の質問に真っ当に返答した紗耶香の額を撃ち抜いた。

 迷いはあった。

 

 でも……

 

 ここは決断のときだ。

 

 すると……

 

 呆然とした表情を浮かべたその紗耶香は

 次の瞬間、塵になって消えて。

 

 大量のゴッド貨幣に変化した。

 

 ……良かった。

 

 ドッペルゲンガーにはあのときの俺が、紗耶香に母性を求めておっぱいを吸ったことが理解できなかった。

 セックスの一環で吸ったんだと思ったんだ。

 

 俺と、本物の紗耶香はそれが理解できていたから……

 俺のそんな意味不明の質問に、質問を返すことしかできなかったんだよ……

 

 だって、そんな質問が来ること自体、裏切り行為だから。

 

「あなた……」

 

 紗耶香は俺に熱っぽい視線を向けてくれた。

 本物である自分を見抜いてくれた。

 そのことに関する喜びなのか。

 

 ……俺も嬉しい。

 俺の質問を裏切りであると思って怒ってくれて。

 

 緩みかける俺の心。

 その俺の心が

 

「危ないッ!」

 

 一気に硬直し、俺を飛び出させた。

 

 ……俺もどきが、この一瞬の隙を突いて紗耶香目掛けて飛び出したのだ。

 紗耶香もどきがやられたから、何が何でも本物も倒して、イーブンにする。

 そんな戦略上のバランス感覚か。

 

 ヤツは跳躍し、空中でスクリューアタックのように激しく回転していた。

 

 ……まずい。

 

 俺には分かった。

 

 あれは真空波。

 その予備動作だ。

 

 俺の上級職「ハイマスター」の最終能力……!

 アイツ、何が何でも紗耶香を殺すつもりなんだ……!

 

 だから俺は

 

 何も考えなかった。

 衝動的に、紗耶香とヤツの射線を切る位置に立ち塞がった。

 

 そこに真空波が繰り出される。

 ヤツの空中回転の勢いが乗った踵(かかと)落としに、真空波が乗る。

 蹴り脚の軌道から来る常識的な有効範囲を拡大し、数メートルが忍者の素手攻撃の斬撃効果範囲になる。

 それが最終能力・真空波の効果。

 

 空蝉は使えない。

 空蝉を使えば、肉壁の役目を果たせなくなるから。

 

 そのまま、受けた。

 

 ……痛みは無かった。

 

 だけど、俺の胸が裂けていて

 

 アホほど大量の血液が噴き出してきた。

 

 ……あ、こりゃ駄目だ。

 

「あなたーっ!」

 

 ……紗耶香の絶叫が、遠くに聞こえた。

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