姉と世界に2人だけ取り残されたので、姉をお嫁さんにした弟が、神様を目指すために神のダンジョンに挑む物語 作:XX(旧山川海のすけ)
ドッペルゲンガーを全員倒した。
それと同時に、奥の扉が重い音を立てて開いていく。
……これで次は地下9階。
最下層の地下10階まであと少し。
「じゃ、行きますか」
紗耶香の指輪と獲得したゴッド貨幣を回収した後。
皆に俺は呼びかける。
「ああ、行こう」
「うん」
「ええ」
全員、頷いてくれた。
「おふたりはドッペルゲンガーをどう攻略したんですか?」
地下9階を目指し、迷宮を歩きながら
俺は川上さん夫婦に訊ねたんだ。
俺は本物を判別する羽目になったけど。
この2人は最初から偽物と分かってる伴侶もどきに精神攻撃を掛けられていた。
自分は愛する伴侶そのものだぞ、みたいな。
俺とは別の方向で攻められていたけど……
だからちょっと気になった。
俺の質問に、2人は少し困った様子を見せる。
由宇は能面みたいに表情が消えたし。
修司さんは考え込んでる。
……ああ、ひょっとして。
ちょっと答えにくいのかな?
「……ああ、無理に言わなくても……」
俺は自分の発言を失言に感じたのでそういうと
「愛してる攻勢があまり隙を生まないと思ったんだと思うのね」
……由宇がポツリ、と話してくれた。
「なのでアイツらは、ホントは嫌い攻勢を掛けて来て……」
メッチャ、キツかった。
そう由宇が硬い声で。
……ああ、それは辛いな。
俺だって紗耶香の顔で
「拓斗なんか本当は大嫌い。あなたに犯されて無理矢理子供まで産まされて死にたくなってる」
なんて言われたら立ち上がれないほどのショックを受けそうだ。
例え偽物の言葉でも。
そして話はそれで終わらずに
「で……多分トドメに」
由宇はさらに続けて。
「浮気の告白……ゴメン。これ以上はムリ」
うわあ……
ちょっとこれ以上は聞かない方が良いな。
俺たちにも関わるかもしれないし。
……何せ、この世界には俺たち以外は子供たちを除いて人間が存在しないんだし。
「こっちも似た感じで、その告白に深くダメージを受けてる様子を見せて、相手に作り話をさせることに集中させた」
修司さんも渋い顔でそう告白してくれる。
単純な一言より、エピソードは脳の容量を使うしな。
それが修司さんのコメント。
で、その隙に修司さんは全部乗せ居合斬りの準備をし、由宇は2連続ゲイボルグを叩き込む隙を伺ったらしい。
……なるほど。
「それは辛かったですね」
そう返すと
「分かってくれて嬉しいよ」
「山本旦那氏の方はどうだったの?」
お礼と質問返しが来て
俺は
「嫁さんが左手を失って、嫁さん当てをする羽目になったんだ」
質問者の由宇に、俺たちの事の顛末を話したんだ。
プライベートな部分はぼかしたけど。
それに対して
「なにそれ、エモ。夫婦の絆って感じ」
由宇のコメント。
……テレるなぁ。
……しかし。
川上さん夫婦って本当に良い人たちだよな。
自分たちは精神的に辛い目に遭ったのに。
ただ、勝算のある博打に挑んで、勝ちを引いただけの俺たちに文句が無い。
アタシたちは傷ついたのに、って言われても変では無いのに。
良い人が俺たちと組んでくれてる。
幸運だよな。ツイてるよ。
……そんなふうに境遇に感謝していたら。
来たよ。
目の前に。
地下9階への階段が。
……いよいよか。
これまで3階、6階と試練の扉があった。
だから多分9階にもあるんじゃないかな?
そう思いながら俺は階段を降りたんだ。