姉と世界に2人だけ取り残されたので、姉をお嫁さんにした弟が、神様を目指すために神のダンジョンに挑む物語 作:XX(旧山川海のすけ)
ゴブリンに見つかった。
見つかってしまった……。
こうなってしまえば、俺のやることは1つだ。
……逃げ帰るのは無理だ。
もう、戦うしかない。
何故って……
この状態で逃げ帰れば、ゴブリンどもに自宅の位置を教えることになる。
それだけは絶対にダメだ。
家には大切な妻と息子がいる。
あの2人だけは絶対に守らないと。
……例え、それで俺が死ぬことになっても。
周囲に武器になるものを見つけられなくて。
俺は最終手段として、ケーキの箱を足元に置いて半身の構えを取る。
……空手を使う。
これしかない。
……俺は別に、部活で弱くは無かった。
わりと上位勢だった。
トップでは無かったんだけどな。
だからまあ、ワンチャンこれでアイツらを全滅できる目はあるんじゃないか?
ゴブリンどもの持っている武器は……
短剣、棍棒、そして手斧。
幸い飛び道具が無い。
イケそうだ。
……いや
やってみせる!
「うおおおおおお!」
俺は雄叫びをあげて地を蹴って、ゴブリンどもの群れに突っ込んだ。
ギイギイいう耳障りな鳴き声をあげて、ゴブリンどもが迎え撃って来た。
俺は突っ込んで、一番近くにいた、短剣を逆手に持って襲ってくるゴブリンに……
喉を狙って貫手を繰り出していた。
……無意識だ。
何故、貫手だったのか。
俺は理解できなかった。
貫手の稽古なんてやったことなかったのに。
そして俺の貫手は……
ゴブリンの喉を貫き、半ば斬首していた。
ブシュア、と紫色の血液が噴き出る。
後から考えると、え? って感じなんだが。
その時の俺は興奮状態で
そのまま別の近場のゴブリンに、足刀蹴りを頭部目掛けて繰り出して。
ゴブリンは回避が間に合わなくてそのまま喰らい
……その頭部が吹っ飛んで、永久に黙ることになった。
ありえない……
重ねて言うが、その時はそうは思わなかった。
興奮状態で。
ギイイイ!
そしてゴブリンたちは仲間を2匹瞬殺されたので、不利と思ったのか。
ヤツらが出て来た地下道に一目散に逃げこんでいく。
……勝った……のか?
俺は臭いゴブリンからの返り血を浴びた状態で、今の戦いを反芻していた。
……ありえない。
何で俺、無意識で貫手を繰り出していたんだろうか?
自分でやったことだけど。
意味不明だ。
空手を知らないイキリ野郎の悪ふざけみたいな。
そんなことを無意識でしてしまった。
で、それが通用した。
それもありえないレベルで。
考えられない……
何なんだ……?
生き残れて、家族を守ることにも成功した俺だが。
俺は自分のやったことが理解できなくて、困惑というか……
恐怖にも似た想いを抱いていた。
……何が起きている?