※この作品はR-18です。

姉と世界に2人だけ取り残されたので、姉をお嫁さんにした弟が、神様を目指すために神のダンジョンに挑む物語   作:XX(旧山川海のすけ)

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第158話 電車に乗って

「電車に乗るの久々だなぁ」

 

「そうですね」

 

 次の日。

 朝ご飯を食べた後、一家で駅に出向いた。

 地下道は迷宮と繋がっているので、遠回りになるけど

 地上を歩きで進み、ここから見て裏側……表の改札口に向かう。

 

 踏切、開きっぱなし。

 踏切を越えて表側に。

 

 ベビーカーに美香。

 紗耶香が片手で明日香を抱っこしながら。

 

 俺は来斗の手を引いていた。

 

 駅の改札口がある表側……ウチの町の駅。

 

 だーれも居ない。

 

 ……切符、買う必要あるんかな……?

 

 この駅、改札に駅員さんが元々居ないから、自動改札のみなんだ。

 自動改札に捕まる可能性あるよな……

 

 ドキドキしながら、生まれて初めて切符も買わずに改札を通過しようとする。

 ……どうなんだろうか?

 捕まるのかな?

 

 すると……

 

 無反応だった。

 

 おお……

 

「ママ、自動改札イケるよ!」

 

 切符無しで改札を通って、振り返って俺は紗耶香に報告してしまった。

 興奮しすぎて。

 

 紗耶香もなんか初めての経験なのか

 

「……何かドキドキしますね。パパ」

 

 そんなことを言って。

 

 彼女も改札越しに明日香を俺に渡し、ベビーカーを畳んで美香を抱っこし改札をタダで通過したんだ。

 

 

 

 駅で電車を待っていた。

 一家で固まって、ホームで。

 

 子供たちにはホームの椅子に座らせていた。

 しんどいだろうからね。

 

「電車来るよな……?」

 

 次元転移の日以降、電車には乗って無いからなぁ。

 腕時計と、時刻表を見比べる。

 

 時刻表によると、あと数分……

 

 すると電光掲示板に

 

『まもなく電車がまいります』

 

 そんな表示が出て。

 おお、と思った。

 

 

 

 電車が本当に来た。

 中はガラガラだ。

 当たり前だけど。

 

 ドアが開いたので、乗る。

 

 隣町が目的地なので、15分くらいで到着してしまうのだけど。

 生まれてはじめて電車に乗る来斗が、はしゃいでいた。

 目をキラキラさせながら、中を確認し、外の景色を眺めていた。

 

 ……これだけでも、連れて来て良かったと思った。

 

 だけど

 

 俺にとっての電車は……

 あまり良いイメージは無いな。

 

 朝はラッシュだし。

 夕方に帰るときはグロッキー。

 空手部の練習がキツかったからね。

 

 そこでふと

 

 紗耶香も電車に乗って通勤していたよな。

 そこに気づいて

 

 ……朝に痴漢に遭ったりしてなかったのかな?

 そこに思い当たり

 

 ……ものすごい怒りに襲われそうになった。

 紗耶香は俺の妻で。

 その妻に俺以外の男が触れる。

 

 許せない。

 やった奴の首を、躊躇(ためら)いなく刎ねることができそうなくらい、瞬間的に憎悪した。

 

 まぁ、確認は取れないんだけどさ。

 言われたことも無いし。

 

 俺に言って来ないってことは、きっと紗耶香は痴漢されたことは無いんだ、と思い込めるほど能天気でも無いからね。俺。

 

 電車痴漢という犯罪が、構造的に集中しやすいことくらい分かる。

 満員電車は隣に居るのが誰が誰だか分からない。

 そして知らずに他人の身体に触れる状況になりやすい。

 

 ……つまり、明確な物的証拠、論理的証拠を取るのが難しいんだよ。

 

 どうぞ犯罪してくださいって状況だよな。

 だったら来るだろ。

 性犯罪者が。

 

 よく反証で日本の性犯罪発生率の低さを持ち出す奴がいるけど。

 それは検挙出来た数だから実際の犯罪の数とは関係ないし。

 ついでに言えば、その数少ない性犯罪者が嬉々として参戦してくる状況がマズいわけだから、確率の大小も関係ない。

 

 だから紗耶香はされてるはずなんだよ。

 でも、俺には言わなかった。

 

 ……何故か?

 

 そりゃあ、言ってもしょうがないからだろ。

 私、今朝痴漢されました! って俺に訴えても。

 犯人を俺にブチのめしてもらえるわけでもなし。

 俺の気分が悪くなるだけだ。

 紗耶香は共感してもらえて嬉しいのかもしれないけど。

 

 だからきっと紗耶香は

 

 拓斗さんの嫉妬と憎悪を呼び起こすだけ。私の苦痛は話せば楽になるかもしれないけど。

 そんなの、愛する人に対する態度じゃない。

 

 ……そんな風に考えて、飲み込んで黙ってくれたんだと思う。

 そう思ったとき

 

 ……紗耶香。

 辛かっただろうし、怖かったかもしれないのに。

 俺のために……

 

 俺は愛を感じて泣きそうになり。

 

 俺は思わず、隣の座席に座っている紗耶香の手を握った。

 

 紗耶香は怪訝そうな顔で俺を見る。

 俺は

 

「好き」

 

 そう一言。

 紗耶香は俺のその言葉に

 

「え? なんですかいきなり」

 

 ちょっと戸惑い、少しだけ嬉しそうな顔をした。

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