姉と世界に2人だけ取り残されたので、姉をお嫁さんにした弟が、神様を目指すために神のダンジョンに挑む物語 作:XX(旧山川海のすけ)
そして。
決戦の日がやって来た。
俺たちはその日、朝ご飯にトンカツを食った。
ステーキを食った。
赤ちゃんである美香以外全員。
……ゲン担ぎだ。
タマミの店で川上さん一家と3日ぶりの再会。
「もう、準備万端って感じだね」
自信に満ち溢れた由宇の言葉に、川上家の長女の結子ちゃんが
「動物園に行ってきました! キリンやコアラを見てきました!」
そう、笑顔で言う。
……この子の年齢なら、おそらく今日何が起きるのか理解できるはずなのに。
すごく、落ち着いていた。
怖く無いのかな……?
自分の両親が最終決戦で片方だけでも戦死したら、そこでジ・エンドなのに。
確認は出来ないけどさ。
すると
「絶対に勝って帰ってくれると、私、信じています!」
……結子ちゃんがそう言葉を発する感じで。
なんとなく、察する。
ああ、親の勝利を信じる気持ち。
その一点で消滅の恐怖に耐えているのか。
……この子は。
俺は他人の子供ながら、この子を褒めてやりたくなったし。
絶対に守りたいという、使命感を感じた。
そして思わず
……俺は結子ちゃんの頭を撫でてしまった。
やってしまってから
「ああ、ゴメンね。そんなトシでも無いよね」
詫びる。
幼児扱いして悪かった、と。
結子ちゃんは
「山本のおじさんも頑張ってください。私の両親をよろしくお願いします」
俺の行為に特に文句も言わずに。
俺に頭を下げて、そんなことを頼んで来たんだ。
「結子ちゃん。この本を読みながら待っててね。読み終わるころには決着つけて、新しい世界に行けるようになってると思うから」
俺と結子ちゃんとの会話を横で見守っていた紗耶香が、彼女に2冊の本を差し出した。
それは……
「あ、トリフィド時代と彷徨う都市宇宙船」
そんな2冊の本。
……前に結子ちゃんに紗耶香が紹介していた作品だっけ。
「トリフィド時代は世界滅亡からの再出発。都市宇宙船は太古からの使命の継承が面白い作品よ」
「ありがとうございます山本のおばさん。まだ2冊とも読んでませんから」
紗耶香はそういや、昨日図書館に行ってたんだよな。
……探していたんだ。
結子ちゃんに贈り物をするために。
俺は妻の気遣いに嬉しくなり、考えた
……そういやさ。
多分紗耶香なら気づいてると思うんだが……
ひょっとしたら、川上さん夫婦の子供たちとは、これでもうお別れの可能性あるんだよな。
最後の使命完遂と同時に、川上さん一家とお別れになるかもしれないんだから。
……もしそうだったら、黒幕にお願いはしてみるか。
せめて最後のお別れくらいさせてくれ、って。
そして俺は来斗を呼び寄せて
「来斗。結子お姉ちゃんの言うことをちゃんと聞いて、お手伝いをしっかりするんだぞ」
それだけ、言っておいた。
この子たちにも思い残させたくない。
息子は黙って頷いてくれた。
そして地下10階に。
直通エレベーターで降りて来て、あの扉の前に立つ。
俺と由宇は頷き合い、互いの宝珠を台座に収める。
すると今度は天からの声は聞こえなくて。
最後のこの扉が、ゆっくりと開いていった。
俺たちは緊張の面持ちでそれを見守り。
全員の顔を見渡した後、頷いて。
その扉を潜った。
最後の部屋。
俺たちがそう思う、その部屋。
そこは円形の部屋で。
大理石のような、白い石の部屋。
ドーム状。
目算で半径10メートル程度の半球状の形状だ。
……ここが最後の決戦の場。
ここで、何と戦わされるんだ……?
見回しても、何も敵が居なかったから。
俺たちは油断なく、どこから敵が来ても大丈夫なように気を配っていた。
……見えない敵って可能性もあるよな。
そんな風に、油断なく思考を巡らせていた。
そのときだった。
『よくここまで辿り着いた創造神候補生たち』
……天の声が降って来た。
俺たちの間に緊張が走った。
いよいよ、何か来る……!
そして俺たちは
天の声が告げる内容を一言も聞き逃すまいと集中し。
次の瞬間、耳を疑ったんだ。
『……創造神になれる夫婦は一組のみ。最初の男神女神の座を巡り、互いに戦うが良い』
……なんだって?