※この作品はR-18です。

姉と世界に2人だけ取り残されたので、姉をお嫁さんにした弟が、神様を目指すために神のダンジョンに挑む物語   作:XX(旧山川海のすけ)

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第162話 避けられない決断

「ちょっと待てよ!」

 

 最初に反応したのは修司さんだった。

 声には動揺と……怒りがあった。

 

「俺たちに山本さん夫婦と殺し合えと言ってるのか!?」

 

 その言葉に

 

『倒せと言ってるだけだ』

 

 天の声の言葉。

 

 ……同じことだろう。

 言い換えているだけじゃないか。

 

「どうしてよ!?」

 

 由宇が悲鳴のような声をあげた。

 

「そんなことできないよ! ウチの子とも仲良く遊んでくれている来斗くんの両親を倒すなんて!」

 

 ……今更言うまでも無いけど。

 川上さん夫婦はとてもいい人たちだ。

 

 俺がこれまでの人生で出会った人間でも、上層の人間で良いと思う。

 互いに真剣に愛し合っているし。

 俺たちの愛についても認めて、賞賛してくれた。

 

 まさに同志だったんだ。

 

 そんな相手と殺し合え。

 

 ……ふざけてる。

 

「何でそんなことが必要なんですか……?」

 

 そこで。

 紗耶香の静かな怒りが満ちた問いが。

 

 それに対し天の声は

 

『……創造神として、使命を投げ出さない重しがどうしても要求される。キミたちに与えられる使命は、軽々しく投げ出していいものではない』

 

 だから、共に試練を潜り抜けて来た戦友たる別夫婦を倒してもらう必要が出てくる。

 天の声はそう言った。

 

 ……嫌な意味で納得できた。

 

 そりゃそうだ。

 仮に俺たちが無事創造神になれたとして。

 ちょっと世界創造の壁にブチ当たったからと言って「もお無理だー」と神の使命を投げ出す。

 

 そんなことは許されるわけがない。

 

 でも、俺たちが世界創造を始めたら、最高の地位に就くのは俺たちだ。

 俺たちを諫める存在なんて何もないだろ。

 

 ……その場合に、俺たちを踏み止まらせるのが。

 

 共に戦い、認め合って、絆を深めたもう一組を候補生を倒して、その座を勝ち取ったという事実。

 こんな事実を背負ってしまえば、そりゃ絶対に神の座を投げ出し、使命を放り出すなんてできやしない。

 そんなことが出来る人間はクズ中のクズだ。

 まずいるはずがない。

 

 そしておそらく……

 そういう人間はそもそも創造神候補生に選ばれない気がする。

 

 とても非情で、効果的な最終試練……!

 

 全員、沈黙した。

 誰も怨嗟の声をあげなかった。

 

 いや……

 

「その効果を最大級に高めるために、試練の扉で互いを理解させるための試練を課し、9階では結婚式までさせたのか……」

 

「そのために、クラスの強化が全て出産祝いだったんだ……」

 

 震えながらの、川上さん夫婦の呟き。

 納得はしたんだな……

 

 受け入れてはいないけど。

 

 俺は紗耶香を見た。

 俺の妻は……

 

 真っ青になって、俯いていた。

 何も言葉を発さない。

 

 俺は夫として、彼女に歩み寄る。

 

 そして

 

「紗耶香」

 

 呼びかけ

 

 俺は……

 

 もう、やるしかないと思う。

 そう言おうと思ったけど

 

 俺の口からどうしてもその言葉が出なかった。

 何も言えないんだ。

 

 言おうとすると

 

 これまでの思い出。

 川上さん一家の子供たち。

 

 そんな記憶が俺の口を閉じさせてくる。

 

 紗耶香も何も発さない。

 ただ、視線で会話した。

 

 ……俺の妻も理解はしているみたいだ。

 もはや、やるしかないってことを。

 

『……やる気がどうしても起きないなら、元の次元に戻って貰うことになる。脱落を選択するか?』

 

 天の声の追い打ち。

 だよな……

 

 俺は拳を握り締める。

 おそらく、出直しは絶対に認められない。

 

 それを言った瞬間「じゃあ脱落するのだな」と言われるはずだ。

 俺が運営ならそうする。

 

 何故って、その場合おそらく次は絶対にここに候補生が来ない。

 決断できずに家に引きこもり、現実逃避してそれぞれの家庭生活を営む。

 その展開になるのが目に見えている。

 

 その場合、どのみち脱落。

 

 だからいつもいつも、決断の時間を与えて貰えるというのは甘い考えだろ。

 

 ……だったら

 

「……山本旦那氏」

 

 俺が言葉を発しようと思ったときだ。

 その前に、由宇が言ったんだ。

 震える声で。

 

 全員の視線が集まる。

 

 彼女は言った。

 

「構えて……アタシはやる。いいよねオニイ?」

 

 その表情は強張り……

 震え、真っ青で

 

 天沼矛を構えたんだ。

 俺に向けて。

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