※この作品はR-18です。

姉と世界に2人だけ取り残されたので、姉をお嫁さんにした弟が、神様を目指すために神のダンジョンに挑む物語   作:XX(旧山川海のすけ)

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第163話 地獄の決戦開始

 由宇……

 

 俺は何も意外には感じなかったし。

 彼女に裏切られたという非難をする気持ちも無かった。

 

 当たり前だろ。

 彼女は俺たちの来斗を可愛がってくれているけど。

 

 自分の子の方が可愛いに決まってる。

 

 ……そのためなら、他人の子供は死んでも良いのか?

 

 究極、そうだ。

 ここを否定する奴は親になる資格がない。

 俺はそう思う。

 

 ここで要求されるのはその本音を押し通せる決断力だ。

 

 ……由宇は。

 

 彼女の言動、振る舞いから俺が思っていたのは。

 決断力のある女性だということだ。

 

 思えば、彼女が実兄である修司さんに惚れるに至った話。

 

 小さいときにずっと年上の男の子に虐められた。

 それを修司さんが、相手との実力差を顧みないで助けに来てくれた。

 

 美談だ。

 

 ……だけどさ。

 

 多分。

 俺は思う。

 

 おそらく由宇は、その加害者の年上の男の子に、何かしているはずだ。

 道端にゴミを捨てたのを注意したとか。

 もしくはそいつらが別の弱い者いじめをしているのを注意したとか。

 

 そういう「正義に関わる何か」

 でなきゃ流石に無い気がする。

 

 俺の記憶が確かなら加害者は小6だったはずだ。

 そしてそのときの由宇が幼稚園児。

 

 ……いくら何でも無いわ。

 由宇に何かしら暴力を振るわれる理由がないならね。

 

 だから由宇は。

 こういう、絶対に押し通さないといけない何かがあったとき。

 一歩前に出る女性なんだよ。

 

 ……正直、敬意を払わずにはいられなかった。

 

 だから俺は

 

「……分かった」

 

 俺は猫足立ちで、右前の。

 空手の基礎的な構えを取る。

 

「……拓斗くん」

 

 修司さんも刀を抜いた。

 その顔は戦士の顔。

 そう、表現するのが一番適当な気がする。

 

 ……甘さが消えた顔だ。

 

「あなた……」

 

 俺はその姿を見れなかったが。

 紗耶香も覚悟を決めたみたいだった。

 

 

 

「ヤーッ!」

 

 まず、光の翼を広げて飛行状態になった由宇が突っ込んで来た。

 チャージだ。

 

 最初から最高速度。

 そんな突撃。

 

 由宇は天沼矛での突きを繰り出してきた。

 ……その特性を活用しつつ。

 

 つまり、長さの拡張。

 

 チャージの速さと、天沼矛を突き出す速度。

 そして天沼矛が伸びる速度。

 

 3つの速度が合わさって、神の速度……神速に到達していた。

 俺はその突きをギリギリで躱す。

 

 ……いや、躱せた。

 

 俺の胸を狙った突きだった。

 でも、速さだけで、いつもの鋭さが無い気がした。

 

 だから躱せた。

 

 躱しざま、俺は由宇の表情を盗み見た。

 

 ……由宇は涙を流しながら、鬼の形相を浮かべていた。

 本気の意志を感じる。

 

 ……だから由宇本人は、覚悟を決めている。

 ただ、まだ身体が鈍っているのか。

 意志に身体がついていってないのか。

 

 彼女の心情を想うと……

 

 苦しかった。

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