※この作品はR-18です。

姉と世界に2人だけ取り残されたので、姉をお嫁さんにした弟が、神様を目指すために神のダンジョンに挑む物語   作:XX(旧山川海のすけ)

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第164話 外される定石

 由宇の一撃を躱した後、俺は分身の術のために懐から忍具・紙人を取り出して

 

「分身!」

 

 一声。

 忍術・分身の術を発動させる。

 

 俺の周囲に出現する複数の分身。

 

 だが

 

「ファイアボール!」

 

 すかさず、修司さんの攻撃魔法「ファイアボール」が発動し。

 俺の傍に火球が発生。

 膨れ上がり大爆発。

 破裂し、火炎を撒き散らした。

 

 俺は回避行動に入るが、複数巻き込まれ。

 避けきれなかった俺が、炎に巻き込まれ分身として忍具・紙人に戻り灰になった。

 

 ……俺の忍術で一番の厄介「分身の術」「空蝉の術」対策……

 

 組んで戦ってきた修司さんだからこそ、的確だ。

 頭いい人だもんな……!

 

 修司さんも必死だ。

 我が子を消滅の危機から守るため、俺たち夫婦を倒さないといけない。

 そこを理解し、全力でそれに取り組むつもりか。

 

 ……彼に関しては迷いを感じなかった。

 やはりそこは男なんだろうか。

 

 前に、誰かの話で

 

 男は自分の所属する部族を護るため、敵対部族を躊躇いなく殲滅できるように、女より共感性に振り回されない精神性を持っている。

 

 ……こんな話を聞いたことがあった。

 多分、それは本当だよね……

 

 そう思えたから、別に俺は修司さんにも裏切りを感じたりしなかった。

 ……とても辛かったが。

 

 まずは修司さんを倒さないといけない。

 攻撃魔法は放置するのはあまりに危険だ。

 そう思った俺は、魔法を使用した隙を突くために、生き残った俺全員で修司さんに突っ込んだ。

 

「セイッ!」

 

 花魁桜を抜いている修司さんが、波動斬を繰り出した。

 魔法を使いながら、すでに溜めを終えていたみたいだ。

 

 拡大された斬撃が俺を襲い……

 

 俺の分身体が全滅した。

 けれど生き残った本物の俺が、修司さんの死角から迫っていく。

 

 手刀に気合を込め……

 

 一撃を加え、修司さんの背後から斬りかかろうとしたとき。

 

 ……俺は修司さんの背中に、タマミの店で両親の帰りを待っている結子ちゃんの姿が浮かんでしまった。

 俺の手が……鈍った。

 

 躊躇いが生まれてしまった。

 そしてそれが修司さんに対応する隙を与え……

 

 俺に向き直り、波動斬で胴薙ぎの軌道で振るっていた刀を返して、逆袈裟の軌道で俺を斬って来た。

 だけど……

 

 その斬撃に、鋭さが無い。

 決まれば俺を斬れる。

 それにまだ躊躇いがあるのか。

 

 分身が生き残ってる間は、分身が消えるだけだからな。

 

 ……修司さん。

 俺は彼の心境を想って、苦しみが増した。

 

 

 ……そして。

 

 彼ら2人の攻撃を受け、その注意が俺のみに向いているのが2人の顔から読み取れて。

 気づいた……

 

 この2人、俺だけしか狙ってない。

 

 俺と紗耶香、俺たち夫婦はアタッカー兼タンクが俺。

 紗耶香はヒーラー兼サポーターだ。

 

 定石なら、集中攻撃すべきは紗耶香だ。

 一番倒しやすいし、支援係から落とすのは戦いの基本。

 

 なのにそうせず、俺から狙ってる。

 

 ……さすがにそれは出来ないのか。

 容易く斬殺できる相手を集中攻撃することは。

 

 俺はそこに2人の優しさを感じた。

 

 基本から外れ、余計に手間がかかる手順なのに。

 敢えてそんな道を……

 

 俺は2人の決断に胸が熱くなり……

 

 気が付くと涙を零していた。

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