※この作品はR-18です。

姉と世界に2人だけ取り残されたので、姉をお嫁さんにした弟が、神様を目指すために神のダンジョンに挑む物語   作:XX(旧山川海のすけ)

165 / 202
第165話 思い出の呪い

 由宇の神速チャージ。

 飛行状態からの突進攻撃。

 その精度がどんどん上がっていく。

 

 由宇の覚悟に、由宇の身体が追いついてきているのか。

 段々、神速の矛の穂先を避けるのが難しくなっていく。

 

 そしてそれに合わせる形で

 

「ハッスルタイムだ!」

 

 修司さんが、花魁桜の能力「ハッスルタイム」を発動させた。

 

 修司さんの動きが加速され、花魁桜の刀身にオーラの刃が追加され、刀のリーチが倍になる。

 オーラなのが絶妙だ。

 実際に伸びると、刀の取り扱いに変化が出て扱いにくくなるもんな。

 

 ……しかし、速い!

 

 流石は修司さんだよ。

 元々強い人だし。

 そこにクラスの特性と、装備の強さが加算されて

 

 ……ハッキリ言って、絶望だ。

 

 修司さんの連続攻撃に追い込まれている俺に

 

 上空からそれを見守る由宇が言った。

 血を吐くように。

 

「……何でアンタたち、もっと嫌な人じゃないのよ!?」

 

 ……そんな、怒りを。

 

「出会ったときから、夫婦仲良しで!」

 

 ……あの時は驚いたよ。

 この迷宮に居るのは俺たちだけだって思ってたしな。

 

 でも、おかげで俺たちは孤独な家族じゃないって思えた。

 

「アタシの下品な冗談も、許してくれて!」

 

 ……そういや、そうだっけ。

 まあ、紗耶香が不愉快にしてなかったし。

 紗耶香が何も言わないなら俺も何も言わないし。

 

 ……いやま、紗耶香に確認を取って無いけどな。

 

「子供たちとも仲良くしてくれて!」

 

 それはこっちの台詞だ。

 そっちの方が俺たちの子供より年上で。

 小さい子の面倒をしっかり見てくれて、優しくしてくれて。

 

 本当に嬉しかったよ。

 

「オニイとアンタが2人で修行しているとき、アンタの奥さんとタマミの店でお喋りするの、本当に楽しかった!」

 

 ……そうだったな。

 俺も嬉しかったよ。

 

 まるで普通の夫婦になった気分だった。

 奥さん同士仲良くしてくれて、こっちも楽しかった。

 

「ママ友が出来たみたいで、幸せだった!」

 

 ……紗耶香もそうだったと思う。

 あのとき、紗耶香の話が由宇との会話の内容が多かったしな。

 

 あのときを思い出し、俺は少し笑った。

 こんなときなのに。

 

「……でも」

 

 そのとき。

 由宇の声が低くなる。

 

 そして次に吐き出した言葉は

 

「こんなことになるんなら! そんな思い出、作れないような嫌な人の方が良かったよ!」

 

 ……!

 俺は由宇の叫びに共感し。

 

 動きの精度が下がった。

 

 そしてそれを修司さんは見逃さず。

 

「セイッ!」

 

 容赦ない正中線斬り落とし。

 俺は咄嗟に左手で斬撃を防ごうとし。

 

 次の瞬間、俺の左手は宙を舞っていた。

 切断された俺の左手。

 

 血液を噴き出す切断面。

 

 ……何分、持つんだ?

 スゲー多いぞ。出血。

 

 思い切り後ろに跳躍し、それを思ったとき。

 

「リフレッシュ!」

 

 紗耶香の魔法が飛んできた。

 最強の回復魔法「リフレッシュ」が……

 

 

 リフレッシュは人体欠損も治療できる。

 瞬く間に出血が止まり、切断面から骨と筋肉が伸び、新しい左手が生えてくる。

 

 完全に再生するまで、あと数秒。

 

 追って間合いを詰めてくる修司さん。

 この、まだ使い物にならない左手で、これに対処できるんだろうか……?

 

 治して貰えたが、危機は去っていない。

 

 間合いを詰めながら、修司さんが構えるのは八相。

 頭の横で刀を立てて構える、実用性の高い構え……

 

 きっと修司さんは間合いに入ったら斬り下ろしてくる。

 上段斬り。

 

 それを予想しながら、回避の目を頭の中で探す。

 

 そのときだった。

 

 ……突如、紗耶香が俺の目の前に躍り出て来て。

 俺の妻は、俺を庇うように両手を広げていた。

 

 ギョッとする。

 まさか、斬られないとでも思っているのか?

 

 ……2人の温情で、狙われなかっただけなのに。

 

 でも……

 

 修司さんは一瞬止まる。

 紗耶香を斬り捨てる覚悟はまだ固まっていなかったのか。

 

 だけど

 

 その一瞬で、覚悟が決まったみたいで。

 動き出す

 

「やめ……」

 

 見たくない。

 紗耶香が斬殺される姿なんか。

 

 だから俺はそう言いかけた。

 やめろ、と。

 

 しかし……

 

 紗耶香の行動は俺の予想を超えていて。

 

 そこから、斬撃が来る前に修司さんに飛びついて、抱きついたのだ。

 

 え……?

 

 意味が分からず、混乱する。

 

 そのまま

 

 紗耶香は振り返らずにこう言ったんだ。

 

「あなた。後は頼みます」

 

 え……?

 

 そして紗耶香が次に発した言葉に。

 

 俺の思考は停止した。

 

「……デスブラスト!」

 

 その一声の直後。

 大爆発が起き。

 

 俺は吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。

 

 デスブラスト……

 治癒士達人位階の魔法。

 

 術者が自爆することで周囲を吹き飛ばす自己犠牲自爆魔法……

 

 治癒士が使える、唯一の攻撃魔法……

 

 俺は叫んでいた。

 

「紗耶香ーっ!」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。