※この作品はR-18です。

姉と世界に2人だけ取り残されたので、姉をお嫁さんにした弟が、神様を目指すために神のダンジョンに挑む物語   作:XX(旧山川海のすけ)

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第166話 何故在るのか?

「ああああああああ!!」

 

 部屋の上空で、由宇が悲鳴をあげていた。

 目を見開き、真っ青な顔で。

 

 髪を掻き毟り、絶叫する。

 

「オニイが! オニイが死んだ! なんで!? どおして!?」

 

 輝く翼を背中に備えた戦乙女。

 今の由宇はそんな姿で

 

 目の前で起きたことを受け入れられず、狂乱していた。

 

 ……紗耶香がデスブラストを使った跡……

 

 そこには何も残されていなかった。

 木っ端微塵になり。

 

 誰の残骸も残っていない。

 

 ……いや。

 

 手首のついた、花魁桜がこの部屋の隅に転がっていた。

 修司さんの残骸……

 

 それで確信をした。

 

 紗耶香は、修司さんを道連れに自爆した。

 

 トリックでも何でもない。

 本当にそうなったんだ。

 

 俺は……

 

 これから先、子供たちを全て失い元の次元に1人返される。

 その運命を予想して……

 

 絶望に染まりそうになったとき。

 

(あなた。後は頼みます)

 

 ……紗耶香の最後の言葉を思い出したんだ。

 

 後を頼む……?

 何を?

 

 お前が死んだら俺たちの一家は終わるのに。

 何を頼むというんだ……?

 

 そこでふと

 

 思った。

 

 ……デスブラスト、在ったら明らかに障害だろ。

 この創造神選定の試験で。

 

 そもそも……

 

 在る意味がない。

 

 だから……そこから導かれる答えは……

 

「うわああああああ! やだあああ!! お兄ちゃん、お兄ちゃあああああん!!」

 

 上空で号泣しはじめた由宇。

 隙だらけだ。

 

 今、拳銃で撃てば終わるだろう。

 

 ……だけど。

 

「由宇、落ち着け」

 

 俺は、ひょっとしたらはじめて。

 意図して彼女を名前で呼んだ。

 

 どうしても伝えたいことがあったから。

 

 俺の声に、由宇は

 

 涙に濡れた顔で、俺を見る。

 

 俺は……

 

「安心しろ。まだ2人は厳密には死んでない」

 

 

 

「……へ?」

 

 俺の言葉は、由宇に伝わっていないようだった。

 確かに今、2人デスブラストで吹っ飛んだのに、何を言ってんの?

 そんな気持ちだろうか。

 

 だから俺は……

 

「そもそもさ」

 

 その結論に達するために一番必要なことを口にした。

 それは……

 

「デスブラスト、意味不明だと思わないか?」

 

 このことだ。

 

「……意味不明って、どういうこと?」

 

 彼女は反応する。

 嘆き悲しむことを忘れて。

 

 ……まあ、最愛の人が生きているかもしれない話なんだし。

 当然かもしれないけど。

 

 俺は続ける。

 

「だってさ……」

 

 この試験、パートナーが脱落したら失格で強制送還なんだろ?

 だったら、デスブラストを使った時点で強制送還。

 何のために使うんだよ……?

 攻撃魔法は勝つために使うんだ。

 

 それで勝っても意味がない。

 

 パートナーを守るために、って理由も考えられるけど。

 

 それにしたって……

 

 まず、逃げればいいだろ。

 デスブラストを使うぐらいなら。

 

 俺の記憶では、ここまでの戦いで逃亡の目が無い、退路を断たれた戦いは1つも無かったと思うんだが?

 

 ……それにさ……

 

 ここで俺は一呼吸置いて

 

「ベイルアウト」

 

 その魔法の名前を口にする。

 デスブラストと同じ、治癒士の達人位階の防御魔法の名前を……

 

 そこで、由宇の表情が「あ」という顔になった。

 

 

 ベイルアウト……

 俺たちはこの魔法を習得した後、1回もここまで全滅を意識するようなピンチにならなかったので全く話題にも上らなかった魔法。

 その効果は迷宮緊急脱出。

 使用するとその瞬間、パーティー全員タマミの店にワープできる。

 

 ……ただし、持ち物を宝珠以外全て失うけども。

 つまり、素っ裸で宝珠だけ持ってタマミの店にワープする魔法だ。

 とてつもないデメリットがある、まさに緊急脱出用の魔法だな。

 

 こんな魔法がデスブラストと同じ位階にある……

 

 じゃあ、こっちを使うだろ。

 普通に考えて。

 全装備を失うのはキツいけど、死ぬよりはマシだ。

 

 それに……

 

「デスブラストがあると、この最終試練でちゃぶ台返しが出来てしまう」

 

 この問題点。

 これが一番大きい。

 

 相手に抱き着いて魔法名を意志を持って唱えるだけで発動する自爆技。

 今回みたいに、相手のどちらかに抱き着いて発動させれば……

 

 双方の夫婦の、パートナーが不在になってドローになり、双方資格喪失。

 結果、試練が自動的に失敗になってしまう。

 これはどう考えてもマズイだろ。

 

 追い込まれると人間、腹いせにちゃぶ台返しを行いたくなる衝動に駆られるのは変では無いから。

 

 デスブラストを魔法リストに加える意味が無い。

 ……というか、害悪だ。

 まともに創造神を誕生させたいなら、入れるべきではない。

 

 なのに、リストに入ってる。

 ということは……

 

 そこから導き出される答え。

 俺はそれを口にする。

 

 目いっぱい、通る声で、ハッキリと

 

「この最終試練に限り、死は死では無いんだ。そうでないとおかしい」

 

 ……由宇の顔色が、明るくなった。

 言葉の意味が浸透するのにいくらか時間が掛かったけども。

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