姉と世界に2人だけ取り残されたので、姉をお嫁さんにした弟が、神様を目指すために神のダンジョンに挑む物語 作:XX(旧山川海のすけ)
「そうか……そうなんだ!」
由宇は笑顔になる。
さっきまでこの世の終わりの表情で泣いていたのに。
……この辺もサッパリしてるんだよな。
こういうところ、まあ魅力的だと思う。
そんなことを思いつつ、彼女の様子を見守った。
由宇は俺のそんな視線に気づき
「……何で教えてくれたの? この隙にアタシを倒せば良かったよね?」
そんな疑問……いや、愚問を投げ掛けてきた。
そんなもん、決まってるだろ。
「由宇の方も、俺に構える時間を与えた。……子供の親として、この戦いを卑怯な手段で勝つわけにはいかない」
……これ以外あるか?
そんなの、お前だってそうだろ……?
由宇……。
俺のそんな気持ちは、由宇に伝わったらしい。
彼女は
「そっか……」
本当に嬉しそうな顔をした。
俺も嬉しいよ。
突きつけられている問題は変わらないけど。
最後の最後、心の底から憎み合って終わらずに済みそうで。
「フルポテンシャル!」
そこで彼女の支援魔法。
対象者の身体能力を上昇させる治癒士達人位階の魔法だ。
対象者は……無論由宇自身。
「……アタシは母として、全力で山本旦那氏……いや、拓斗。正々堂々アンタを倒す」
男と女の埋めがたい差。
身体能力。
それをフルポテンシャルで埋めるんだな……?
だったら俺は……
会話の間に、デスブラストの衝撃で壁に叩きつけられたダメージがある程度回復した。
何とか動くことはできるだろう。
俺は、懐から忍具を取り出した。
取り出したのは……金色の球・金霊石。
金遁の術のための忍具だ。
俺は印を結んだ。
そして
「発動!」
……金遁の術を発動させた。
この忍術を使った理由……それは
「……これでもう、ゲイボルグは使えないぞ」
そう、由宇に宣言した。
「ゲイボルグを無効化する……?」
由宇は困惑の表情を浮かべ。
数瞬後、その可能性に思い当たったようだ。
金遁の術は金属操作……手を使わずに金属を動かすことを可能にする忍術。
ゲイボルグは投げ槍を分裂させて槍の雨にする技。
……ひょっとしたら、投げた槍の軌道を変えられて、反射されるかもしれない。
そう……「かもしれない」んだ。
これで、由宇がゲイボルグを使うのは博打になる。
俺の金遁の術にそれが可能なら、負けるのは俺では無く自分。
そうなりかねない。
……危なくて使えない。
ならば
「だったら、チャージだよ!」
由宇は大きく羽ばたき舞い上がり、空中で天沼矛を構え、突撃態勢をとった。
……神速チャージで仕留める。
そうなるよな。
俺は覚悟していた。
俺は紗耶香のデスブラストの衝撃で壁に叩きつけられて、かなり深刻なダメージを負った。
休んで多少回復はさせてもらったけど、今の俺は前ほどの回避能力は無い。
このまま由宇の神速チャージを出されると、喰らうしかないと思う。
満足に動けないのだから。
(来い、由宇)
心で呼びかけつつ、待ち受ける。
「おおおおおおおおお!!」
由宇の雄叫び。
武道において、声は大事だ。
声を出すことで、武術家でなくても戦う心を得ることが出来る。
由宇の闘志が高まる。
……高まる。
俺の目には、由宇の闘志がオーラとして視認できたような気がした。
そして
「でやああああああああ!」
最初からトップスピード。
由宇の長物使いの特殊能力「チャージ」のチカラだ。
突進してくる由宇。
槍を突き出しながら。
天沼矛の長さを伸ばしながら。
……由宇の矛の穂先が迫って来る。
俺の胸目掛けて。