姉と世界に2人だけ取り残されたので、姉をお嫁さんにした弟が、神様を目指すために神のダンジョンに挑む物語 作:XX(旧山川海のすけ)
第174話 敗北者の兄妹
アタシは山本旦那氏……山本拓斗とのそれぞれの家族の未来を賭けた一騎討ちに敗れて、試練を脱落した。
拓斗の繰り出した必殺技・真空波の一撃は、鎧の上から斜めに私の身体を両断し。
敗北を知り、悔しさと申し訳の無さで泣きそうになったとき。
気が付いたら、私は自宅の自室に戻っていた。
着ているものは、愛用していた女戦士の軽装鎧「アルテミスアーマー」じゃなくて。
ブレザーの制服。
アタシの通ってた、
それに戻ってた。
……次元移動したときの服だ。
全部、無かったことになった。
結子も、優実も、修一も……
おなかを痛めて産んだ、オニイとの愛の結晶……
全員、いなくなった。
アタシは絶望のあまり、部屋の床にペタンと座り込んだ。
嗚咽は洩らさなかったけど、涙が溢れて止まらなかった。
ごめんね……負けてごめんね……
私が拓斗に及ばなかったから、大切な、アタシたちの宝物が全部無くなったんだ。
申し訳ない。
……辛い……。
そこでアタシは、オニイがいるかどうかが気になった。
顔を見たかった。
拓斗は最終試練で死亡しても死にカウントされないはず、という予想を立てていたけど。
自分の目で確認しないと安心はできないよね。
オニイの部屋は隣。
次元移動した日は、たまたま実家に戻って来てる土日だったから、オニイは家に居たわけだけど。
今が次元移動した日にまで戻っているのであれば、オニイは隣の部屋にいるはずなんだ。
アタシは部屋を飛び出した。
オニイ……オニイ……
頭の中いっぱいに、オニイのことを考えて廊下に飛び出したとき。
隣の部屋のドアが開いて、オニイが顔を出してきたんだ。
優しそうな顔の、がっしりした頼りがいのある大柄な男性。
アタシの最愛の人。
オニイは白いシャツと藍色のスラックス。
多分これが次元移動したときの服装なんだろうね。
よく覚えてないけど。
部屋から顔を出したオニイが
「……負けたのか?」
アタシを見て最初に言った言葉がそれで。
その言葉で、このオニイはアタシと10年以上夫婦をしてくれたオニイで。
あの最終試練で一緒に戦ってくれたオニイだと確信し。
アタシは
「ごめんなさいお兄ちゃん!」
涙ぐんで思わずそう言ってしまって。
そのままオニイに抱き着いたんだ。
謝るしかない。
アタシが負けたせいで、アタシとオニイの子供3人が消えてしまったんだから。
大切な……大切な子供たち。
ごめんなさい……
するとオニイは
「……そうか」
すごく悲しそうな声で、一言だけ言って。
アタシを抱き締めてくれた。
力強い抱擁。
その強さに安心感を得てしまうけど。
罪悪感は消えない。
……叶うならば産み直してあげたいけど。
この世界では、近親相姦で3人も子供を作るのは無理がある。
近親交配による遺伝子異常だけじゃない。
事実関係を明らかにできない妊娠出産なんて、不幸しか呼ばないもの。
これからどうしよう……?
オニイとの愛は諦めないといけないんだろうか……?
先が見えないので、グルグル考えてしまう。
だからアタシは
「オニイ。キスしよう」
そう、オニイの腕の中で頼んだんだ。
これが最後のキスになるかもしれないな、なんて考えながら。
オニイと見つめ合う。
やがてオニイは
「分かった」
そう言って。
アタシとキスしてくれた。
唇を触れ合わせるだけじゃない。
舌を舐め合う、夫婦にしか許されないキスを。
ピチャピチャという音を立てていた。
哀しみは癒えなかったけども。
消えてしまった子供たちを想って、ずっと続けていた。
そのときだった
「え、アンタたち……?」
偶然1階から階段を上って来た母さんが、アタシたちを発見したんだ。
アタシたちの時間が、止まった……