姉と世界に2人だけ取り残されたので、姉をお嫁さんにした弟が、神様を目指すために神のダンジョンに挑む物語 作:XX(旧山川海のすけ)
「……マジか」
アタシは期末テストの順位貼り出しを見て絶句した。
次元移動前のアタシの順位は102番。
そして今のアタシの順位は……30位。
この学校、50位までを校門近くの掲示板に貼り出すんだよね。
そこにあったんだ。私の名前。
……生まれて初めて、こういう「特別枠」に入れた……。
何だか、すごい達成感。
これはもう、明日の修司の下宿訪問のときの土産話だよね。
きっと喜んでくれるはず。
ウキウキしながら、その日の授業を受けて。
部活。
毎週火曜日は基礎体力をつける練習で。
やることは自重筋トレと、走り込み。
そして素振り。
次の日休みなのは、回復を見越してだ。
なのでそれなりに追い込む。
アタシは走り込みを5キロした。
終わった後汗だくで、顔を洗うのと水を飲みに水場に出向いたんだけど。
そこで遭遇したんだ。
「川上さん」
……水を飲んで汗を拭いているアタシに。
体操服の同年代の男子生徒が話し掛けて来たんだよね。
丸刈りの男子で。
確か、薙刀部の練習している体育館で、同じように練習してる人だ。
バスケ部だったと思うんだけど。
……名前は……知らない。
「えっと」
名前が出てこないので、アタシは詰まった。
何の用だろう?
すると
「今、良いですか?」
そんなことを言ってきたので、アタシは頷く。
そしたら
「……俺、加藤って言います。俺、川上さんのこと好きです。付き合って貰えますか?」
そんなことを言って、頭を下げて来た。
……次元移動する前のアタシなら、こういうのは「ムリ、アタシもうすでに付き合ってる人いるし。それにアンタ誰?」で終わってたと思うんだけど。
今はちょっと違う。
……母親になった経験あるからね。
結論は変わらないけど、言い方は考える。
だから
「ごめんなさい。気持ちは嬉しいけどアタシはすでに将来を誓った男の人居るんだよね」
そう、愛想笑いを浮かべつつなるべく誠実に返答した。
そう言われた彼は、絶望した表情をして
「……どんな人ですか?」
そんな問いかけをしてくる。
えっと……
どんな人って……
「アタシのことをずっと見てくれて、いざというときに前に出てくれる頼もしい人」
……これかなぁ?
そう、アタシは修司に心を撃ち抜かれた幼い日のことを思い返して、彼の問いに返答すると
「……俺だって負けてません!」
この人、そんなことを言ってきた。
ここでちょっと、アタシは
「いや、その言葉はおかしいよ」
そう指摘する。
そんなの、張り合ってどうするの?
彼は何を言われたのか理解できてないみたいで
「何がですか!?」
強い調子で私に返して来る。
……これは
言ってあげないと駄目だよね。
「人を好きになる要素って、言葉で一瞬に語れるほど簡単な事じゃ無いと思うんだけど」
加藤さん、アタシの言ったことが分かってないみたいだったから
例えば、加藤さんはどうなの?
アタシの何が好きなの?
そう、言葉を投げ掛けると
「気遣いできる優しいところと、何でもしっかりこなせる頼もしいところです」
返って来た言葉がこれで。
それに対し
……ふぅん。
アタシは
「……それだけ?」
そう言った。
すると
「か、可愛いところも好きです!」
……追加。
ここで
「ホラ、追加が出て来たじゃない」
……修司以外に可愛いなんて別に言われたくないので。
別にそれでどうにもならないアタシ。
冷静に、指摘する。
アタシは
「アタシとその男性の間には、10年以上も積み重ねた日々の絆があるのよ。それは揺らぐものじゃ無いし、仮に揺らいでアタシが加藤さんの彼女になったとして。……そんな女の子、あなたは愛せるんですか?」
そう、なるべく理路整然と「これは勝負できるような問題では無い」ということを諭した。
これには彼も流石に分かったみたいで。
「分かりました……」
そう言って、引き下がってくれたよ。
良かった。
……俺のは真実の愛ですから。
そんなことを言い出して、引き下がらないパターンもちょっと考えていたから。
彼が真っ当に諦めてくれて本当にホッとした。
……仮にもし、それを言って来てたら
まぁ、流石に怒ってたと思う。
アタシは去っていく小さくなった彼の後姿を見ながら、そんなことを少し考えた。