※この作品はR-18です。

姉と世界に2人だけ取り残されたので、姉をお嫁さんにした弟が、神様を目指すために神のダンジョンに挑む物語   作:XX(旧山川海のすけ)

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第186話 アタシの気持ちは

「修司、妊娠したみたい」

 

 そう、陽性の妊娠検査薬を差し出しながら。

 この次元では最初の子供の妊娠をアタシは夫に報告した。

 

 修司は

 

 声を上げて喜ばなかった。

 前は

 

「俺の子供を身籠ってくれたのか! 嬉しい! 一緒に大切に育てような!」

 

 だったのに。

 本当に嬉しそうだったのに。

 

 ……今回は

 

 どこか、不安そうで。

 ただ黙ってアタシを抱き締め

 

 こう、言ってきたんだ。

 

「由宇。結果は受け止めよう」

 

 ……ああ。

 もし、男の子が生まれてきたら、アタシたちが願っていること……

 

 これから生まれてくる子は、全て前の次元で育てていた娘や息子の産まれ直し。

 

 その願望が成立しなくなるから。

 そういうことなんだよ。

 

 そこが理解できたから

 

 ……アタシは返事しなかった。

 

 

 

 こういうことは、親にも言わなきゃならない。

 だからアタシは1人で里帰りをして、母親にも報告した。

 修司抜きで、だ。

 

「母さん、修司さんの子供が出来ちゃった」

 

 って。

 

 ……母さんは一瞬驚いて。

 

 続いて

 

「おめでとう由宇。良かったわね。1番好きな男性の子供を妊娠出来て」

 

 ……喜んでくれた。

 

 ああ……

 

 この言葉、やっぱり欲しかったんだよなぁ……

 アタシは、泣きそうになった。

 

 

 

「お父さんにも後で教えておくわ。きっと喜んでくれるはずよ」

 

「あのさ」

 

 実家のリビングのテーブルで。

 アタシがノンカフェインのお茶をいただきながら今後の話をしていたとき。

 

 アタシは切り出したんだ。

 ずっと、思っていたことを。

 

「……何かしら?」

 

 母さんはアタシのそんな消極的な切り出し方を拾ってくれた。

 アタシとしては、そこまでされたらもう後には引けないし。

 

 思い切って、言ったんだ。

 

「変な夢を見たんだ」

 

 夢と言う形で

 

「修司と2人、別の世界でもう一組の別の夫婦と一緒に4人で、大冒険する夢を」

 

 ……向こうの次元の話を。

 

 

 

「……えらく複雑な夢ね」

 

 アタシの話を聞いた母さんの言葉はそれで。

 馬鹿にしたりしないで、真面目に考えてくれた。

 

「そういう夢って、どういう意味があるのかしらね?」

 

 母さんはコーヒーを飲んでいた。

 暖かいコーヒーだ。

 

 一口飲んで、こう言った。

 

「……アンタ、だから悪いことが起きるんじゃ無いかと言ってたけど」

 

 アタシはこう言ったんだ。

 この夢が何かしら、それこそ前世の因縁みたいなものを示しているのだとすれば。

 敗北者の方が勝者より良い目を見てるのはおかし過ぎる。

 その揺り戻しで、これから悪いことが起きるんじゃないのかな。

 

 そう、言ったんだよね……。

 

 だけど

 

「本音はそうじゃないでしょ?」

 

 ……なんか、見抜かれていた。

 どうしてかな?

 

「アンタは昔から、義理を大切にして、曲がったことが嫌いで、自分が損をしても気にしない子だった」

 

 そんなことを言ってくる母さん。

 母さんは

 

「……そういやあなた、幼稚園のとき、落ちてる財布をネコババしようとした小学生たちを注意して、転ばされたことがあったわね」

 

 ……へ?

 そんな理由だったっけ?

 

 理由の部分を忘れていたから、ちょっと驚きだった。

 アタシは何もしていないのに、転ばされたって思ってた。

 

 ……あのときのことだよね。

 アタシが、修司に恋した切欠の出来事……

 

「確かアンタ、こう言ったらしいわ」

 

 おにいちゃんたち、財布はおまわりさんに届けないと駄目だよ。

 そうしないと泥棒だし。

 そうしないときっと、神様がバチを当ててくるよ。

 だってそのお金、おにいちゃんたちが盗んでいい理由なんて何処にもないでしょ?

 他人(ひと)から盗んだもので何を買うの? 絶対に間違ってるよ。

 

 ……命知らず。

 まぁ、幼稚園のガキにそんなことを言われたら怒るかもしれない。

 正しくは無いけど、無理ない気がした。

 

「だから」

 

 母さんはそこから続けた。

 そしてこう言ったんだ。

 

「アンタ、その山本さん夫婦から、当たりくじを盗んだような気になってるのよね? それが間違ってると思ってる」

 

 ……図星だった。

 アタシは頷いた。

 

 夢の話だけどね、って言い訳めいたことを言いながら頷く。

 

 母さんはそれを見て

 

「……故意に盗んだわけじゃ無いのに、そんな義理を果たす必要無いわよ。……幸せを自粛するみたいな」

 

 そう教えてくれた。

 アタシは聞く。

 

 黙って聞いた。

 

「山本さん夫婦は、逆にアンタたちの犠牲に恥じない神様になろうとしてるのに決まってるわよね」

 

 頷くアタシ。

 

「だったらアンタたちは、こっちの世界で山本さん夫婦の代わりにこっちの世界で幸せを追求するべきだと思うわ」

 

 何故って。

 母さんが最後に言ったこと。

 

 それは……

 

「他人が求めてやまないものを手に入れて、その他人に遠慮して、自粛する。……それはその他人が他人の幸せを喜べない卑しい人間であると言ってるのと一緒よね」

 

 ああ、そっか……

 そういう考え方、してなかったなぁ。

 

 自粛することも、他人への侮辱になる場合、あるんだ……

 

 だったら……

 

 アタシたち、幸せになってもいいのか。

 

 そこを理解したとき。

 

「……え?」

 

 母さんの動揺した声。

 

 どうもアタシ……

 

 ボロボロ泣いていたらしい。

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