姉と世界に2人だけ取り残されたので、姉をお嫁さんにした弟が、神様を目指すために神のダンジョンに挑む物語 作:XX(旧山川海のすけ)
「それ以前から、俺はずっとお前たちに不満を持っていた! 何故世界の主人公として創られた俺たちが、こんな狭い島に押し込められ、広い世界を諦めないといけないんだ!?」
……差別と強欲……
相互理解不足以外の理由での
こいつ、本当にアスターとジールが愛し合って生まれた子供か……?
絶望のあまり口がきけなくなる俺たちに
デミスはさも正当な権利主張のように、さらに続けた。
「一番素晴らしい土地がこの島だと!? 嘘つけ! もっと素晴らしい土地をお前たちは独り占めしているんだろう!?」
目を血走らせ、唾を飛ばしながら。
……嘘なもんか。
この土地は、ヒューマンたちを住まわせるために、特別調整した楽園なんだぞ……?
エデン島と名付けた、農業に向いた豊かな土地で、山には食べられる獣が沢山いて、海から魚も取り放題。
動植物の神二柱に手伝わせて、チート仕様にした理想の土地なんだ……。
それなのに……
あまりにも酷い言葉に、言い返すこともできない。
だから……
「……お前さ、両親は本当に病死したのか?」
ずっと心の奥に秘めていて、訊く勇気が無かった疑問。
それを訊いてしまったんだ。
何の脈絡もなく。
するとデミスは怒りの表情で
「あのバカとクソ女に関しては、俺の言い分が間違ってるとギャアギャア騒ぐから、食いものに毒を混ぜてぶち殺してやったよ!」
デミスは何の躊躇いもなく。
自分の両親を毒殺したことを認めた。
……麗香の報告で。
最初の2人以外で他に病死したのは僅か数十人、と聞いて。
不自然に思っていたんだよ。
……病気だぜ?
回復魔法持ちが、対応も出来ずに即死するような危険極まりない病が流行ったのに。
数千人いるヒューマンたちの間で、死んだのが僅か数十人。
……変だろ。
今回の件で俺たちが最初に不審に思ったのはそこなんだ。
気づいてくれたのは紗耶香だけど。
俺の脳裏で、仲良さそうにしているアスターとジールの姿が映し出され。
気が付いたら
パンッ
俺の右手の黒い自動拳銃が火を噴き、発射された弾丸がデミスの眉間を撃ち抜いていた。
……ブラックカードで、俺はデミスを射殺していたんだ。
本気で憎い、許せないと思ってしまったために。
硝煙立ち上る銃口を向けたまま、俺は言った。
「……お前……ふざけんなよ。自分の両親を殺しただと……? そんなくだらない理由で……」
俺は震えていた。
そこに
「デミス……」
「デミス……!」
聞き覚えのある声が2つ……
その声に俺は思わず振り返った。
そこにいたのは……
容姿の整った、黒髪の男女。
俺たち夫婦が一緒に創った俺たちの知的生物……
……アスターとジールが蘇っていた。
蘇って、泣いていた。
射殺された息子の死体に歩み寄り、縋って悲しんでいた。
……紗耶香を見た。
彼女は2人の死骸があった場所に居て。
後ろめたそうな顔で俺を見て、頷いた。
……ああ
紗耶香は今、この世界に蘇生魔法を創ったんだな。
人間を簡単に生き返らせるのは、殺すのと同じくらい罪深いからという理由で、蘇生魔法だけは創らなかったのに。
……この事態を収拾させるには、最初の2人の生存が必須だと判断したのか……。
「どうしてこんなことになってしまったの……」
「俺たちの愛の結晶が、創造神様に弓引くなんて……」
デミスの死体のそばに跪いて、泣き続ける2人。
そこに
「そ、そうだ! お前たちが責任を取れ!」
「お前たちがデミスを産んだから、こんなことになったんだ!」
「私たちはデミスが怖くて従っただけよ!」
「クズめ! 最初の2人として恥ずかしく無いのか!?」
……他のヒューマンたちが、口々にアスターとジールを
まるでそれが、免罪符にでもなるかのように。
その光景は……
俺の中で何かを決定的に切ってしまった。
その瞬間。
俺と、紗耶香の足元から闇が噴き出した……