※この作品はR-18です。

姉と世界に2人だけ取り残されたので、姉をお嫁さんにした弟が、神様を目指すために神のダンジョンに挑む物語   作:XX(旧山川海のすけ)

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第196話 絶望の子

「それ以前から、俺はずっとお前たちに不満を持っていた! 何故世界の主人公として創られた俺たちが、こんな狭い島に押し込められ、広い世界を諦めないといけないんだ!?」

 

 ……差別と強欲……

 相互理解不足以外の理由での諍(いさか)い……

 

 こいつ、本当にアスターとジールが愛し合って生まれた子供か……?

 

 絶望のあまり口がきけなくなる俺たちに

 デミスはさも正当な権利主張のように、さらに続けた。

 

「一番素晴らしい土地がこの島だと!? 嘘つけ! もっと素晴らしい土地をお前たちは独り占めしているんだろう!?」

 

 目を血走らせ、唾を飛ばしながら。

 

 ……嘘なもんか。

 この土地は、ヒューマンたちを住まわせるために、特別調整した楽園なんだぞ……?

 

 エデン島と名付けた、農業に向いた豊かな土地で、山には食べられる獣が沢山いて、海から魚も取り放題。

 動植物の神二柱に手伝わせて、チート仕様にした理想の土地なんだ……。

 

 それなのに……

 

 あまりにも酷い言葉に、言い返すこともできない。

 

 だから……

 

「……お前さ、両親は本当に病死したのか?」

 

 ずっと心の奥に秘めていて、訊く勇気が無かった疑問。

 それを訊いてしまったんだ。

 

 何の脈絡もなく。

 

 するとデミスは怒りの表情で

 

「あのバカとクソ女に関しては、俺の言い分が間違ってるとギャアギャア騒ぐから、食いものに毒を混ぜてぶち殺してやったよ!」

 

 デミスは何の躊躇いもなく。

 自分の両親を毒殺したことを認めた。

 

 ……麗香の報告で。

 最初の2人以外で他に病死したのは僅か数十人、と聞いて。

 不自然に思っていたんだよ。

 

 ……病気だぜ?

 

 回復魔法持ちが、対応も出来ずに即死するような危険極まりない病が流行ったのに。

 数千人いるヒューマンたちの間で、死んだのが僅か数十人。

 

 ……変だろ。

 

 今回の件で俺たちが最初に不審に思ったのはそこなんだ。

 気づいてくれたのは紗耶香だけど。

 

 俺の脳裏で、仲良さそうにしているアスターとジールの姿が映し出され。

 気が付いたら

 

 パンッ

 

 俺の右手の黒い自動拳銃が火を噴き、発射された弾丸がデミスの眉間を撃ち抜いていた。

 

 ……ブラックカードで、俺はデミスを射殺していたんだ。

 本気で憎い、許せないと思ってしまったために。

 

 硝煙立ち上る銃口を向けたまま、俺は言った。

 

「……お前……ふざけんなよ。自分の両親を殺しただと……? そんなくだらない理由で……」

 

 俺は震えていた。

 

 そこに

 

「デミス……」

 

「デミス……!」

 

 聞き覚えのある声が2つ……

 

 その声に俺は思わず振り返った。

 そこにいたのは……

 

 容姿の整った、黒髪の男女。

 俺たち夫婦が一緒に創った俺たちの知的生物……

 

 ……アスターとジールが蘇っていた。

 

 蘇って、泣いていた。

 射殺された息子の死体に歩み寄り、縋って悲しんでいた。

 

 ……紗耶香を見た。

 

 彼女は2人の死骸があった場所に居て。

 後ろめたそうな顔で俺を見て、頷いた。

 

 ……ああ

 

 紗耶香は今、この世界に蘇生魔法を創ったんだな。

 人間を簡単に生き返らせるのは、殺すのと同じくらい罪深いからという理由で、蘇生魔法だけは創らなかったのに。

 

 ……この事態を収拾させるには、最初の2人の生存が必須だと判断したのか……。

 

「どうしてこんなことになってしまったの……」

 

「俺たちの愛の結晶が、創造神様に弓引くなんて……」

 

 デミスの死体のそばに跪いて、泣き続ける2人。

 

 そこに

 

「そ、そうだ! お前たちが責任を取れ!」

 

「お前たちがデミスを産んだから、こんなことになったんだ!」

 

「私たちはデミスが怖くて従っただけよ!」

 

「クズめ! 最初の2人として恥ずかしく無いのか!?」

 

 ……他のヒューマンたちが、口々にアスターとジールを詰(なじ)りはじめたんだ。

 まるでそれが、免罪符にでもなるかのように。

 

 その光景は……

 

 俺の中で何かを決定的に切ってしまった。

 

 その瞬間。

 

 俺と、紗耶香の足元から闇が噴き出した……

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