姉と世界に2人だけ取り残されたので、姉をお嫁さんにした弟が、神様を目指すために神のダンジョンに挑む物語 作:XX(旧山川海のすけ)
デミウルゴスたちが立ち去った後。
「なあ、妻よ」
……念のため。
俺たちはヒューマンたちの前で真の名は名乗らないことにしていた。
魔法には、真の名を知ることが重大な意味を持つタイプのものが存在するので。
万一、そんな魔法に活用されると、笑えない事態になりかねない。
そう思っての安全保障だったんだけど。
今となってはしておいて良かったよ。
「なんですかあなた?」
紗耶香が俺の方に顔を向ける。
俺は
「……俺たちはこの世界を去るべきだと思うんだが、どう思う?」
そう嫁さんに提案した。
……俺たちがこの世界に留まると、どんどん邪悪な神が増えていく気がする。
それこそ、デミウルゴス以上の邪神が。
そう思っての提案だ。
紗耶香は
「……奇遇ですね。私もそう言おうと思ってたんですよ」
そんなことを。
そっか……
俺たち、同時に同じことを考えていたんだな。
そんなことを考えていたら
「……それは我々を見捨てるということですか?」
土下座していたヒューマンたちの1人が、そんなことを言い出した。
……お前たちがそれを言うのか。
怒りが吹き上がりそうになったが
「恥を知れ我が民たちよ!」
……アスターが彼らを一喝した。
有無を言わせぬ声音。
俺に反論があるなら死を覚悟せよ。
そんな意志の力が込められていた。
諸悪の根源デミスの父親。
デミスをお前たちが作らなければこうはならなかった。
ヒューマンたちが言いそうなそんな言葉を言わせない覇気。
それがあったんだ。
アスターは続けた
「……我々は問答無用で打ち滅ぼされても仕方ない罪を犯したのだ! それを自覚しろ! この期に及んで自分の事ばかり! 恥を知れ!」
……場は静まり返っていた。
そこで俺は彼らに告げる。
「別に見捨てはしない。ただ、魔界を創ったように、天界をこれから創り、神は一切合切そこに移動すると言っているんだ」
そう。
ここを仮に人間界とするならば。
さっき地の底に魔界を創った。
そしてこれから天界を創り、そこに俺たちが移動する。
それだけの話。
まぁ、だから……
「これまでのように、お前たちの要望を掬い上げて、欲しい魔法を新しく創るとか。どうしてもお前たちが欲しいと思った幻獣種族を創るとか。獲りすぎて数が減ってしまった獲物たちの数を増やすような世界のメンテナンス作業とか。きめ細やかなお前たちへの対応は……非常にやり辛くなるな。できなくなるものもあるかもしれない」
「そんな! それは困る!」
……また声が上がった。
だけど
「私の夫が黙れと言ったことが理解できないのか痴れ者!」
……今度はジールの一喝が飛ぶ。
アスターとジールは怒りの表情で他のヒューマンを黙らせている。
視線だけで射殺さんばかりに。
「それでは達者で暮らせ。助力がきめ細やかにできなくなるから、大陸への進出も視野に入れるべきだと思う。……ドラゴンたちに命じて、彼らの活動領域を大幅に狭くするから、必要なら島を出ても良い」
ただし
俺は念を押した。
「……決して散らばるな。同じ集団で生きていけ」
これが、彼らへの最後の言葉……
と、思っていたんだ。
後は紗耶香と一緒に天界を創造して、神全員がそこに移住したらおしまいだ、と。
だけど
「創造主様方」
「お願いがございます」
アスターとジールがね。
俺に話し掛けて来た。
額を地面に擦り付けながら。
無視するわけにもいかないから
「何だ?」
と返すと
彼らは言ったよ。
「俺たちに永遠の命は荷が重すぎます!」
「私たちに寿命をお与えください!」
……自分たちから不死を取り上げてくれ。
そんな言葉だったんだ。
彼らの言葉は。