姉と世界に2人だけ取り残されたので、姉をお嫁さんにした弟が、神様を目指すために神のダンジョンに挑む物語 作:XX(旧山川海のすけ)
そんで。
今の俺たちなんだけど。
例の駅前地下道が案の定、迷宮の入り口になってて。
それなりに準備をして挑戦したんだ。
迷宮地下1階は何の変哲もない、よくある石の地下迷宮。
薄暗くて、ときおり壁に掛かっている「何故か消えない」松明の明かりが無ければ、何も見えなくなっていただろう。
そんな不思議な空間だった。
そんな場所で、紗耶香曰く「宝箱部屋」
そこで。
宝箱を守っている、槍を装備した襤褸切れを纏った豚面の獣人……紗耶香曰く、オーク相手に、二刀流で構えた打刀……つまり一般的な日本刀を振るっていた。
俺はクラスは忍者を選択し、紗耶香は魔術師を選択。
で、クラスのランクが上がらないかなぁ、と期待しつつ戦っている。
多分、無理なんだろうけど。
ゲームじゃ無いんだ。
楽勝で勝てる相手を何体屠っても、成長のきっかけになる経験にはなりはしないだろう。
じゃあ何をやってるんだというと……
「あなた行きますよッ!」
背後から、紗耶香の声。
合わせて俺は息を止める。
同時に
「スリープエア!」
紗耶香の攻撃系魔法。
魔術師は攻撃系魔法を扱うクラスで。
スリープエアはそのひとつ。
ランク1……つまり初心者の位階で使える、基礎の魔法だ。
スリープエアは、指定の1点から半径3メートルくらいの空間を、睡眠ガスで満たす魔法。
息を止めれば回避できるけど、決まれば致命的な被害が出る魔法だ。
他の魔法がハッキリ言ってコスパ悪い、クソみたいなものばっかりなんだけどさ。
これだけ、ハッキリ言って別格だった。
説明書きによると、位階ごとに魔法は使用回数が決まっていて、最初は1日5回くらい。使い慣れていくと徐々に増え、最大で9回になるそうで。
それを期待しながら、紗耶香に魔術師の魔法を使い続けてもらっている。
紗耶香のスリープエアが決まり、オークたちがバタバタ倒れる。
そして俺は、素早く倒れた奴らの喉に刀を突き刺して回った。
即死したオークたちが、そのまま塵になり、後に金貨……この迷宮内で使えるという、通貨ゴッド……に変わる。
これも後で回収しないとな。
俺たちの今やってること。
それは装備品集め。
そしてゴッド稼ぎ。
あと、俺と紗耶香の戦闘慣れ。
「あなた、やりましたね!」
嬉しそうな声をあげて、紗耶香は来斗を乗せたベビーカーに駆け寄って。
息子を抱っこした。
俺はそれを横目で見ながら
「これから宝箱に当たるから、ちょっと部屋から出ててくれ」
そう言って警告した。
……この地下1階では大したものが宝箱に入ってはいないけど。
代わりに罠も大したこと無いんだよな。多分。
説明書きであった、一番ショボそうな罠……ボウガンの罠しか無いみたいだし。
紗耶香への流れ矢さえ気を付ければ、恐れるに足りない。
……だいぶ慣れて来たなぁ。
初日なんて、包丁や近所の武道具店で調達してきた防具を身に着けて、ガチガチで挑んだのに。
そしてなんとか1回戦って、勝利して。
家に帰って風呂に入ったら即俺たちはセックスしたんだよな。
……戦闘のストレスで、安全な家に帰って来た安堵感で。
紗耶香と交わらずにいられなかったんだ。紗耶香の方も、俺に抱いてもらいたがった。
……あのときは2人ともメチャメチャ燃えた。
紗耶香は「あなたぁ、もっともっと、いっぱいセックスしましょう。いっぱい射精してください」って情熱的でさ。
俺は俺で、何回彼女に精液を注ぎ込んでも全く萎える気配が無かった。
終わったとき、紗耶香に「……私の子宮……もうあなたの精液でパンパンになってます」って言われて。
出し尽くして萎えてたはずなのに。また勃起して困ったもんだ。
この試練で死亡した場合。
どうなるか、説明書には一言も書いていなかったんだ。
あと……治癒士で使用できる防御系魔法一覧には、回復魔法はあっても蘇生魔法が無かった。
……なので、俺たちは「多分再挑戦は無い。死んだらそれっきりだ」そう、結論づけた。
そのくせ、何故か治癒士の達人位階に「デスブラスト」という、術者が自爆して周囲を巻き込む自己犠牲魔法があったんだよな。
……ここから考えるに、退場ですら無いのかもしれない。
本当に死ぬのかも。
なので俺は「私の予想は悲観的って言われますけど、こういうときはそっちが良いハズです」
そんな彼女の言葉に従って、そう思って行動している。
つまり……
死んだら終わり。命は1つ。
そしてきっと、現実にも死ぬんだろうな。
そこを踏まえて、大胆に。そして慎重に。
……そういう風に。