姉と世界に2人だけ取り残されたので、姉をお嫁さんにした弟が、神様を目指すために神のダンジョンに挑む物語 作:XX(旧山川海のすけ)
「パパ、ママ!」
ここは天界。
地上にある人間界の上空数十キロの位置に創った世界だ。
地面の代わりあるのが立つことができる特殊な雲で。
そこでホームレス状態で住んでいた。
……いや、家具類や食器はあるんだけどさ。
屋根が無いのね。
まあ、暑くも寒くも無いし、雨は降らないから何も問題無いんだけども。
そんなところで。
神力で地上の観察を続けることが仕事の俺たちの四女……麗香が血相変えて俺たちのところに来たんだ。
「……なんかあったのか?」
俺は妻の紗耶香のお腹に耳を当ててイチャついていたので、ちょっとバツが悪かった。
……別に悪いことをしてるわけじゃないから、隠す必要は無いはずなんだけどさ。
紗耶香は今妊娠中。
神になってからすでに2000年以上経過してるけど、まだ定期的にセックスはしてる。
愛してるから。
ちなみにこれで208人目の子供なんだけどね。
生まれて大人になったら、人間界の観察の仕事をしてもらうつもり。
人間界は広いから手は多い方が良いしな。
「麗香、落ち着いて」
紗耶香が大きなお腹を抱えた状態で、椅子に腰かけてそう一言。
母親の言葉に、麗香は胸に手を当てて深呼吸して。
こんなことを言ったんだ。
「エルフの一部が、ダークエルフになっちゃった!」
……ダークエルフ……?
まあ、正確な定義があるのかどうか分からないけど。
意味は分かるわ。
……エルフが悪堕ちしたのか。
一気に頭が冷めていく。
まぁ、危ないなとは思ってたんだけどな。
そのために、偉人の魂を転生させたり、俺たちの子供にお願いして、数人地上界に転生してもらったりもしたんだけども……
無理だったか。
エルフたちの悪堕ち阻止……。
悪堕ちとは、邪神デミウルゴスの軍門に下って、心から元の種族を辞めることを願った際。
望みどおりに別種族になる現象を指す。
そしてそれは相当苦しいらしく、生半可な覚悟では起きない現象なんだ。
これまでも、悪堕ちで怪物に変異した人間たちが居た。
食人鬼であるオーガや、鬼婆ハッグのような化け物は、そういう経緯で生まれたんだ。
俺たちがエルフが危ないなと思っていたのは。
現在の地上が、ヒュームのものと言って過言ではない状態で。
罪人の子孫であるヒュームが、罪人の子孫では無いエルフたちを支配する構図になってるからなんだ。
これが、双方その経緯について記憶を引き継いでいる、あるいは引き継いでいない状態なら問題はまだ少ない。
けど実際は、ヒュームは過去の罪を忘れ去っているのに、エルフは覚えている。
何の反省もしないでのうのうと生きているヒュームたちが支配種族で。
太古の昔、殺されても創造神への忠誠心を失わなかった我々が何故支配されるのだ?
寿命だって10倍も違うのに、と。
……エルフにはヒュームを窘める役割を頼んだんだが、俺たちが甘かったらしい。
あのときは、こうなることを予想してなかったんだよ。
困った……
俺がそう、悩んでいると。
紗耶香が神妙な顔でこう言ってくれた。
「一緒に考えましょう。絶対に諦めるわけにはいきませんし」
……そうだよな。
俺たちは望んでこの地位を、修司さんと由宇を蹴落として手に入れたんだ。
その責任がある。
……だから
「ダークエルフたちを救うために、誰か派遣しようと思う」
俺は麗香に命じた。
「麗香、弟妹の中から、地上に派遣していい神を選定してくれ」
俺たちは、理想の世界の実現を諦めるわけにはいかないんだ。
絶対に。
その想いを込めて。
俺は紗耶香の手を強く握った。
そして紗耶香も握り返してくれたんだ。
<了>