※この作品はR-18です。

姉と世界に2人だけ取り残されたので、姉をお嫁さんにした弟が、神様を目指すために神のダンジョンに挑む物語   作:XX(旧山川海のすけ)

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第5話 名前呼び

「そう。だったら」

 

 姉さんは神妙な顔でこう言ったんだ。

 俺を真っ直ぐに見つめながら

 

「これから姉さんって読んじゃだめよ。名前で呼びなさい」

 

 ……え?

 

 これには俺も動揺した。

 姉さんをこれからは名前で呼ぶ……?

 

「えっと」

 

「姉さん呼びをしている間は、本気じゃないわ」

 

 姉さんは本気だった。

 本気でそんなことを言っていた。

 

「だから、名前で呼びなさい」

 

「待って、姉さん」

 

 俺はそう言うと

 

「姉さん呼びはダメって言ってるでしょ」

 

 そう返された。

 

 ……どうしよう?

 悩む。

 

 姉さんの提案。

 それを受け入れると、何か決定的なものが変わる。

 

 そんな予感があったけど。

 

 だけど……

 

(たかが、呼び名)

 

 そんな思いがホンの少しだけあって。

 だから俺はとりあえずこの姉の提案を受け入れてみて、姉の提案は成就しない。

 そこを示して、解決する。

 

 そして、ちょっと追い込まれて常識外れの提案をしてしまった。

 そう言って、笑って済ます。

 

 それもアリなんじゃないのかと思えて来て。

 

「分かった」

 

 そう答えたんだ。

 

 すると

 

「理解してくれて嬉しいです。拓斗さん」

 

 姉がさ、笑顔でそんなことを言ってきたんだ。

 その一言。

 

 拓斗さん。

 

 

 ショックを受けた。

 姉さんが遠くに行ってしまった気がした。

 

 今まで俺の上にいて。

 ほとんど母親に準じる存在で。

 大きな肉親

 

 それが、全然別のものに変化する。

 

 ……そんな気がしたんだ。

 

 姉さんは……

 見た感じ、姉さんも動揺している様子があって

 とても不安そうな顔をしていた。

 

 でも

 

「拓斗さん」

 

 それにも関わらずまた、呼ばれて。

 

 さらに俺の中で。

 揺るがされるものがあった。

 そんな姉の呼びかけに対し、俺は

 

「姉さ……」

 

 反射的に言いかけて。

 約束が頭を過り

 

「さ、紗耶香……」

 

 言い直した。

 すると俺の中で揺らぐもの。

 

 自分の場合は、大きい。

 激震。

 自分の中の屋台骨。

 

 それが確実にグラグラと揺らぐ。

 

 そんな感覚。

 

 俺の中の姉さんが、浸食されて。

 新しく別の存在が出来るような。

 そんな感覚。

 

 そんな、そんな感覚があったんだ。

 これは……引き返せない気がする。

 けれど

 

「拓斗さん」

 

「紗耶香」

 

「拓斗さん」

 

「紗耶香」

 

 ……馬鹿みたいに、呼び合う。

 そのたびに、何か決定的なものが変わっていく恐ろしい感覚。

 

 それがあって。

 

 同時にその感覚が

 

 姉さん……いや、紗耶香の。

 目論んでいることに合致していると思えて。

 

 俺はこの先どうなってしまうんだ。

 そんな感覚を抱えながら。

 

 放置し、続けた。

 慣れてしまうまで。

 

 ……慣れてしまったら、とんでもないことになる。

 そんな予感は、正直あったんだけど。

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