姉と世界に2人だけ取り残されたので、姉をお嫁さんにした弟が、神様を目指すために神のダンジョンに挑む物語 作:XX(旧山川海のすけ)
地下4階はアンデッドモンスターのフロアだった。
4人パーティーで、子供たちを連れて探索。
「前のフロアは構造単純だったけど、ここはそれなりに複雑だよね」
由宇が先行して歩きながらそう一言。
クラスはメイン盗賊で、サブに長物使い。
ようは地下3階と一緒。
……扉の試練で、彼女も盗賊が達人になったらしいのに。
まあ、盗賊は外せないか。
「マッピング、前のフロアは楽だったのにな」
言いながら、彼女はペンを走らせる。
ちょっと覗き見たけど、しっかり描いてる。
……彼女、こういうのしっかりしてそうな印象はあるわな。
で、そんな作業をしながら
「ねぇ、山本旦那氏」
俺に声を掛けてくる。
俺は
「何? 妹氏?」
そう、このあまり変わり映えのしないフロアの通路を見回しながら返していたら
「今の奥さんがはじめてだったりするの?」
ブッ、と思わず噴き出した。
「いいじゃん教えてよ~。前のフロアでアレするのを見せ合った仲でしょ?」
……子供が聞いてるんだが!
そう言いたかったけど。
わりと決定的なワードは避けて言ってるので、咎めるのに少し躊躇してしまう。
なので
「……そうだよ」
ちょっとだけ、声が不機嫌になる。
俺は紗耶香と結ばれるまで童貞だった。
それが何か悪いのか。
運命の相手と出会うまで童貞だったのが悪いわけないだろ。
そういう思いを口調に乗せた。
すると
「へえ、アタシと一緒だねぇ」
そんなことを。
「アタシもオニイに初めてを捧げた」
そして
「純愛だねえ」
え……?
純愛……?
いや……そうなのか?
俺としては、元の次元に戻されたら絶対に認められない愛だから、純愛は適当では無いと思ったんだけど。
「アタシはオニイ以外知らないし、アンタは奥さん以外知らない。純愛じゃん」
……まあ、俺は紗耶香を心から愛していると胸を張って言えるけどさ。
「アンタの奥さんは心からアンタを愛してるし、愛し合う男女が居て、子供がいっぱい。最高じゃん」
いっぱい作るんでしょ~?
すっごいラブラブだもんねぇ~。
う~ん、壊れてるなぁ。
俺たち。
紗耶香との仲を賞賛されて、すげえ嬉しい自分がいるんだ。
……別に辛くは無いんだけどさ。
……元々は
「もし救助が来た時に、俺たちが子孫を残す能力を失っていたら、彼らにとって俺たちは助ける価値のない人間である」
この構図が我慢ならない。
許されないと思ったからなんだけど。
……元の世界でもあったじゃん。
何にも義務を果たさないで、権利を主張する人。
そういうのさ、紗耶香は心底嫌ってて。
だから出て来たんだよ。そういう発想。
子供を作れたのに、子供を残さず、救助という権利を享受しようとする。
これが嫌だったんだ。
でも、そのせいで俺たち壊れちゃったんだなぁ。
もし紗耶香が、そんな責任感の強さ……自分の普段の主張とのブレのなさ……これを持っていない女だったら。
自分が苦しい立場に追い込まれたら、義務を果たさないで権利を主張することを平気でやれる女だったら。
今のような状況にはなってないんじゃないかな。
もしそうなら、黒幕にも早々に見捨てられて、無傷で俺たちは元の次元に帰っていたんだろうか……?
「ここ、宝箱部屋だと思うぞ」
そんなとき。
修司さん……現在クラスはメイン魔術師、サブは侍……彼が
行く手に存在している黒い扉を指差して、指摘したんだ。
……闘いか。
俺は気持ちを切り替える。
俺の今のメインは忍者で、サブが狩人……
久々の忍者の実力で、皆の幸せのために頑張るんだ。
色々あるけどさ……
俺が愛しているものや、大切に思っているものは
嘘じゃ無いはずだから。