※この作品はR-18です。

姉と世界に2人だけ取り残されたので、姉をお嫁さんにした弟が、神様を目指すために神のダンジョンに挑む物語   作:XX(旧山川海のすけ)

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第82話 悪魔王ベルゼブブ

 黒い扉を潜り。

 

 俺たちは悪魔王ベルゼブブが守るという地下6階への階段に向かっていた。

 

 一本道。

 まだ階段も、悪臭も無い。

 

「……本当にあの貰った消臭剤、効果あるんだよね?」

 

 そんなことを由宇が言った。

 彼女は今、ベルゼブブ戦に備えてメインを治癒士にしてる。サブは長物使いのまんまだけど。

 

 で、その質問だが……

 

 俺に言われても困る。

 まあ、あるはずだと思うよ?

 

 無かったら、マスタファの信用がゼロになるわけだから。

 これから先でも俺たち相手に何か商売したいなら、スカを掴ませないと思うんだ。

 

 そう、言おうとしたら。

 

「……私たちにあれだけ怖い思いをさせて、無意味な代物を掴ませるなんて、多分ないはずですよ。そんなことをすれば、私たちの信用を失うだけでなく、敵意を買ってしまいますから」

 

 ……その前に紗耶香が答えてくれた。

 流石元社会人。

 

 信用に関する認識が俺とは違う気がした。

 敵意、って言葉に。

 

 俺と違って、22才で大学出た後、4年も会社で仕事したんだもんな……。

 

 思い出す。

 大学4年で会社の内定貰って、ガッツポーズを取っていた紗耶香。

 入社後に、研修が死ぬほど辛いと父親にグチを零していた紗耶香。

 初任給で、家族に焼き肉を奢ってくれた紗耶香。

 

 ……そのときはまだ、俺は紗耶香を姉さんと呼んでいた……

 

 あまり考えると、身体を重ねたときの記憶と重なって脳がバグりそうになるので。

 俺はそこで思考を打ち切る。

 

「なるほどね。さすが年長者。言葉の重みが違うねぇ」

 

 由宇は紗耶香の言葉に感心したようで。

 そんな賞賛の言葉を返してきた。

 

 ……実年齢はおそらくトントンのはずだと思うけど。

 社会経験の差は外見年齢とドッコイだよね。

 

 由宇がやったのはせいぜいバイト止まり。

 責任ある社会人の立場で働いた経験なんて無いハズ。

 

 由宇は高校生のまま、10年以上ここにいるわけだし。

 そんな状況で、社会人の常識は身に付かないよ。

 

「伊達に4年も働いて無いですよ」

 

 そんなことを微笑みながら返す紗耶香。

 俺は年齢差で1回、夫婦喧嘩になりかけたから。

 そういう返しをしてくれたことに、俺は喜びを感じた。

 

 俺に対して、年齢差が劣等感になってないっていう風に思えて。

 

 純粋に、嬉しい。

 

 ……そのときだった。

 

 俺たちの鼻に、鼻が捥げそうなほどの悪臭が差し込んできたんだ。

 

「く、臭っ!」

 

 由宇の悲鳴。

 紗耶香と修司さんは、口を……いや、鼻を押さえた。

 

 行く先に、大部屋が見える。

 扉は無い。

 

 その中央に、誰か座っている。

 

 胡坐をかいて、ただ1人で。

 

 俺たちは走り出した。

 その臭気に耐えられず、限界が来る前に敵の前に立つために。

 

 そして俺たちは

 

 その誰か……推定・悪魔王ベルゼブブの前に立つ。

 

 その姿は

 

 全体的なフォルムは赤毛の女。

 くせのある髪は長く、かなりの美女。

 

 着ている衣装は黒いボンテージ。

 

 そして……

 

 両手足の肘と膝。

 その先が全て昆虫のそれ。

 

 背中には半透明の蟲の羽根が4枚、生えている。

 

 そしてその羽根には髑髏の文様が描かれていた。

 

 ……間違いない。

 こいつだ。

 

 こいつが……悪魔王ベルゼブブ……

 

 俺たちの視線を浴びて

 

「よく来たじゃない候補生たち。……ここは通さないわ」

 

 異形の女は、ニヤリと笑いながらそう言ってくる。

 

 俺たちはそれには答えず。

 修司さんが迷わず、あの消臭剤を振りまいた。

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