姉と世界に2人だけ取り残されたので、姉をお嫁さんにした弟が、神様を目指すために神のダンジョンに挑む物語 作:XX(旧山川海のすけ)
修司さんがサブ薬士の能力で、効果が上昇した消臭剤を振り撒いた。
すると、本当に悪臭が掻き消えるようになくなって、辺りが良い香りに満たされる。
……息が出来るようになった。
なので
「お前がベルゼブブだな……?」
俺がそう問うとコイツは
「……そうよ。私の地獄の香りを中和する薬品を用意してくるとは……用意周到ね」
愉しそうに嗤い、宙に舞い上がる。
4枚の蟲の羽根を蠅そのものの動きで動かし、飛んだんだ。
「ベルゼブブの撒き散らす腐敗病は、初期症状が倦怠感です! 怠いと感じたら言ってください! 治します!」
そこに紗耶香の言葉。
俺たち前衛……俺と修司さんは頷いた。
「そしてアイツの攻撃の主な方法は、無限に召喚できる
紗耶香の事前通知が続いた。
サブで学者。ありがたい!
「……候補生に学者持ちがいるのね……? 面倒ね。黙って貰えるかしら?」
宙に浮いたベルゼブブが、紗耶香を指差すように蟲の右腕を掲げる。
すると、ヤツから蠅の大群が発生し、紗耶香たちに殺到していった。
紗耶香は呼吸器への攻撃って言ってた。
だから多分、あれに鼻や口を攻めさせて、気管への侵入を行うのか。
そんなことをされたら深刻なダメージを負うはずだし、防ぐために口と鼻を押さえると、話せなくなるから情報開示も魔法の行使もできなくなる。
……させるわけにはいかない!
そう思うと同時に、俺は行動を開始していた。
懐から忍具「火霊石」を取り出して、投擲。
蠅の大群に向けて。
そして同時に印を結び、一声。
「爆裂!」
爆炎が巻き起こり、蠅の大群を飲み込んだ。
そのまま俺は、腰に吊るしていたホルスターから拳銃・シルバーカードを抜き、二丁拳銃で発砲した。
俺の火遁の術に驚愕していたベルゼブブ。
反応が一瞬遅れたけど、俺の放った数発の弾丸を身を捻って全て躱していく。
「で、こっちは忍者持ちで狩人持ち……厄介な取り合わせよねぇ……」
その口ぶりには余裕が感じられた。
嘆く内容とは裏腹に。
……相当素早いな。
俺はシルバーカードに
多分普通に狙っても、ベルゼブブには当たらない。
そのくらい、ヤツの身のこなしは素早く、上手い。
……どうしよう?
そのときだ。
隣に並んで、居合腰の姿勢をとってる修司さんが言ったんだ。
「……何とかアイツを地上に立たせてくれ。俺の居合斬りで仕留める」
修司さんの言葉。
そこで前に訊いた侍の能力について思い出した。
熟練者位階で「居合加速」
達人で「鉄斬」だ。
居合加速は、漫画やアニメでよく出てくる「架空の居合」を実現させてしまうというもの。
抜きつけの速度を爆上げし、超神速の斬撃にする能力。
居合が速いのは本当ではあるけど、それは抜く速さが加速されるからじゃなくて。
鞘に収まっている状態で、すでに剣を振り上げているのと同じ状態だから。
そこからくる時間短縮由来の「結果的な速さ」なのよ。
この能力はそういう構造的な速さじゃなくて、本当に斬撃速度を上昇させるわけだ。
それこそ通常回避が出来ないレベルに。
そこに修司さんは、斬撃に「鉄斬」を乗せる。
そのために、今日はメイン侍で来てもらったんだから。
鉄斬は、金属をも斬ってしまう斬撃。
普通に喰らえば真っ二つ。
……なので。
ベルゼブブを修司さんの居合の間合いに入れれば、勝ち筋が見えてくる。
……よし。
「分かりました。全力でやってみます」
俺はそう答え。
二丁拳銃で持っていたシルバーカードの一丁を、腰のホルスターに戻した。